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第三章四節

 しばらくして俺達は目的の北壁の上空へとついた。

 左右の崖からせり出すようにそびえ立ち渓谷をふさぐ形でそびえ立っているそれは、ものすごく高い。

 厚みも相当あり、ファナが下りても余裕の幅があるほどだ。

 そしてその山肌にはいくつかの建物が立ち並んでいる。

 参道の道の先にあるのは大きな要塞がありそこから常に人の出入りが盛んにおこなわれていた。


「さて、ラインハルトの話ではここら辺に、、、、、、あった。」


 城壁に近くには広場があり、その近くはいくつか弊社のような建物と飛竜が居るのが見えた。


「ファナ、あそこに降りてくれ。」


『了解。』


 高度を下げると、広場に集まった数人が俺達に気がついたようで、兵士達があわただしくしているのがみえた。

 まあいきなりドラゴンが現れたのだからあわてるのも当然か、ならばと、近づく地面に対し俺は飛び降りてファナもドラゴンの姿から人の姿に変わり一緒に着地する。


「な!、、、何者だ!」

 

「俺はランクA冒険者のヴァン、こっちは相棒のファナ、ラインハルト王子の依頼で来た。これをここの責任者に届けてほしい。」


 と言って取り出したのは木でできたほど長い箱、装飾はなくただ赤い印がついているだけの質素な作りのそれを近くに居た指揮官らしき人物に渡そうとした時。


「ヴァン!ファナちゃん!!!」


「どあ!!」「むっぎゅ!」


「良かった!、、、よかったよおおおおおおおうううゥゥゥゥゥ。」


 兵士達をかき分け俺達の前に現れたのは金髪ロングポニーテールエルフのシャルルだった。

 






「こっちだよ!ファナちゃん!!」


 あの後、泣き叫んでいたシャルルをなだめ俺達はここの指揮官に会うために要塞の中を進んでいた。

 彼女をなだめるのに時間はかかったが、今は元気にファナの手を引いている。

 久しぶりに会う彼女はいつも笑顔でいてくれたが、、、。


「それにしても、ここにシャルルが居るとはな。」


「うん、私達もこの砦に来たのは最近なんだ。もうすぐ攻め込まれるだろうって。守備の増強でよばれの。」


「マリアも?」


「そうだよ。しばらくはここに駐屯すると思うんだ。」


「なるほど、、、、エヴァ達もここにきているのか?」


「エヴァちゃん達は二日前にオルスに帰ったよ。なんでもラインハルト君が聞きたいことがあるんだって。」


「ラインハルト君、、、、って一国の王子に、、。」


「ラインハルト君は子供のころ馬術を教えてあげたんだよ。あの時は小っちゃくてかわいかったな~。」


「かわいい、、、ね。」


 まあの容姿ならそうだろうなと、ラインハルトより若く見えるシャルルから聞かされるとこれが長寿のエルフと人間の違いなのかなと思ってしまう。 

 そしておれはシャルルと情報交換をした。オルスの難民問題が落ちついたことで兵力をこちらに回す余裕ができ、今はその任務を町の警備や自警団が務めていると言う。

 冒険者達もそれに協力し、主に襲ってくる魔物に警戒をしたり討伐をしたりと人が変わっても大忙しだとか、正規の軍も紅月の対応でここに集結しているようで、その数は2万まで膨れ上がっていと言う。

 だけど、そうか。エヴァ達とはすれ違ってしまったか、マリアの騎士団に入ったとは聞いていたけど、、、、、もしかして飛行船についていろいろと聞かれているのかな?


「ここだよ!入って。」


 目的地に着いたようだ。扉を開けて入るシャルの後に俺達も続く。

 中は窓が二つにバルコニーと机があり、その上にはこの周辺の地図にいくつもの針が刺さった地図が置かれている。

 そしてその地図を見ていた二人がシャルの声に顔を上げこちらを見る。


「おお!そなた達は。」


 一人の壮年の男性が俺達を見ると目を見開きこちらに歩いてくる。

 見覚えのある、確かこの人たちは。


「ようくぞ来てくださった。私は、 ロバート・ヒューラス この国の宰相をしている。そしてこちらのかたが。」


「私は第39代皇帝、アルトロ・ロス・シュディオロスだ。貴殿の事はラインハルトから聞いている。」


 その男性は、壮年の割にはガタイがよく、聞いていた年齢よりも若く見える。

 だが威圧感といった物は感じず朗らかに笑う姿にラインハルトの面影があるとおもった。


「初めまして、私はヴァン、こっちはファナ、共にランクAの冒険者をしています。本日は、、、。」


「ああ、そう畏まらずとも良い、貴殿らには並々ならぬ大恩がある。ラインハルトやハンナと同じように接してもらってかまわん。」


 膝をついてあいさつする俺達にそう手を振り座るように促してくる。

 席に着いた俺達は宰相のロバート卿から説明を受けることになった。


「さて、では今我が国の現状を改めてお話しします。まず初めに、私達は紅月の侵略を受けて帝都の陥落から約一ヶ月が過ぎたわけですが、、、、、。正直申しまして、よくわかっておりません。」


「よくわかっていない?」


「ええ、ここ一ヶ月は寒気のせいで雪がふり外への偵察が行えない状況だったのです。まあそのおかげでここも攻め込まれずい居るのですが。その冬も、もうすぐ終わります。」


「そこで、北壁の外に向かい紅月軍に対しての強硬偵察をして来てほしい。」


「それが俺達への依頼と言うことですか。」


「そうだ、本当は我が国の軍がその役をやるべきなのだが、この任務に遂行できる戦力がいないのだ。実力があり生存能力も高く迅速に行動できるとなると限られてくる。居なくはないが今ここを手薄にはできないのだ。」


「そこで目覚めた俺達に白羽の矢が立ったと。」


「ああ、引き受け手はもらえないだろうか。」


「いいですよ。」


 と俺は即答する俺をロバートさんは驚き、シャルルは絶句する。


「ヴァン!」


 ダッン!と机をたたき立ち上がるシャルルを手で制して俺は話す。


「問題はありませんよ。この一か月間俺達は何もしていませんでしたし、それにこんな状況ですから俺がやれることは何でもします。」


 この国が無くなると俺も困る。数ヶ月しかたってはいないが、知り合いも出来て拠点も構えることが出来た。失うわけにはいかない。

 ならばと、俺自身も全力を尽くすだけだ。困難だろうとやらなければならない。


「でも、、、ヴァンやファナちゃんだけにこんなことを、、、、。」


「俺だけじゃないだろ、シャルル。皆がこの困難な局面を乗り切ろうと力を尽くしているんだ俺だけが楽をしようとは思わないさ。」


「うん、私もそう思う、オルスの街は私を受け入れてくれた。だがらその恩返しもしたいし何よりも私自身の今所を守りたい。」


 俺とファナがそれぞれ決意したことを言うと。力なく座るシャルルと深く頷くハンスさん。そして、、、。


「感謝する。ヴァン殿、ファナ殿、余が必ずそなたたちの検診に報いるとしよう。ロバート、、。」


「は!、、ヴァン殿これをお持ちください。」


 と言って出されたのは手のひらサイズの徽章、竜が剣を咥えている装飾が施されているそれは、以前全見たことがあった。しかし縁は金細工で出来ているのはちがったような、、。


「これは?」


「それは、わが軍の飛翔騎士の徽章だ。くわえて階級章でもある。ヴァンそなたには戦時特例として特務左官としての階級と現場指揮の権限を与える。」


「、、、、俺に軍事の事なんてわかりませんよ?」


「ああ、だがもし外で我が国の友軍に出くわした時の身分証として役立てほしい。」


「、、、、、わかりました。ありがたく頂戴します。」


「ああ、それとこの依頼での報酬だが、、、、、、。」


「ああ、それは全部終わったらでいいですよ。今はそんな余裕はないでしょう。」


「分かった、必要なものは第2倉庫から持ち出すとよい、食料は少ないが幾つかはあったはずだ。」


 分かりました。と言い俺はその場を後にするのだった。 

 退室し、シャルルに連れられて倉庫まで向かう道のり三人は無言のまま外に出る。

 シャルルの背中が怖い、物凄く怒っているのが分かった。その証拠に行き交う兵士の顔が此方を見ると物凄く引きつっている。


「シャ、、、、シャルル、、、さん。」


 恐る恐る声をかけるとピタッと止まりこちらに向く。


「「!!」」


 俺とファナはその顔を見て縮こまるように寄り添っていると何とも言えないように目には涙を浮かべるシャルル。


「シャル、、、。」


「!解ってる!!、、、、わかってるよ。」


 と言っているが顔は全く納得していないようだ。俺は近ずくとシャルは俯いて肩を震わせている。


「シャル、、、。」


 肩に手を置くと、幾分か収まると顔を上げるシャルルの顔はもうぐちゃぐちゃだった。


「ごめん、、、、私は、、、私は情けなくて。だって!ずっとあなたに助けてもらってばかりいて、それなのに私は何もできなくて、、、どうしたらいいのかわからなくなっちゃった。」


「シャル、それは違う。俺達はお前達からいろんなものを貰っているさ。一緒に酒を飲んでご飯を食べて、笑ったりさそして今もこうして俺達のことを心配してくれている。それだけで俺達は戦える。」


 そう言うと、ファナも同じようにしてシャルに歩み寄る。


「シャル、私達は、自分の居場所を守りに行くの、だからあなたも守って。」


 と言ってファナは優しくシャルの涙をふくと、彼女はファナの胸にうずくまって泣いた。






「もう、大丈夫だから。」


 焦った声で腰に抱き付くファナの頭を撫でるシャル。

 

「むぅ~、もっと泣いていいんだよ?」


「だ!、、、大丈夫!!だいじょうぶだから!!」


 と言いながら二人はじゃれついていた。見ればまだ目元は赤いがまあ大丈夫だろう。

 俺は倉庫から一通りの物資をアイテムボックスへと仕舞い込んで外に出る。


「ファナ!行くぞ。」


「わかった。」


 俺の隣に立つファナは、竜へと姿を変える。

 俺はそれに乗り改めてシャルへ向くと。


「行ってきます。」


「うん、いってらっしゃい。」


 互いにあいさつして大きく翼を広げて飛び立つ、それをシャルは空の青に溶け込むファナの姿をいつまでも見つめているのだった。



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