第三章三節
「ここだ。」
目の前には、木造と石レンガを組み合わせて作られた大きな倉庫に俺とファナ、そしてディオスがラインハルトにが立っていた。
「ここは?」
「ここは、ギルドが管理している倉庫だ。」
そう言ってラインハルトは入り口に近ずくと見張りの兵に話しかけると中に入って行く。
俺達もそれに続く、中に入るとそこは体育館のような造りで中は高い天井の大きな空間になっていた。
「ラインハルト様!」
「ハンス、準備はできているか?」
近づいてきたのは黒髪の青年ハンスだ。彼はラインハルトの副官で親友の青年、ハンナとラインハルトの護衛依頼の時に知り合った青年だ。
「はい、問題ありません。」
そう言って、ハンスさんは俺とファナの方を向き深く頭を下げる。
「ヴァン殿、ファナ殿皇帝陛下の救出に尽力していただきありがとうございます。」
「よしてください、俺は依頼を受けてそれを全うしただけですから、それにお礼はラインハルトやハンナ。」
そう言って彼をなだめると彼は少し困ったような顔で俺達を見る。
「申し訳ありません、お体の方はもうよろしいのですか?」
「ああ、俺もファナも問題はない。いつでも飛べるし戦える。な?」
「うん、早く飛びたい。」
一ヶ月間眠っていた俺とファナは本当なら動くことも出来ないだろうが、今はこうして動き回れるし飛ぶことも出来る。
どうしてそうなっているかは分からないがもしかしたら俺の魔人だからか、とにかく、今の体調はすこぶるいい。
それを聞いたハンスは安堵したように胸をなでおろす。
「分かりました、ではヴァン殿、早速お願いします。」
「わかった。離れてくれ。」
俺は一歩前へと足を踏み出すと右手を前に出す。するとこの倉庫の空間一杯に巨大な物が現れた。
「「「おおお~。」」」とその場にいた全員がどよめきそれを見合上げる。
「ディオスさん、、、いいんですね?」
俺の隣にいる壮年の男性に視線を向けると、周りと同じようにそれを見上げていた。だが驚きや興味と言った物とは違いその目には懐かしさと悲壮感、そして決意をした目をしている。
「ええ、、、皆も賛成してくれています。それにエヴァ嬢やヴァン殿がこの国でしっかりと根を張り立とうとしているときに私達だけが何もしないわけにはいきません。」
「すいません、俺は皆さんには本当に、、、その。」
「ヴァン殿、そうお気になさるな。、、、、あの任務、、、ヘイズの森での出来事から私達は数奇な運命をたどっています。それが果たしていいことなのか悪いことなのか判りませんが少なくとも今は皆が生き残れるようベストを尽くそうと皆が思っています。ですからこれを帝国に渡す決意をしたんです。」
そして再び前を見るそこにあったのはあの飛行船だった。船体はボロボロでそれに幾つかの燃え後の焦げた匂いや、割れたガラスにいくつもついている血の跡が見える。
ディオスやエヴァ達がヘイズの森に来るときに乗って来たこの飛行船は仲間の裏切りにによって落とされ、残骸となったのを森には残しては置けないと俺がアイテムボックス内で預かっていたのだ。
それを今回、帝国に提供し使えるようにとラインハルトに話していた。
「まあ、これがどう役に立つかは分かりませんがね。」
そういって、彼は肩を竦めた。
この国には飛翔騎士と言うワイバーンを中心とした航空戦力がある。航続距離は短いが小回りが利いて旋回性能は高い、紅月にも似たようなものがあると言うが詳細は分からない。
見た感じウマやシカと言った四足動物が空を飛んでいるみたいだが、交戦回数が少なく詳細は分かっていない。
だがそれも今後解って来るだろうが、ちなみにファナは今この国では最も高い空戦能力がある。対抗できるとすればラインハルトの駆るグリフォンくらいだろう。
そう言えば、ラインハルトは何処でグリフォンを手に入れたのかと考えていると声が掛かる。
「旦那!」
「ん?」
振り向くとそこには一人の男が立っていた。筋肉質な体つきに太い腕と職人の格好をしている男はヴァンの知る人物だった。
「ガロロさん、お久しぶりです。」
彼はこのオルスでの鍛冶職人で剣や槍は勿論魔道具や錬金術なども扱う万能鍛冶職人だ。
彼には館の修繕と、ディオスの酒場に設置してあるエールサーバーの開発に力を貸してくれた人物だ。
「大丈夫なのか?意識不明と聞いていたんだが??」
「ああ、見ての通りだ。」
「そいつはよかった。」
「それで、ガロロさんは何でここに?」
「ああ、何でも力を貸してくれとギルドから要請があってな、ここに来たんだが、、、、。」
「彼にはこの飛行船と言う物の修理をお願いしたんですよ。」
ここでハンスが答える。
この町の腕利き職人を探したときに一番上に上がったのがガロロさんだとか。
「それでどうで、修理は可能ですか?」
そいったハンスに、ガロロは唸る。
何かを思案しているのか、あご髭をじょりじょりとならせ。
「何とも言えんが、まずはいじってみねえと、大体これはどうゆうものなんだ?」
「それについては、ここにいるディオスさんにお聞きください。」
「おお!マスターさんか、よろしくな!」
「ガロロさん、こちらこそよろしくお願いします。」
と言って二人は挨拶を交わす、ガロロはディオスの酒場の常連で毎日のように顔を出してはエールを飲んでは特製のソーセージとチーズを肴によくマスターと世間話をしていた。
その付き合いで二人は仲が良く、新作のお酒や料理での意見を交わすほどだった。
「これについては私がすべてお話ししますのでなんでもお聞きください。」
「分かった、よろしくなマスター。」
そう言って二人は早速話しながら飛行船へと向かっていく。
俺とファナは、しばらく飛行船見た後、その場を後にしたのだった。
時は過ぎてその次の日、俺はファナに乗って空を飛んでいた。
『~~♪』
気温は低く本来頬を撫でる風は冷たいが今はそれよりもこうしてファナと一緒に風を切って飛ぶことを楽しんでいた。
「空は晴れ風も微風で絶好の飛行日和だな。」
久しぶりの開放感のある空を俺もファナも満喫していた。
晴れ渡る空の下で、まだ冬の真っただ中の季節だが、いまは日差しもありそれほどの寒さは感じない。
左右には緩い山の斜面とその間を流れる川がありその左右には街道が通っている。
北に行けばオルスの街に、そして南には今この国でも最重要となっている北壁と呼ばれている砦がある。
まだ距離はあるがここからでもその輪郭は見えていた。
左右山から生えた巨大な壁は本来ヘイズの森から出てくる魔物に対しての防衛拠点だったのだが、今は逆に南から攻めてくる紅月への最終防衛ラインとなっている。
なのであそこには兵士や騎士、冒険者と言った今現在帝国の本体が常に詰めていた。
と言ってもその数は少なく多くて二万人だとか。対する紅月は十万の兵力がいるようでその戦力差は約五倍、最もそれが敵の総数皮不明だった。
「絶体絶命だな。ラインハルトはいったいどうするのか。」
対策を思案しているであろう彼の顔を思い浮かべる、一月ばかり合わないうちに少しやつれたような顔をしていた。
きっと寝ずに方々を駆けまわってはいろいろと思案しているのだろう。
その考えの一つに俺が入っていると。
とりあえずは、ラインハルトから北壁に行ってほしいと頼まれ、今こうして向かっている。
「さてさて、一体何を頼まれるのか、、、、、まあ厄介ではあるが。」
この国に来て数ヶ月だが、まさかこんな事態になるとは思ってもみなかったことだ。
思ってもみなかったが、こうなれば俺は最後までやりきろうとそう思ったのだった。




