第二章十五節
体が熱い、まるで俺自身が燃えているようだ。だが不思議と頭は冷たく思考はクリアだった。今俺が何をやるべきかが分かる。
両腕を上げる。そこにはあるべき物はなく、手にしていたフィオロスもクロトスもどこかへと飛んで行った。このままでは俺は何もできずに死んでしまうだろう。
ならば!と俺は念じる。
(あの場所で感じたことが正しいならば、できるはずだ!)
そしてそれは起こる。どこからともなく飛来する二つの光、それは間違いなくフィオロスとクロトス。それと、あのヘイズの森で見つけた籠手だった。
それらは形を変え蒼い光となって俺の中へと吸い込まれる。すると、俺の中で燃えていた炎が腕に集まりそのまま腕の形へと変わった。
だがそれは人の腕ではなかった。切れた腕から生えてきたのは蒼い鎧の形をしたガントレット、だがそれは素肌に着込んだようなものではなく、腕自体が鎧の様になっていのだ。
「これは、、、、。」
手を見るとそこには、流線形のガントレット、蒼を基調に手甲には赤い宝珠がはめ込まれ関節部は黒く、縁は赤で彩られていた。
そう、覚醒したのだ。二つの神器は正式に俺と契約することでその力を引き出している。
「素晴らしい!!あの状態から、契約と隔世の二つを同時に行うとは!!やはり人は危機に陥れば陥るほど真の力を発揮する!!!!」
俺は今手にした力に興奮するが、俺以上に興奮している人が居た。
見ると、目を輝かせて体を震わせている。
「あんた、変態だな。」
「フフフ、これは心外なことを、私は常に思っているのですよ。私以上に強い者に会うことを!」
そういって、その大刀を大きく振り俺へと向ける。そのぎらつく雰囲気に俺は戦慄し背筋に冷たい物が走る。
俺は今まで以上の力を手に入れた。だが目の前に居るこの男はそれ以上の力を持っている。今まで見せていたのはアイツのほんの一部だけだったのだとそう思った。
(本当に化け物だな。今なら感じることが出来る、それは神器とより深く繋がったせいなのか世界の景色が今までと違って見える。特にこの男が発する気迫、、、、、攻略の隙が無い。それなら!)
両手を握りしめ、何かを握る様に手を合わせる。そして念じた。目の前に立ちはだかる強大なモノを切り裂く形を思い描く。
合わせたての中から蒼い炎が噴き出す。そして手にしたそれは槍ほどの柄にロングソードの刃が合わさったようなものが現れる。
フィオロスとクロトスが合わさったような形をしたそれを軽く振り具合を確かめ横に構え、そこに全てを乗せる。
手にした、フィクロスとでも名付けて置こう、そのフィクロスの刀身が輝きだす。刃の中心には何か意味があるのだろう文字が柄まで書かれていてそれが光吹き出す。
それは次第に蒼く燃えだし周囲の温度は次第に上がっていった。俺の中に全てを注ぎ込んでは放つ子の一撃で決着をつけよう。
この孟将軍も、俺の位置を感じ取ったようで、大刀を頭上高く掲げる。すると将軍の体から発する力が増し彼の体の周りは放電し始める。
「これ以上は、お互い問答は無用でしょう。」
「ああ、無駄に長くかかってしまったからな、悪いがこれで終わりだ。」
お互いの全てを込めた一撃は、何の前触れもなく放たれた。
ズドガアアアアアアアアアアアアン!
「な!なんだ!!」
朝日が昇り世界が色ずく頃、俺はグリフォンのニックと共に城へと向かっていた。
もう少しで到着すると言う時、その目的地から光があふれ出し、空を震わせる。
『キュルルルルウウウ!』
「大丈夫だニック!落ち着け。」
その大気を震わせる衝撃と音にふらついて体制を崩すニックをなだめその場で滞空する。
「ラインハルト様!ご無事ですか!!」
「ああ、お前は!?」
「はい、問題ありませんが、、、、、これはいった?!」
「決まっている、あいつがまだあそこで戦っているのだ。」
そう言って、城に目をやる。衝撃と光に激しさの割にその城の形は形を保って入る。だが余韻が残っているのか、周辺の空気は濃い魔力が満ちているのが分かるほど重くなっていた。
この空気に常人が触れれば、瞬く間に濃い魔力に酔い昏睡してしまうだろう。だが幸い俺もハンスも体制は強い方だ。ならばこのまま進むことに何の躊躇いもない。
むしろ心配なのはあそこに居るアイツだ。果たしてどれ程の戦いが起こっているのだろうか、果たして俺が行って何ができるのだろうかとそう思ったのだった。
「ハンス!行くぞ!!」
ニックが翼を羽ばたかせ空を行く。今はただ無事ていてくれとねがうだけだった。
勝負は付いた、俺の放った一撃と孟将軍のの大刀とぶつかり互いの刃を切り裂きながら進む。だが俺の刃が切り落とされることはなかった。
「フフフ、紙一重、、、、でしたね。」
そう言って不敵に笑う将軍は、手にした物を落とし、ひざをついた。
俺は勝った。将軍の胴には鋭く斜めに切り裂かれた傷が出来、そこから血が溢れている。
「父上!!」
横から声が聞こえてくる。俺の前に現れたのは、黒い髪の少女が剣を構えきっと俺を睨みつけてくる。
「こ、これいじょうはやらせません!!」
力強くそう言った彼女の手は震え明らかに怯えている。だがその目は絶対の覚悟をした目をまっすぐ俺に向けてきた。
「ツイファン!下がりなさい!!」
なるほど、、、、、、。俺は武装を解除し鎧の様なガントレットは人の形に戻る。
「将軍、終わりにしよう。」
「どうゆうつもりです。今なあなたは私を殺せるでしょう。情けをかけるのですか。」
「いいや、俺ももう力は残っていない、何より、、、。」
足に目をやると、そこには深く切られた傷が出来ている。我慢の限界だと思い、俺も膝をつく。
「ヴァン!!」
ファナが駆け寄って俺を抱きかかえる。心配そうに目を向けてくる彼女だが、見た目はファナの方が重症に見えるが、負った傷はいつの間にか消えていた。
俺は、ファナの肩を借りて立つと、アイテムボックスからポーションを取り出し一気に飲み干す。即座に回復はしないが、血の流れは遅くなり体に力が少し戻る。
「大丈夫だ、ファナ、、さあ帰ろう。迎えも来たようだしな。」
そう言ってい空を見るそこに居たのはグリフォンに乗ったラインハルト王子とそれに追従するハンスの飛竜だった。
「いいだろう?」
「、、、、ええ。こちらの目的はほぼ達成しました。これ以上はお互い無駄な戦闘になりね。」
それを聞いて俺は空に向かい手を振ると、それに気が付いたラインハルトは下りてくる。
「ヴァン!!無事か!!?」
「ああ、何とか、、、、、悪いが運んでくれるか?」
「あ、、ああ!勿論だ。」
そう言って俺はラインハルト達の元へと歩きグリフォンの背に乗る。流石に二人は無理なようでファナはハンスの飛竜へと乗り込んだ。
「すまないが頼む、、、、飛べるか?」
「ああ、、、、大丈夫だ。」
「ヴァン、、、。」
飛び立とうとした時、将軍が俺の名を呼ぶ。見ると黒髪の少女に支えられ立ち上がりこちらを見ていた。
その目に殺気はなく雰囲気が穏やかになっている。
「また会いましょう。」
「俺はごめんだがな、、、、、ラインハルト。」
「ニック!」
「クルルルルルウ!」
床を走り空へと飛びあがり、少し落ちたところで羽を大きく広げ空へと舞い上がる。風に乗ったニックは城よりも高く空を飛んでいく。
「ここまで来てくれてありがとうラインハルト。」
「いや、礼を言うのはこちらだ、お陰で国民もそして父上たちも無事に脱出できた。」
「そうか、、、、みんな無事だったか、、、、アスラは?」
「あの冒険者の事か、、、、ああ無事だ。あの後お前を助けようと一人飛び出そうとしていたくらい元気だったぞ。」
「はは、、、、アスラらしい、、、、、、、。」
「、、、、ヴァン?」
「悪い、、、、なんだか急に眠く、、、、、、。」
あれほどの戦いを繰り広げたお陰で俺はものすごい睡魔に襲われる。まだ馴染んでいない神器とのリンクをなりふり構わず出した結果なのだろう。
まぶたは重くなり、しだいに体の力が抜けて行った。
「ああ、寝て居ろ。お前たちのことは必ず送り届ける。心配するな。」
「ああ、、、、じゃあ、、、、たのむわ。」
ラインハルトが腰に回していた俺の手をぐっと掴み、落ちないようにしてくれている。なら大丈夫だなと彼の背に体を預け深く眠りに就いたのだった。
「いきましたか。」
ある程度の処置を終え立ち上がる。彼から受けた傷は見た目ほどひどくはなかったようだ。
それにしても、なんとすがすがしい気分だ、体が軽く感じる。この国に入ってからと言う物何かにまとわりつかれていたが、今ではそれもない。
「おやおやおや?おわってしまいましたか??」
後ろからこの場所に似つかわしくない声が聞こえてくる。振り向くとそこには、白いローブに、顔を隠すようにおろしたフードの人物が立っていた。
「これは道士殿、、今までどこに?」
「いやいやいや、我らの主命を果たしていた所ですよ。、、、、、、ですが随分とやられてしまいましたね。わが国を代表する将軍様がこのざまとは、、、。」
とやれやれと大げさな動作で私を挑発してくる。その態度に、ツイファンが殺気を籠めようと剣に手を伸ばすのを制しながら私は立ち上がる。
「いやなに、これくらい問題ありません、今すぐにでも人一人を消し去ることも出来ますが、、、お試しになりますか?」
その挑発に私は、殺気を込めて言うと、慌てたように手を振りだす。
「いやいやいや、目的間達成しましたから、そのような無駄なことはせずお休みください。これからが忙しくなるのです。」
とその軽い言葉に私はため息を吐いて身にまとった闘気を収める。
「それで、あなたはここに何しに来たのですか?」
「いえいえいえ、物凄い力の気配を感じましてその見学に、、、遅かったようですが。」
そう言って彼等が飛び去った方を見て肩を落としている。
「それだけなら私はこれで失礼しますよ。下で部下を待たせていますので。」
そう言っても、その白ローブの者は反応を示さずただ黙って空を見ていた。
私は歩き出し、部屋を出て下へと降りる。あの者は得体が知れない、、、、、、、警戒は必要ですね。
あの白ローブの人物、いつの間にか紅月に現れ、主上の隣に立ち、深く政に関わりのある人物。素顔は見せず、そのことに今の今まで誰も気に留めずにいたが。今はっきりとわかった。
(いったい何者だ。いつの間にこんなことになっている。いや、そもそもいったいいつの間にあのような輩が上に入ってきていたのだ。)
浮かび上がった疑問とその異様さに私は深い思考の中へと入って行ったのだった。
風が吹き、太陽は上って空は青く輝きだすころ。破壊しつくされた城の上に居た白いローブ、将軍からは道士と呼ばれた者は、それの彼方を見据え忌々しく顔を歪めていた。
(驚きましたね、種が消えている。一番苦労した人物にやっと植え付けられた種が跡形もなく消え去って、仕舞いには再度植え付けられないようになっている、、、こんなことのできる者がこの世に居るとは、、、、、、。)
この場で暴れ出すのを堪え、静かに怒りに身を沈め深く息を吐き落ち着こうとする。
「仕方がありませんね。計画をすこし修正しましょうか。さて、、、誰にしましょう。」
そう言ってこの者もまた深く思考の海に身を投じているのだった。
この日、シュディオロス帝国首都ブルクケルンは、南の領主カリオ伯爵の裏切りにより一夜にして陥落した。しかし、首都に居た市民に死者はなく、皇帝も無事に逃げ出すことが出来た。
それから数週間、シュディオロス帝国の地は紅月の進行で大半の地を奪われ、民達は北壁と呼ばれる対魔獣の防壁のさらに奥にあるオルスまで避難していったのだった。
もうすぐ、本格的に冬が来る。家を失い土地を失った彼等にこの先の結末に光があるのか、今は誰にも分らない。




