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第二章十二節

「ラインハルト、親父さんを連れてここから離れてくれ。」


 目の前に立つ巨漢の男を前にして、俺は背筋が凍る思いだ。目の前に立つこの男は俺が今まで相手してきたどんな相手より強いと感じている。

 これは手加減して、いや全力の全力でやらないと一瞬で死んでしまう。ラインハルトまで巻き込むことになる。

 

「わ、わかった、、、、、幸運を祈る。」


「おう!、、、あと最初に謝っておくが、、、、、、この城壊すかもしれない。」


「あ、、ああ!構わない。構わないから無事に帰って来い!!、、、、父上!ここを出ましょう。」


「ラインハルト、、、あの者はいったい、、、。」


「説明は後です。早くジークに乗ってください。」


 戸惑う二人を乗せたグリフォンは、無事に飛び立ち下に居るファナとアスラ達の元へ向かっていくのを俺は背中で見送り、正面に立つ孟と名乗った将軍をけん制する意味で俺は剣のフィオロスと槍のクロトスを取り出す。

 すると、孟将軍は興味を示したのか俺が手にする物をまじまじと見つめ目を見開いた。


「これは驚きでました、あなた神器をお使いになるのですね。」


「ああ、、、、、、あんたもだろ?」


 と彼の手にする矛に目を向ける。長い柄に鋭い刀身のそれは明らかにほかの物とは違う気配を感じる。そしてその気配は今俺が手にするものと同じだった。

 

「フフフ、わかりますか?これは、仙蓬と呼ばれる山で眠っていた一刀で名を天龍牙戟と言います。」


 そう言って手にしたそれを一振りするとフォオンと音を鳴らせると赤くきらめいている。その輝きは使い手に応じるように輝きを増すとやがて刀身自体から陽炎の様にエーテルが揺らめいているのが見え。俺の背筋はさらに凍り付く。


「なかなか、、、恐ろしい物をお持ちで。」


「フフフ、それは貴方もそうでしょう。神器を二つをお持ちだ。」


 そう言う孟将軍の顔は毛ほどにも怖いと思っている風には見えない、むしろワクワクしているように目を輝かせている。


「さて、、、そろそろいいでしょう。」


 そう言って武器を構え戦闘態勢をとる。それだけで周りの空気は俺の体を押しつぶすように空気が重くなる。

 俺も構えるが、正直逃げ出したいほどに怖い、これほどの恐怖はあの時、、、、、背中をバッサリと切られた時と同じだ。戦えば間違いなく無事ではすまないだろうが、俺が今ここで逃げ出すわけにはいかない。

 と言うか逃げられない、目の前に居るこの男は俺を逃がさないだろう。ならば、まずは最大最高の一撃を、、、。

 俺は、ありったけの力を開放する。周囲は孟将軍の空気が支配していたが、一瞬で部屋の中は俺が放つ魔力の風がその支配権を奪い、重苦しい空気は消し飛んで代わりに蒼い炎が周囲の物を燃やし床を割り壁はひび割れて窓のガラスはこのご何消し飛んだ。

 だが、俺の開放は終わらない。炎は渦を巻いて俺の元に集まり手にしたフィオロスとクロトスに集まり刀身に渦を作りだす。


「これはこれは、、、、。」


 その様子を静かに見ていた将軍の顔は獰猛な獣の様な顔で笑っている。まったく焦っていないのは予想道理、正直これでも目の前の男に勝てるか分からない。

 ならもうなりふり構ってはいられない。このままいくしかない。


「うおおおおおおお!」


 咆哮を上げる俺は、今まで出したことがないような速さで突っ込む。床には穴が開き通った空間は蒼い線を残してまっすぐ前へ突き進む。


「素晴らしい!」


 その一言のあと将軍が振り下ろした一撃が俺に振り下ろされぶつかる。

 ガッゴオオオオオオオオオオン!!!!!まるで至近距離で落雷が落ちたような音が空気を震わせ地面は揺れ響くと耐えきれない石造りの壁や床は激突した二人を中心にもろくも崩れたのだった。





「おい!アスラ!!いったいどうなっているんだ!!」


 隣では、今一状況が理解できないリブロが困惑の表情で俺とファナの嬢ちゃんを見ている。

 今戦闘は止まっている。その理由はいくつかあるがその一つは俺の隣に居る蒼い髪に赤い角を生やした竜人族の少女のファナのお陰だ。

 今は人の形をしてはいるが、ここに降り立つ前は強大なドラゴンの姿をしていたのだ。その様は物語に現れるドラゴンそのものだった。

 そのインパクトは相当な物だったようで、ファナ嬢ちゃんの存在に恐怖した敵は悲鳴を上げては手にした武器を投げ捨て数百メートル後方に下がって様子を見ている。空を埋め尽くす敵の飛翔騎士達も今は町の外へと撤退していった。

 だが恐怖し混乱したのは味方も同じだった。今俺の周りにはファナ嬢ちゃんとリブロの他は遠巻きに俺達を見ている。


「アスラ!!聞いているのか!!!」


「ああ、わかったからまずは落ち着け。」


 混乱しているリブロをなだめながら俺は彼女のことや、今城の最上階で戦っているヴァンの事も説明した。

 それを聞いて少しは落ち着いたリブロは深く深呼吸するように息を吐いた。


「なるほど、、、では彼女が最近噂の竜騎士なのか。」


「その相棒な、竜騎士ってのは初めて聞いたが片割れは今あそこで戦っている。」


 そう言って先ほど爆発があった城の最上階を指すと、何かがこちらに向かってきているのが見えた。

 最初は警戒して背負っていた剣の柄を握るが姿を現したそれに警戒を解く。グリフォンだ。森や山で遭遇したら死を覚悟して相対するべきモンスターだが、その背に人が乗っているのが見える。

 一人はこの国の皇帝ともう一人はその腹心でありる宰相、そしてグリフォンの手綱を握る金髪の青年、あれは確か第一王子の、、、、。


「ラインハルト、、、。」


 突如隣に居たファナの嬢ちゃんがその名前を呼ぶ。それに驚いて顔を向けるといつものよう感情を出さない顔で見ていた。

 いや、少しほっとしているのか?いつもはその表情からは何も読み取れないが、今の彼女からはそう感じる。


「陛下!!!!!」


 とそんな考えを浮かべていると、城門の内側に降りたグリフォンの背に居た皇帝と宰相が城門に配備されていた近衛騎士達に囲まれているのが見える。

 すると隣に居たファナ嬢ちゃんは数メートルある城壁を飛び降りグリフォンの方へと走っていくのを見て俺もその後に釣ずくと。


「皆の物!!今すぐ撤退するのだ!!!」


 集まった騎士達に怒号の様に声を上げる宰相のロバート卿。彼の顔は険しく死地から帰還した兵士のような顔だった。


「化け物だ!今上には化け物がいる!!」


「閣下!!それは、、、、、、。」

 

 騎士達に指示を出して騒いでいる横を通り過ぎ、グリフォンの横で駆け寄ってきた兵士達に指示を出しているラインハルト殿下に駆け寄るファナ嬢ちゃん。

  

「ラインハルト!」


「ああ!ファナ嬢!!兵士達を助けてくれたようで感謝する。」


 ドラゴンの姿でここに降りたファナ嬢ちゃんの存在は今ここの兵士たち全員が認識している。

 ドラゴンの姿になれるこの竜人族の少女に怪訝な顔をした兵士をしり目に二人が親しく話しているのを目撃すると、兵士達は驚いた顔でそのやり取りを見ている。

 俺も少し違うが同じように驚いていた。いったい俺がお留守を出たここ数日で何があったのかと不思議に思っていると。

 ガッゴオオオオオオオオオオン!!!!!

 突如、強烈な閃光と音が頭上で鳴り響く。その音にその場に居た者たちは皆頭を抱え地面に伏せる。

 音と閃光が起こった場所を見ると、城の上階がきれいさっぱり消し飛んでいる。


「陛下!お怪我は!!」


「ない、、大丈夫だ、、、、、そんなことより早く皆脱出路に!全員撤退だ!!」


 といった声で我に返る兵士達は再び慌ただしく動き出す。その慌ただしい兵士達の中一人微動だにせず吹き飛んだ城を眺めているファナは、俺に向かって。


「アスラ、私ヴァンの所に行くから。あなたは早く逃げて。」


「え?!」


 と返す言葉も届かず。素早い動きで、崩れ落ちている城の中に消えて行く。


「おい!何やってるんだアスラ!!」


「ああ!今行く!!」


 リブロに呼ばれて急ぎだしゅつろの入口へと駆けこむ。ファナの嬢ちゃんやヴァンの旦那の事は心配だが。まあ、災害級を倒したあのコンビがそうそう負けるはずがないと、その不安を無理やり押し込めて地下へ続く階段へと足を踏み入れる。

 そして、誰も居なくなった城内でその脱出路の入り口は爆発しその大きな入り口を閉じたのだった。





 ギイッン!シャッオン!!

 金属がこすれる音が響く、ヴァンの剣が横に振われるとそれを状態をそらし躱す孟将軍は大刀を下から繰り出す。


「おう!」

 

 顎下に迫る刃を体ごと右に回って躱すと。そのまま回転の勢いに任せて左手に持った槍のクロトスを放つがそれも難なく柄を使って防御して、そのまま滑るように大刀が振るわれる。

 強いと思った。これほどの強さを持った人がこの世に居るのだろうかと正直驚いている。俺自身もかなり強い部類に入るはずだと思っていたが。目の前に居るこの人は桁が違った。


「フフフ、なかなかお強いですね。」


「それは嫌味ですか?」


「いえいえ、私の正直な感想です。そして思いきりもいいです。まさか初手から全力を出してくるとはびっくりですよ!いいですね。」


「そいつばどうも!!」


 つばぜり合いの最中に交わされる会話を一歩引いた足でけりを放つとそれを軽やかに躱す将軍、その巨体に似つかわしくない華麗な動きに合わせる様に槍を投げ放つ。

 ズバン!と放たれたそれを着地前に弾く。その弾かれた槍の影から俺は剣檄を加えるも着地した瞬間後ろに宙返りしてそれも躱す。

 が少しかすったようでその頬からは一筋血が流れている。


「くそ!」


 幾らやっても当たらない攻撃に少し焦りが出始める。単純に経験が違うのか?運動量と速さなら俺の方が上のはずだ。だがどんな攻撃も繰り出す前には回避動作に入っている。


「フフフ、お見事です。私が血を流したのは数十年ぶりです。」


「それはどうも。」


 と言っても変わらず余裕そうな顔をしている。さてどう攻略した物かと試行していると。


「楽しいですね。こんな楽しいことは本当に久しぶりです。」


「俺は楽しくないが?」


「フフフ、連れないですね、せっかくの神器同士の戦いです。もっと楽しみましょう。」


 といって、猛暑軍は初めて構える。来る!と思った瞬間には、目の前に迫る刃、瞬時に弾くも、あまりの重さにバランスを崩してしまう。それを逃さず追撃してくるが。彼の振るわれる凶刃に一撃一撃に何とか反応しているが受けるのが精いっぱいだ。

 くそ、このままじゃやられる。何か無いかと考えていると。視界の奥に光る者が見える。それは先ほど投擲したクロトスだ。なら決まった。と言って俺は来た凶刃を全力で受けてわざとよろける。

 とそのすきを逃さず大振りにになった懐に何も持っていないはずの左手を向けると。


「来い!」


 その一言で、手のひらから投擲される槍のように前へ飛ぶと将軍の脇腹を貫いた。


「どおおおりゃあああああ!」


 だがそれにもひるまず打ち込んでくるそれを俺は寸前のところで躱す。体制を整えて俺はまた先ほど飛んで行ったクロトスを再び手元へと戻す。

 すると、小さな光が手の中に現れ、それは次第に槍の形をとって手の中に納まる。


「フフフ、なかなかの一撃ですね。」


 流れ出る血を気にせず平然と立っている将軍は、不敵な笑みを浮かべると手にした矛を前に掲げる。


「まさか、これを使うことになろうとは思っていませんでした。」


 そう言うと手にしている大刀は輝きを放ち始める。


「目覚めなさい天龍牙戟、その力を開放するのです!!」


 その言葉に大刀は光の帯となって将軍の右手に巻き付く、巻き付いた光は次第に形を取り鎧のような腕へと変化していった。

 白いそれは、まるで獣のような見た目で、テカリや角ばった所が無ければ虎の腕のような形へとなっていくのだった。


「おいおいおい!」


 こんなのありか、見るからに強く嫌先ほどの数十倍は強くなってないか?

 

「フフフ、これが神器の覚醒です。エーテルで形を作っているこれは使用者の思い一つで力を増し、そして強い意志によってその力は無限に強くなる。あなたはこれに打ち勝てますか?」


「はは、、、。」


 はっきり言って無理だな。先ほどは不意を突くことが出来たが、、、、。今目の前に立っているのは正真正銘の化け物だ。

 

「見たところ、あなたの神器は覚醒していない状態のようですね。」


「覚醒?」


 と言って両手に持つ二つの神器を見る。確かにこれにそんな力があるとは聞いていない。ファフ爺からもらった時も、神器に詳しそうなウラド伯爵もそんなことは一言も話してはいなかった。


「言ったはずです。つよい意志があればならば、、、、、、、、。」


 ズズズズズン!!と地鳴りのような音と振動が襲う。どうやら下の方で何かがあったようだ。


「どうやら時間のようです。」


 一歩踏み出る将軍に俺は一歩下がる。下で何かがあったのはこの際どうでも言い、ファナが言ったからアスラやラインハルトは無事だろう。ならこれは時間稼ぎが成功した。なら後はここからにげるだけだ。


「逃がしませんよ、今ここであなたを返せば今後不利益になる。ならばここで!」


 その言葉は、俺の目の前で聞こえた。注意してはいた。油断もしては居なかった。なのに将軍は一瞬で俺の懐に飛び込み手にした大刀を振り下ろす。


「ぐがああ!」


 振り下ろされた大刀は辛うじて防ぐことはできた、だがその斬撃は衝撃波の刃となって俺を襲う。

 その威力はすさまじく、体は後ろに飛び壁へと打ち付けられ地に落ちた。


「なかなかの反射速度です。」

 

「くそ!」


 悪態をついて立とうと腕をつくとそれは空を切り、前のめりに倒れる。

 不思議にそれを見ると腕がない、肩下からすべてが切り落とされていたのだった。


「うわあああああああ!」


 流れ出る血を止めようと左手を伸ばすが、それすらも出来ない。なぜなら俺は両腕を失っていた。

 今の状態を認識した途端に体中から痛みが走りだし。たまらず声を出して叫ぶ。


「残念ですがこれでお仕舞いです。」


 近ずく将軍の足音に、俺は成すすべもなく思考の止まった頭で何とか前を無効と上半身を起こしいい居てその場に座る。

 見上げたそこには大きく振り被られた大刀の凶刃、おわった。そう思った時。


「ヴァン!!!」


 右からものすごい速度で迫ってくる蒼光。それは将軍の不意を打てたようで、衝撃で柱へと激突する。


「ファ、、、、ナ、、、。」


 その蒼い光はファナのエーテールの輝きだった。東の空はうっすらと光り始める、だが目の前に現れた光はどんな物よりも明るく深い蒼の炎を纏って俺の前にやって来たのだった。    

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