第二章十一節
東の空に太陽が昇るのをフード越しで見る山の隙間からこぼれる程度の光だがもうすぐ夜の帳が上がろうとしている時間に俺とファナは空の上、雲を下に見下ろす高度を飛んでいる。
眼下を見ると、日の光はまだ地上を照らしてはいない、明かりがともされていない地上は何処までも続く深い奈落の様に口を開けているかのように暗い。
「ラインハルト!帝都は!!」
俺の前を飛ぶグリフォンに乗る男に声を大きくして問いかける。
「もうすぐだ!しばらくすれば、明かりが見えてくるはず、、、、、。見えたぞ!あの湖の端に見えるのが帝都だ!」
視線を前へ向けると、広い湖の端に陸地からはみ出るように建てられた巨大な壁に囲まれた街が見える。それは暗い色に染まった大地に突如現れたかがり火の様に輝いている。
その光は空を照らすほどだが何かが燃えている光ではないもっと人工的な、オルスの街灯の灯りが何十倍までも明るくしたような光が見えてくる。
帝都襲撃の報告がオルスにあるヴラド伯爵の元に入って数時間立った今俺は制止を振り切ってここまで飛んできたラインハルトを追って今帝都上空に居る。
本来はハンナ第二王女の護衛依頼が今も続いているのだが、一目散に飛んで行ったラインハルトの後を追って守ってほしいと頼まれたからだった。
ラインハルトが乗るのは、空の王者とも呼べるグリフォンと言う魔物で名前をジークと言う。なんでも、幼少時に、森で狩りに出た時に母親の死体の側でうずくまる彼を見つけて育てたとか。今では兄弟のように仲がいいのが、飛んでいる姿を見てそれが伝わってくる。
そしてグリフォンは、その辺のワイバーンとは力が段違いで、スピードも持久力も群を抜いている。今も彼についてこれているのはドラゴンであるファナに乗る俺だけだ。ハンスや他の飛翔騎士たちは遥か後方を飛んで今は姿も見えない。
そして今怒涛な速さでここまで来たのだが、改めて近ずく帝都の状況を見る。町は燃えていないなが、その代わりに帝都の中央には元は大道理だったのか南に向かってまっすぐ伸びる道には今は人がひしめいているのが見える。
その人の列は、道の先にある大きな城に向かっている。城の方では、今も戦いが繰り広げられている声がここにも聞こえてくる。辛うじてだがまだ完全には落ちていない様だ。
「どうする!ラインハルト!!」
「と、とにかく今は父上の安否を確かめなくては。まだ落ちていないなら必ず城で全体の指揮をとっているはずだ。」
「分かった、それでどこだ?」
「城の、、、、南向きにあるテラスだ!あそこが皇帝の玉座があるところだ。まずはそこに向かう、、。」
と言って、城に向かい飛んでいく。それを見てやれやれと言った感じで肩を竦める俺は、ファナの首をさすりそれに続く。
次第に近ずく帝都をみると先ほどよりも詳しい状況が分かって来た。城の正門辺りでは今も兵士らしき人達が、押し寄せる軍隊を押しのけている。だが数は圧倒的に不利のようで、幾ら倒しても全く減らない様だ。
それに南から何かが地下ずいてきている。その一つ一つは大したことはないが数がものすごい、このままそれが下の敵と合流したらひとたまりもないだろう。
と、城壁の上を見ると人礼見知った気配があった。アスラだ、なぜここにと驚いたが、そう言えば昨日用事で数日開けると言っていたのを思い出す。
ならあそこは大丈夫だろ。かれはAランクの冒険者だ、はっきり言ってただの普通の兵士が束になっても敵わないだろう。なら正門は後回しにして、、、、、、、。
「なんだ?」
不意に、視線を感じる。ここは空の上で俺達のほかには誰もいない。気配を追うと丁度ラインハルトが向かっている王城からそれは感じられた。
『ヴァン!強い奴がいる。』
「ファナも感じたか。」
『うん、今まで感じたことがない、、、、、、純粋な気配、、、、、よくわからないけど。』
確かに、純粋と言っていい感じの気配だ。悪意も憎悪もなく唯々俺達に己の存在をつたえるような、、、、、つまりこっちに来いと言っているのか。
とにかく先行するラインハルトに危険があってはだめだ、正門前にも加勢を向けなくてはいけないが、、、、、ここは分かれるか。
「ファナ!俺は城内に入るが、代わりに正門の上に居るアスラの加勢に向かってくれないか。」
『うん、どうすればいい?』
「アスラとそのほかの者たちを守るんだ、詳しいことは彼の指示に従ってくれ。」
『わかった、、、、気を付けてね。』
ああ、と彼女の首筋を撫でると、一気に加速しラインハルトを追い抜いて近ずくテラスに飛び降りる。ファナはそのまま正門上のアスラに合流するために向かった。
着地したテラス、部屋の中から先ほど感じた視線のほかにも数人の気配を感じる。その中に皇帝陛下が居るのだろうか、、それよりも、先ほどから異彩を放った気配が一つ感じる。
「ヴァン!いったいどうした、、、、だ。」
あとから来たラインハルトが、その気配を感じ取ったようで身をこわばらせる。
「これはこれは、ようこそいらっしゃいました。歓迎しますよお客人。」
とその気配の主が声を発する。それだけで場に圧迫感を生じさせ胸を強く締め付ける感覚に陥ってしまうほど圧を体全体で感じとれるほどだ。
その空間に居るだけで身がつぶれるほどの重圧がのしかかる。常人では立っていられないだろう。
「あんた誰だ?」
その威圧を受けた俺は全く意に介して問いただすと。そこに居た大男は驚きと興味の顔を浮かべる。
「ほほう!、、、私は、紅月皇国第一軍団長孟 暁東と申します。差し支えなければあなたのお名前をお聞かせ願いますか?」
「俺はヴァン、ランクAの冒険者だ。」
と言って、俺は孟暁東と名乗ったその大男に先ほどから放っている威圧と同じ威圧を、正確には魔力を体から放出する。
最初は陽炎の様に景色はゆがみ、次第にその陽炎は激しく立ち上っていくと光を放ち始める。青く深い青い魔力は歩脳のように周囲の温度を上げる。
「まず聞くが、、、お前は敵か?」
「ええ、私は敵です。」
その言葉が合図となった。
「おい!アスラ!!何を呆けてる!!」
リブロが横で怒号を上げると俺の方に寄って来る。
「空を見ろ、あの飛翔騎士モドキが迫ってきているんだぞ。」
険しい顔をして南の空を見る彼は舌打ちしながら弓を構える。その先に居るのはシカや馬のような四足動物が馬鎧を着てそれに乗る兵士も槍を手にこちらに向かってくる。
その正体不明の敵に、城壁上に居た兵士や冒険者達は戦意を喪失していた。まともなのはリブロと数人の高ランク冒険者そして、、、、。
「おい、リブロ、、空に関しては問題ないようだ。」
周りがパニックになる寸前、北の空を見た俺はそう確信する。
「ああ!!なん、、、、だ、、、、!!」
リブロは何を言ってるんだ?と言う顔でアスラを見た後、不意に上空から圧迫する空気を感じ取った。何か巨大で強大な何かが空から降り注ぐような、思わず肩がすくむみ首を縮める。
今まで長い間冒険者をしてきてこれほどの圧を感じたのは災害級の討伐をした時以来だった。あの時はクランメンバー総出で何とか討伐できたが、今それほどの物がここに現れたのなら、俺達には対抗のしようがない。
心は崩壊し繊維は喪失仕掛けそれでもクランリーダーとしての意地でその圧の正体を確かめようと顔を上げる。
『グウウウラアアアアアオオオ!!』
咆哮が帝都の空に鳴り響く、大気は振動して大地は踊る様に揺れている。その声を聞いた者は身を竦め地に膝をついて肩を震わせる。
城壁前に群がる敵は、その混乱で攻撃の手は止まり、パニックになり逃げ惑う。だが城壁の上で戦っていた味方達はびっくりする者は居るが敵ほど混乱はしていなかった。
その声には何かスキルや魔法的な意味合いがあったのか、一番パニックになっているのは敵だけだったのだ。それを一番大きな影響を受けているのは空を飛んでいた飛翔騎士モドキの兵士達だ。
乗っていた魔物?は綺麗に並んでいた隊列を抜け出しはみ出たり空から落ちたりと酷い物だ。
「な、、、な、、ん、、。」
そうして周りの現状に驚いていると、アスラは手を上げて手を振っているのが見える。
「おおーーい!ファナ嬢ちゃん!!」
とその声は今飛来したドラゴンに向けていることが分かる。するとドラゴンの方もこちらに気が付いたのか首を向けてこちらに降りてくる。
あんな巨体がここに降りてきたら城壁が崩れる!とそう思っているとドラゴンが光出す。それと同時にその巨体が消え光の粒子となるとその中から蒼い髪に赤い角の少女が現れ俺達の前に降り立った。
「嬢ちゃん!来てくれたのか!!、、、、、ヴァンの旦那は?一緒じゃないのか??」
「うん、依頼で王都に来ることになって、、、、、ヴァンならうえに、、、、、、、。」
ズッドン!
その時城の上、丁度玉座があるテラスのあたりで先ほどのドラゴンの咆哮よりも大きく重い音がなり、次に城の上階部分が吹き飛んだのだった。
「、、、、、、、あそこにいるよ。」
「ああ、、、、なるほど。」
「・・・・・・・・。」
そこに居る誰もが、その吹き飛んだ城を眺め茫然としていた。




