第二章九節
「これは・・・・・・。」
唖然としてそこに立ち今目の前の光景を見ている。普段は道を埋め尽くす人が行き交っているであろう大通りは無人だ。
それだけではない、立ち並ぶ店や家の中に明かりはついているが人の気配はなく目の前に広がるのはまさにゴーストタウンの雰囲気を漂わせている。
「いったいどうゆうことだ!」
怒鳴り散らす女の声が町の中を多少騒がしくするが、響くのはその声だけでその問いに答えるものは居なかった。
無人の街で、騒がしい女の声が響く数時間前に話は戻る。
「撤退する!」
謁見の間に、絶望の報告を兵士が伝えてきたときに、静寂が支配する中ただ一人冷静な声でそう告げる。
「撤退ですか!」
「帝都を放棄するおつもりですか陛下!!!」
「そうだ、援軍の来援まで数日、現状の戦力は奴らの100分の一にも満たない状況で帝都をを守りきることはできない。」
「しかし、、、、、わが帝国の首都をこうもあっさりと敵に渡してよろしいのですか!」
「そうです!兵の士気にも関わります!!この国が滅びますぞ!!!」
「国は滅びぬ!!!!!」
一喝、騒がしく唯々怒鳴り散らしていた貴族達は体を硬直させ動かなくなる。
「国は滅びない、この城を守っても国は守れない。国を作るのはいつも人だ。帝国の人々さえ残って居れば国はまた再び立ち上がる。ならば真に守るべき者ははなんだ?宰相!」
すっと、皇帝の後ろに控えただ静かにこの事態を静観して深い思考に入っていた初老の男が、静かに前へ出る。
「ならば市民達の避難を始めましょう。準備は整っております。」
「さすが我が友、では指揮を手ってくれ。」
「御意。」
初老の男性は静かに一礼し部屋を出て行く。それを静かに見守り、すとんと玉座に静かに座る皇帝の姿に、ただ静かに思考を停止していた貴族や騎士たちがハッとしてそれぞれあわただしく動き始めるのだった。
「順調に言ってるな。」
城壁の上から下を覗き込んだ男が眼下に列を作って城内に消える民衆を見てそうつぶやく。
「まさか城内の中にあれほどのだしゅつろがあるとは、さすが帝都だな。」
同じく隣に居た男、長い耳に金の長髪のエルフもそう感心したような声で人の列が消える縄文横の入り口を眺めていた。
「さてこれで避難の方は問題ないようだが、、、、。」
「まあこれからだな、偵察の報告だと正門前に現れた敵はまっすぐこっちに向かっているみたいだ。このままだとここで時間稼ぎをしなくてはならないかもな。」
「ああ、敵はこっちの数十倍居るって話だろ。」
「まあな、だからこうして俺達のような高ランク冒険者がここで足止めするために集まったんだろう、アスラ。」
「ああ、まさかお使いをしたらこんなことに巻き込まれるとは、、、ついてない。」
やれやれと肩を竦めて苦笑いをする赤い髪に青い目の男性、彼ははおるすではなのしれたAランク冒険者のアスラ。
彼ここルブクケルンに居るには理由がある。それはヴァンが朝早くファナと共に飛び立った日にギルド長であるグランに呼び出され。帝都のギルマスに手紙を届けてほしいと依頼を受けたからだった。
急ぎとあって、アイテムボックスに重い装備をしまって早馬でここまで約三日かかった。急ぎだったので、シアンと双子獣人はオルスで留守番している。
今になってはそれが正解だったなとそう思った。
「まあ町について依頼が達成して飲むぞとなった時にこれだよ。」
帝都のギルド長に無事手紙を渡した途端に外が騒がしくなり、城壁の外で爆発音が町に響いて、次に悲鳴があちこちから聞こえてくる。外に出て状況を確認したら。
城から騎士が早馬に乗ってギルド長と話をした後、緊急のクエストが発生し帝都全ての冒険者に市民の避難誘導と、防衛の準備とランクごとに仕事が割り振られていく。
「そうして俺達高ランク冒険者は城壁の上で足止めの準備にいそしんでいるわけだな。」
俺の独り言に律義に返す長髪エルフの男。彼の名前はリブロといい、クラン緑の鏃を率いてここを拠点に二十人くらいを率いて依頼をこなしている。
今は城壁の上で敵が来るであろう正門の方を睨んでいる。
「と言ってもこっちはお前さんのところのメンバーと俺くらいしかいないけどな。後はBランクが数名と、城の兵士数百、、、、、数では完璧に負けている。」
「な~に、それはやりようだろ、そもそも目的は時間稼ぎだ。今の避難状況から全員がこの奥の城壁までは入ってこれたから残り数時間と言ったころ・・・・。」
「団長!奴らおいでなすったようですよ!!」
不意にリブロの仲間である一人が正門の方角を指さす。城壁の前には正門まで一直線の大通りがあり。と言っても正門自体は見えず道の先にはちょっとした点が見える程度だ。
「見えんぞ、、、、。」
「いや、人間であの距離見えるんならすごいわ、、、エルフの目くらいだなこの距離が見えるのは。」
「なら何が見えるんだ?」
リブロは、額に手を当てじっと正門の方角を見る。その目はまさに狩人のように鋭く獲物を射抜くような瞳をしていた。
「もうすぐだ、もうすぐ始まる。」
そう口にするリブロの顔は先ほどまでのへらへらした表情とは違い戦士の課を突きと雰囲気を出していたのだった。




