第二章七節
「叔父様!ありがとうございます。助かりました。」
「かまわない。私はただ困っているお嬢様方を助けたに過ぎませんから。全く祝いの席にあのような無粋な輩がいるとは。」
先ほどの男に対し、ロイエは憤慨しては去っていった扉を睨みつける。結論から言えばさっきの男はただの酔っぱらいだった。
いろいろと悶着はあったが、その後駆け付けたヴラド伯爵の兵士達に羽交い絞めされ会場の外に連れ出されていた。
結局のところ、ハンナ王女を狙った刺客ではなかったことに安堵する。
その男は、爽やかにそう言って一礼する。
「久しいな、ロイエ元帥。」
と言ってラインハルトが声をかける。
「これは王子殿下、ご健勝で何よりです。」
目の前に立っている壮年の男性が一礼する。俺がこの人は?と聞くとラインハルトが紹介してくれ
「ヴァン、紹介しよう。彼はこの帝国に居る三元帥の一人でロイエ・フィロース公爵、ここから西にある港町バフロスの街の領主で、我が国の海軍の総司令官でもあるお方だ。」
「そして、ハンナ第三王女の叔父でもある。君がヴァンか、噂は聞いている。」
ラインハルトの紹介の後、ロイエ公爵はそう言って俺に手を差し出してくる。
「初めまして、ロイエ公爵、俺、、、、自分はヴァンと申します。この町でAランクの冒険者をしています。そして俺の隣に居るのが俺の相棒でファナ、同じくAランクの冒険者です。」
「、、、、初めまして。」
その手を取り、俺も同じように挨拶をし、隣に居るファナも同じく握手をする。
そこで、改めに彼の顔をまじかで見ると確かに髪の色は違うがハンナと同じ目の色で雰囲気もどことなく似ているのが分かる。
だが、手を取って全く違う部分も見える。とても強い。立ち振る舞いからもそうだが何より握った手からは、明らかに剣を手をして幾度も修羅場をくぐってきている人の手をしている。
俺達の近くに居る人物で例えると、ディオス大佐の深い思考を持った目をしていて、アスラのように力ず良く剣を振うような手をしていることが分かった。
そして、ロイエ元帥も、俺を観察していたようで手を握った後感心した表情で俺とファナを見て目を細めた。
「それで叔父様?どうして今ここにいらっしゃるのですか?」
お互いの自己紹介と評価を終えた後ハンナが声をかけてくる。
「ハンナが来るとウラド伯爵から連絡を貰ってね。飛翔騎士に乗って急いできたのだ。」
そう言たロイエ公爵は微笑を浮かべ、ハンナの頬に手を当てる。ガラス細工を愛でるように静かにそして優しく触る。
「すまない、一番つらい時に会いに行けない私を許してほしい。」
「いいえ、私は大丈夫です。お兄様、それにハンスさんも居ましたから。それに今は新しいお友達も出来ました。」
ハンナが俺とファナに向かってニコッと笑いかけてくると、ファナの側まで来て肩に後ろから手を乗せて笑う。
「そうか、ヴァン殿、ファナ嬢どうか、ハンナをよろしく頼む、見ての通り少しおてんばで、喧しいところもあるが。根は優しい子なのだ。よろしくしてくれ。」
「もう、叔父様!お転婆は余計です!!」
そう言って微笑む元帥にハンナが眉を寄せて頬を膨らませる。二人はそれなりにいい関係を築いているようだとこのやり取りでわかった、
「ええ、お任せください。」
俺がそう返すと、満足した表情で頷いてその場を去る、どうやらウラド伯爵の元に向かったようだ。
それを見送った後、ハンナは再びファナと一緒に会場内の方を回ってそれにハンスが付いて行く。
そして俺とラインハルトは、一度外のテラスに出て彼ロイエ公爵について話していた。
「彼は、さっきも言ったがハンナの母親の兄に当たる人だ。十代で士官学校に入り卒業後は海軍に配属され、海賊の討伐や魔物の討伐で功績を得て今の地位に居る。」
とラインハルトは語る。バフロースは元々フィロース家の領地で、軍に入った後元帥まで登った彼が後継者となったそうだ。そして、ハンナの母親であるロアナさんがその後に皇帝の側室に入りハンナが生まれその数年後に妹のロアナさんが病死したと言う。
帝都に残った妹の忘れ形見であるハンナに会おうとしたが、その時王位継承権を持ったハンナに、外部との干渉を拒絶した貴族たちに妨害された。
理由は、当時ロイエ元帥は左官クラスに上るくらいで、家の家督も当時父親が死んでからは公爵の爵位は皇室預かりになっていたことから、身分の違いで会うことが出来ないと言うのがその貴族達の言い分だった。
なので、最初は手紙のやり取りだけだった。もちろんその手紙も普通に届けられることが出来ず。ラインハルト経由で文通をしていた。
その後、多くの海戦や魔物討伐の功績を打ち立て元帥に昇格。皇室から爵位を得てバフロスの領主及び東方海域の総司令官に就任してようやく会えるようになった。
それからは、王都での会議や、行事があるたびに暇を見てはハンナとは仲良くお茶を飲んだりしてよく談笑している姿を見かけるようになった。
「昔は、規律が服を着て歩いているかのような人物だったが。ハンナに会うことが出来るようになってから丸くなったと彼の副官が話していたよ。」
「なるほど、ハンナが信頼できる一人と言うことですか。」
「ああ、ハンナを差し出すと言うカリオ公爵と真っ向からぶつかっている人物の一人だ。」
まあそうだろうな。彼の唯一の肉親で妹の忘れ形見ともなればそんな生贄じみた行為を許すはずもない。
見た目は冷酷そうだったが、姪っ子の前ではただのおじさんになっていたと先ほどの会話でわかった。
今このテラスから中を見ていると、彼がハンナを見る目には慈愛がこもっているのが分かる。大事に思っているんだなとそう思った。
「?なんだ、、、、?」
不意にラインハルトがつぶやく、彼の目線の先にはウラド伯爵に武装した騎士が寄り添い耳打ちした後、驚きと困惑の表情を浮かべている。
何人かが伯爵に駆け寄ると、会場内にざわつきが起こり始めあわただしくなる。会場の変化に俺とラインハルトは互いに顔を合わせ戻ろうとした時にハンスが血相を変えた顔で俺達を見つけると走り寄って来た。
「ラインハルト様!!!!」
「どうした!ハンス!!」
「帝都が!、、、、、、帝都が襲撃を受けました!!」
その言葉に、俺とラインハルトは高利付動けなくなっていた。
話は数時間前にさかのぼる。
ここは、シュディオロス帝国の首都ブルクケルン、この国最大の湖であるムース湖の上にある王城から橋が架かり、南に延びるメインストーリーを境に左右に広がるのは石造りの整った町並み、そしてそれを囲む城壁に守られ堅牢な作りの城壁。
地方から出てきた人にとってここはまさに都会と言った雰囲気で通りには人が溢れ、そこに並ぶ店は一つ一つが高級店のような豪華な作りになっている。実際中に入れば、並ぶ商品の品質の高さと、感嘆し同じくそこに書かれる値段に眩暈を覚えるほどだ。
ここは帝王のひざ元犯罪は少なく、住民の差別はない文化的な生活を送ることが出来る街だ。
日が落ちれば、街灯が一斉に灯り夜とは思えない明るさになる。この灯りは一晩中ついて夜中になれば半分になり、日の出まじかになればまた半分になると言う調整もされている。
これらの技術は、この国の魔導士、魔術師、錬金術師や魔法使い達の技術の結晶、他にも数多くの魔法技術が町全体に配置されて人々の生活を豊かにしている。
「おい!そろそろ交代だ。」
ここは城壁の上にある見張り台、都市を囲う城壁のに幾つか建てられた等の上にある小部屋の中で今日の仕事が終わる合図の声がする。
「おう!お疲れさん。今日も異常なしだ。」
「引継ぎは?」
「ない、本日も異常なし、まあ帝都に居るんだからそうそう問題は発生しないだろう。」
ここ数百年の間この都市は外敵にさらされたことがなく、有ったとしても、空を飛ぶ魔物が迷い込む位でそれも魔法使いが魔法を打ってすぐに終わる。
なので見張りに立つ兵士の仕事は、外よりも、中を見張ることが多く、外はほとんど見ていない。
「おい、あの船は?記録にないぞ?」
交代しに来た兵士が、配置に就くため外に出たところで声が聞こえてくる。
ドッン!!!!
その声は轟音に掻き消え、城壁はが激しく揺れた。




