第二章四節
無事にコカトリスの死体を回収して再び空へ舞い、本来の目的地である監視塔に向かう。
先ほど、追いかけられていた飛竜、ワイバーンとあの魔物はグリフォンと言うう物だろうか、それに乗った三人が目的地である監視塔に退避しているはずだ。
今回の依頼、おそらくあの三人に関係しているのだろう、まあその答えは実際に会ってからだな。そこでふと周辺の景色の変化に気が付く。
周りはの視界が少し悪くなり横から吹く風に雪が混じって吹雪いている雲も出てきたようだ。まだこの辺だけだろうがこのままだと山頂の方も天候が荒れてくるかもしれない。そうなれば、今日はオルスには帰れないな。
「ファナ、吹雪いてくる前に急いでここを離れよう。」
スピードを上げ雲の上に出る、やはり天気が崩れてきているみたいで山頂付近も雪が降り始めているのが見る。そんな眼下を見下ろすと監視塔が目に入り、そこには数人の人がこちらに向けて旗を振っている。
そこへ俺達は下りて行くと、5人の兵士が此方に駆け寄って来る。
「何者だ!」
部隊長らしき人物が声を張り上げ俺達を睨みつけている。来ているのは帝国の鎧でオルスの物と同じデザインの物を着ている違いが有るとすれば、軽装で動きやすくコンパクトな作りの物だ。
俺は急いで、ファナの背から降りて答える。
「俺はヴァン後ろに居るのは相棒のファナ、オルスの街領主ウラド伯爵の依頼で来た冒険者だ。依頼の内容はこの書簡を見てもらいたい。」
「なに?」
俺はアイテムボックスから、出発前に預かった書簡をその隊長格の人物に渡す。受け取ると中を開いてそれに目を通すと驚いたかをお浮かべる。
「では、あなたがランクAの冒険者で、国崩しを倒した。オルスの英雄!!これは失礼しました!!!」
慌てて敬礼をする隊長格の男、周りの兵士たちも同じように敬礼をする。その動作に俺は手を振り。
「いえ、お気になさらずに、それで書簡の中身の話なんですが。」
初めて会った人に仰々しくされても俺は対応に困る。人付き合いをそれなりにしてきた俺でもこの対応は初めてのことだ。
それよりも今は、依頼の方が先だと、話を進めようとしていると、後ろから三人の人影が此方に近づいてくるのが見える。
「少尉、あとはこちらでやります。あなた達は準備を進めてください。」
「ハッ!少将!」
兵士たちは、そう言って監視塔の方に向かっていく、代わりに先ほどの人物飛竜に乗っていた人だろうか、その人がフードを取り挨拶をしてくる。
「初めましてヴァン殿、私はハンス・ローエンライトと言います。先ほどは助けて頂きありがとうごさいます。」
黒い髪に黒い瞳を持った青年は、胸に手を当て爽やかにそう言ってくる。
とてもいい顔だ、整った顔立ちをしてまるで彫刻のようにきれいな肌をしている。だが、決してひ弱な印象は持てない、一つ一つの動作に隙が見えない。油断できない相手だと俺は思った。
そして疑問に思う、今回の依頼は要人の護衛だ、彼が護衛対象だとはとても思えない。なんせから感じる強さはエヴァと同じくらい、それこそ先ほどのコカトリスくらいは簡単ではないにしろ倒せるくらいのものは持っていそうだからだ。
なら残るのは、、、、と考えハンスの後ろに立っている二人に目を向ける。二人ともひーどを深くかぶって居るが片方は長身で体格もガッチリしていて男性だと言うのが分かる。もう片方は、体格からして女性だろうか、フードの隙間から長い金髪の髪が見える。
「いえ、こちらも仕事ですので、、、依頼の護衛と言うのは、、、、、、、後ろのお二人ですか?」
「ええ、ウラド卿にお願いした依頼はこのお二人の方々を護衛していただくためです。紹介します、この方たちは。」
「よい、ハンス、助けてもらったのだから私自ら名乗るのが礼儀という物だろう。」
ハンスの声を遮って背の高い方の男性が、声を出す。その言葉遣いからそれなりの人物で、ハンスよりも身分が高い人なのだろう。
男とその隣に居る女がフードを取り顔をみせた。背の高い方の男性は、金髪碧眼のでこの国の特徴なのだろうか、人間に同じ髪と目をした人は多い、この人もその例に漏れず同じだ。
隣にい居る小さい女性も同じくカールの付いたロングヘアーで、金髪碧眼の持ち主だ、他と違うと言えば、二人とも美形だ。それも超が付くほどの顔立ちで、男性の方は先ほどのハンスと同じく凛々しく、鋭い目つきをしその瞳に燃え上がる闘志を感じるほどだ。
その隣の女性、、、いや少女か、人形の様に可愛らしい顔をしている。まだ幼さが残ってはいるがとても凛とした目を持っていて不思議な雰囲気がある。
顔立ちからして二人は、親族か、兄弟かの関係だろう、少女の方は目の色が違うようでスカイブルーの澄んだ目をしている。
「私の名はラインハルト!シュディオロス帝国第一王子、ラインハルト・シュディオロス!先ほどの貴殿の戦い見事であった!改めて礼を言う。」
彼はそう名乗った。王子!第一王子!、、王族さんででしたか、、、、なるほど、、、、となるとお隣の少女は、、。
「わたくしは、この国の第二王女、ハンナ・シュディオロスと申しま。以後お見知りおきお。」
少女は、優雅にお辞儀する。その行動はまさにお姫様って感じだ。しかし、兄弟か、、、、、なるほど、これで伯爵の慌てていた訳が分かった。
確かにこんな山の上まで空を飛んで護衛に着けるのは俺しかいなかっただろう。しかし、そう考えるといろいろと疑問が浮かぶ、、、だが今はそれらの思考は後回しだ。
「俺は、、、、自分はオルスの街でAランク冒険者をしています、ヴァンと申します。下賎な身で礼儀作法に疎く申し訳ありませんがよろしくお願いします。」
俺は、もてる知識で礼をし、そう言ったがこれであっていただろうか、前世の記憶を頼りにそれっぽく対応してみたが、、、、。
「構わない、貴殿は我らの恩人だ、出来るだけ普段道理に接してほしい。」
「はい、わたくしもお兄様もそのような堅苦しいのは好きではありませんので。」
俺の挨拶がまずかったか不況だったかは分からないが、ラインハルト殿下とハンナ王女はそう言ってくれた。なので、俺は最低限の目上に対する態度で臨もうと頭を上げ一息しすると。
「分かりました。」
どうやら、話の分かる人物のようだ。俺自身も礼儀作法のほとんどは知らないので、とても助かる。
まあ、立場がそれなりの人なので敬語は抜かないようにしようか。
「それより、貴殿の後ろに居る者も紹介してはくれぬか、見たところ竜種、それもかなり高位の者のようだが。」
忘れてた、俺の後ろには今ファナが犬座りをしてじっと待っている。王子の視線がファナに向くと、ビクッと体を強張らせて姿勢が低くなりその大き体を丸め俺に寄りかかって来る。
その行動に、王女のハンナが「まあ!」と可愛らしい物を見る様なもえを出しキラキラと目を輝かせている。
ファナ、ここでもまだ人見知り体質が、、、その大きな体では隠れられないぞ、、、。しょうがないと言って俺は苦笑いを浮かべる。
「ファナ、まずは挨拶をしなさい、ほら元に戻って。」
そう言って、寄せてくる頭に手を置く、少し怯えが見える表情を俺に向けてくるが、俺はそれに笑い返す。
ファナは、目を閉じると体全体が光出す。青く輝く体は、まばゆく光り粒子となり、やがて一点に集まると徐々に人の形をとってそこにはいつものファナの姿が現れた。
その光景を、王女とハンスは驚いている顔でその光景を見ている。だがラインハルト王子だけは「ほう。」と一言発しただけだった。
竜から人に、変身を解いたファナは、すっと俺の前に出て。
「ファナ、、です。」
一言いって、再び俺の後ろに隠れるのだった。その行動に、ハンナ王城は皿に目を輝かせ、今にもこちらに駆け寄って来そうな表情をしている。まるで道端でじゃれ合っている猫を見た症状のような顔だ。
と言うか、じりじりとこちらに寄ってきていないか?なんか手つきに怖さを感じる。その行動を見たハンスは一つ咳払いをすると。
「皆さま、とりあえず砦の方へ行きましょう、今後のことをお話しいたします。」
今にも飛び出しそうなハンナ王女の襟をラインハルト王子が溜息一つしている。ハンスはそれを苦笑いし砦の方へと俺達を誘導するべく先頭に立った。
王子も、袖を掴んだままハンナを引きずってそれに続く、、、、、。
「俺達も行こう。」
俺も歩き出し、ファナも続く。目の前には引きずられたハンナが手をこちらに伸ばし好奇の目で見ている。それは俺ではなくファナに向けられていてその視線に築いたファナは背に隠れて続く。
個性のある王族様だな、俺は思いだが悪い人達ではない様だと、安心した。
監視塔まで歩く、地面は雪が積もり独特の感触が靴の底から伝わってくる。時折吹く風は冷たく雪がそれに乗り俺の頬を掠め解ける。その冷たさから不意に空を見ると、遠くの山には雪が降りそれが次第にこちらに向かってきていたのが見えた。
どうやら今日はもう飛べないなとそう思いつつ俺は監視塔の方へと歩いていくのだった。
「ファナ、しばらくこの鍋を見てくれ。
「うん、、、、、味見していい?」
「まだ駄目、野菜が煮込み切ってないから、おいしくないぞ。」
「、、、、分かった。」
少し、残念そうにしているファナを横目に、漬け込んだ居た物を取り出すと。大き目のフライパンにオリーブオイルを垂らす。
十分火が通った所に、スライスしたにんにくを加えてよく火を通していく、パチパチよオリーブがにんにくを跳ねさせルと周囲一帯に香ばしい匂いが漂ってくる。
「いいですね、空腹を刺激させられるいい匂いですね。」
「うお!ハンスさん!!いつの間に、、。」
フライパンを振うことに夢中で背後が疎かになっていた。そこには黒い髪に整った軍服を着て立っていたのは、帝国少将のハンス・ローエンライト子爵が立っていた。
「申し訳ありません、驚かせるつもりはなかったのですが、、。」
「ああ、かまいませんよ、料理に集中しすぎてました。」
パチパチ!とニンニクが跳ねる。先ほどよりその香ばしい匂いが部屋一面を支配していく。俺はそこにある物に付け込んでいた肉、先ほど解体したコカトリスの上質な肉だ。
「申し訳ありません、食事の支度を全て任せてしまって。」
「いえ、他の兵士さんは吹雪の対応で忙しくしていましたから。俺でよければいくらでもお手伝いします。」
あれから、俺達は砦に向かい今後の話し合いといらりの詳細を話しいざオルスへ向かおうとした時、外は天気は崩れていた。
これでは飛べないとして仕方なく俺達はこの砦でいっぱくすることになったのだ。
山頂にあるこの砦の兵士にとってはいつもの事だが、今ここには王子殿下と、その妹ハンナ王女がいる。そのためにここに駐在していた兵士達は、寝床の準備と吹雪の準備の二つに分かれ、夕食を作れる人が居なかったので俺がそれを担当することになる。
俺は先ほど仕留めたコカトリスを急いで解体し、必要な部分だけを取り出し今こうしてその調理をしている。
あまり時間がなく、凝ったものは作れないが、ある物が有ることを思い出してその準備をする。
コカトリスの肉をある物に付け込んでそれを取り出し皮の表面をフライパンに押し付けるように入れると、焼ける音を派手にならし、また違った香ばしさが鼻を突く。
その匂いに、懐かしさを感じ俺の顔は満面の笑みを浮かべる。この匂いをまた嗅ぐことが出来たことに、内心小躍りした気分だ。
俺以外も、ハンナや調理を見ていたハンスの顔も目を細め顎を上げてその香りを堪能しているのが見えた。
「これは!今までにない香りですね。オルスにこのような物はなかったはずですが、、、、。」
その筈だ、こいつは俺が直々に作り出し、トトロスとディオスの協力をしてもらい完成したものだ。あの町で俺が最初にしたものは。日本で使われる調味料類を探すことだった。
前世での俺個人の記憶はない、だが日本人だと言うことだけは分かった。理由は、アニメや漫画を知っていること、日本の歴史や文化が一番詳しいこと。漢字が書けることなどといろいろあったが。
一番はやっぱり醤油と味噌だ!料理をしていると無性にそれらが欲しくなる。だから俺は日本人だと力強く肯定で来た。
そして、数日町中を探し回った。商店街は勿論、トトロスやアスラ、ギルドマスターであるグランにも聞いて回った。だが俺の探していたものはこの町にはなかったのだ。残念に肩を落としていた俺だったが一つ希望を見つけた。
大豆だ、いや正確には大豆の様なものだが、それを見つけ俺はないなら作ろうと、いろいろと試行錯誤を重ねてようやく完成した。まだまだ味には粗が目立つが、見た目や香りはそのまんまの物が完成したのだ。これで俺の料理の幅は大きく広がる!
「醤油ですか、、、、確かにこの国にはない物ですね。癖はありますがいろんなものに使えそうです。」
細かい説明をできた過程を話した後、それら調味料を味見したハンスはそう言った。スプーンで掬って匂いを嗅いだ時に眉間に皴を寄せていたが一口なめると、表情は一変し目を見開いて驚いていた。
どうやら、問題はないようで、その後も何回か味見をしていた。正直この国の人に受け入れられるか分からないが、とりあえずは大丈夫だろう。
その後もハンスは、俺やファナの調理の様子を熱心に見ている。取り出した他の調味料や食材も彼の目に留まると熱心に観察したり味見をしていた。、、、、、なるほど。
「それで、ハンスさん、ここに来た目的は果たせましたか?」
そう言ったとたん、それまでファナがかき混ぜている鍋を見ていたハンスの動きが止まる、、。
「何のことでしょう?」
「王子様や王女様が口にする物だ。監視しするのは当然ではないですか?」
俺はフライパンに蓋をして火から遠ざけるとハンスの方へと向く、彼も真顔になって俺を見る。その目から、彼が何かを読み取ろうと目を細める。
「勘違いしないでくれ、あんたは自分の責務を全うしているだけだ。それを攻めようとは俺は思わない。」
「いえ、失礼しました。これは私の癖の様なものです。ご不快を与えてしまったようで申し訳ありません。」
ハンスは申し訳なさそう言って笑った。
その顔を見れば、悪気や悪意が無かった事はすぐにわかる。しかし癖がつくほどか、、、、。
「アンタは長いのか?あの兄弟との付き合い。」
「、、、、はいもう十五年になりますか。ラインハルト様とはハンナ様が生まれる前からのお付き合いをさせていただいております。」
「なるほど、、。」
長い年月を共にした彼は、きっと今までいろんな面倒ごとを処理してきたのだろうと察した。
身の回りに起きる不測の事態や危険を排除してきたようだ。と言っても俺の見立てではあの王子様もそれなりの力を持っているみたいだが。
ハンスがあのラインハルト王子にそこまでする理由がきっとあるのだと俺はそう感じた。
「さて、飯が出来たぞ!王子様たちはどうする?部屋までもっていきますか?」
「いえ、この食堂でお食事を頂くそうです。」
「分かった、配膳の準備を進めるのでお呼びください。」
ここではそれ以上は、何も言わずに話を切る。
「ええ、楽しみにしています。」
そう言ってにこやかに去る彼に目を向けると。その背中には一寸の隙もなく、まだ何かを警戒しているような雰囲気を出しているのを感じた。
「まだまだ、波乱がありそうだ。」
ハンスのその重く周囲を張り詰め、外のブリザードよりも冷たい背中からそう俺は感じたのだった。




