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第二章三節

 太陽の光が降り注ぐ空の上、季節は冬に入り下は曇りで、もう少しすれば雪が降りそうな天気だが、雲の上はそんなものとは無縁の世界だ。

 風は冷たいが、それにも勝る爽快感を体全体で感じる。ファナも、自由な空の上のびのびと翼を広げて空を気持ちよさそうに飛んでいる。

 さて、俺がなぜ今ここに居るかと言うと。それは昨日のことだった。

 あの歓迎会の夜、俺はあの後のことは分からない。悲鳴を聞いて駆け付けたランクAの冒険者であるアニラと金髪ショートポニーのポロナが、部屋の惨状とエヴァの姿を見て、二人に蹴りだされてしまった。

 その後、風呂に入り、、、もやもやとした頭で寝床に就いたのだったが、、、、。翌朝、アニラとポロナがそろって頭を下げてきた。

 誤解があったようで、その後エヴァに事情を聴いたみたいで、二人の勘違いだったようだ。まあ、それはいい、、、、それよりエヴァは?と聞いたが、、。

 

「「心配ない!」っす」


 と少し頬を赤くした二人が揃ってそう言った。何か三人で話していたみたいだが、、、、、。それにしても今朝はエヴァの姿を見ない、、、、。

 どうやら機能の酒が抜けずに部屋で頭を抱えて寝ているとのこと、、、、二日酔いか、、。

 なら、と俺はこうなるだろう仲間たちのために作って置いた物をポロナに差し出す。

 

「二日酔いにはこれが一番だ。持って行ってくれ。」


 了解っす!と元気に答えたポロナはそのままエヴァのところに向かう。そして俺はその日のうちにギルドでの用事を済ませる。

 用事と言っても、討伐したケーリュケイオスの素材と、まだ解体が終わっていない部位を届けるだけなので、すぐ終わった。

 そして次の日、廊下でエヴァに遭遇するも、相手は踵を返し慌てて去っていく。呼び止める間もなく遠ざかる背中を見て呆ける。

 そんな俺の姿に、一緒に居たポロナとファナは、二人して苦笑して、大丈夫だからと言うだけだった、、。

 どうも腑に落ちない気持ちで朝食を食べていると、来客だと知らせがあり、俺はそれに赴く。


「ヴァン、依頼を頼む。」


「開口一番いきなりですね。」


 そこに居るのは、白髪に赤い瞳のダークエルフでこの町の領主であるウラド・ロスイス伯爵だ。その後ろにいるのは、流れる様な金髪でロングポニーのエルフの女性でミレーユ・マフィオロス男爵が完全武装をし後ろ手に立っている。

 彼等との関係は、この町に住む切っ掛けをくれたところかの関係だ、特にミレーユやその妹のシャルルは、暇があると家に遊びに来たり、ディオス経営の酒場で飲んでいることがここ最近多い。

 ウラド伯爵も、時折り身分を隠して飲みに来ているのを見かける。どうやらここで作っているベーコンが好物なようだ。

 俺もテーブルを一緒に飲んだりしてこの世界のことや伯爵の冒険譚を酒の肴に飲み明かす。そして必ず最後は俺が領主館まで酔いつぶれた伯爵をお送りしている。

 まあ、俺達と伯爵一行の関係は、今とても良好だ。なので今回の依頼も二つ返事で引き受た。今日は特に予定はなかったし、内容もある人物の護衛に飛んでほしい。

 まあ問題ないし、依頼料も破格の金貨500枚だし、それに一番は伯爵がどこか心配そうに問いうか眉間にしわが寄っていた。

 俺の承諾を聞いた伯爵は、少しほっとした顔になりお茶も飲まずに早々と帰っていった。まあ、了承したからにはと俺も急いで支度をして、ファナを呼んで周りに説明してから急ぎ館を飛び出す。

 そうして今俺達はここにいる。


「さてさて、急いでここまで来たが目的地までもう少し、、、、一体誰なんだろうか。」


 目の前には山脈がありその山頂にちょこんと人工物がありそこから白い煙が一筋上がっているのが見える。どうやらあれが合流地点のようだ。

 東に一時間ちょっと言ったところには、北から南東に向かって伸びている山脈の山頂にある監視塔が今回の目的地で依頼の人物との合流地点だ。

 この国にはあのような建物が山頂と言った場所に複数ある。空の灯台の様な役割を持っていて、飛翔騎士達が山を越えるために使うらしい。

 飛翔騎士とは、まあこの国の航空戦力、空軍だ。そのほとんどは、ワイバーンで構成されているが、中にはグリフォンを使っているところもあるようだ。

 さすがにドラゴンを駆っている騎士は居ないようで、昔は居たようだが。今は飛竜が主流のようで、約4千の飛竜がこの国に分散して配置されていることを伯爵と飲んでいるときに出た話を思いだした。


「さて、目的地までもう少しだ。たんだぞファナ!」


『分かった!』


 バサ!っと翼を羽ばたかせて速度を上げる。風のあたりは強くなるが契約の力が働いているため、どんなに速度を上げても俺には風の影響は及ばない。

 まあ、原理は分からないが、お陰で俺とファナは快適な空のデートを楽しむことが出来るわけだ、、。


『ヴァン、、、、問題が起きてるみたい。』


 どうやら、俺とファナの至福の時間は終わりのようだと、ファナの向ける先に目をやる。そこには小さな複数の点が、巨大なモノに襲われているようだ。

 ここから見れば、ハエが、蜂に襲われているように見える。

 小さなハエの様なのは、どうやらワイバーンのようで、監視塔に向けて飛んでいるようだ、それを追いかけるモノは、、、、、とりか?

 ここからは、羽毛の様な羽しか見えず。どんな魔物か分からないが、、、、俺がとる行動は決まっている。


「ファナ!全速だ!!!助けるぞ!!!!」


『了解!』


 ドン!と音がした空に俺達は一筋の雲になり風を超えた。






「ええい!何たることだ!!」


 空の上は自由だ。しがらみも束縛もなくどこまでも続くこの空間は俺にとっては憩いの場所だ。相棒であるグリフォンのグライと共に、大空を羽ばたいて風を感じる時間こそまさに至高の時間。

 本来なら空から眺める風景を眺め目を遥か彼方へと向けて、思いをはせているはずなのだが。


『Goooooaaaaa!!』


 後ろから迫る脅威に今はそれどころではない、方向は大気を震わせ手確実に俺の命を刈り取ろうと迫っていた。

 目深くかぶったフードから後ろを見ると、物凄い殺気が、全身を襲う。その姿に忌々しく舌を打ちする。


「ええい、まったく間の悪い!」


「閣下!!ここは私達に任せ砦にお逃げください。」


 俺の横を飛んでいる飛竜に乗る騎士が声を張り上げる。


「馬鹿をゆうな!飛竜数騎でどうなる相手でもあるまい!もう少し行けば砦に着く!そうすれば魔導士と飛翔騎士がいるはずだ!それまで何としても全員で逃げ切るのだ!!」


 実際、飛竜とグリフォンは追ってくるコカトリスよりもはや、このままいけば確実に逃げられる。本来であれは俺の相棒グライであればあれ位の魔物とは造作もなく渡り合えることが出来るが、、、、、。


「お兄さま!」


「馬鹿者!顔を出すな!!今は口を閉じしっかりつかまっておれ!!」


 俺の胸に抱いた小さな命、俺の妹だ、今回の空の旅には俺だけではなく妹もいる。急に同行をしたいと言ってきた妹を、俺も軽い気持ちで許可を出してしまった。

 こんなことになるとは思わず今はとても後悔している。だが今となっては過ぎたことだ、今は何としても生き残ることを優先せねばと考えていると、胸元で叫ぶ声が聞こえる。


「お兄さま!あ、、あれは何です、、、、、何か、、、来ます!?!」


 また騒いでいる妹に、目を向けるとその目はとても怯えて西の方角を指さして震えている。俺は急いでその方角を見ると、そこには青い空と白い雲があるだけで何もない、、、いや、、、何か小さい物が、、み、、え、、。


「なんだ?」


 俺は目を細め、じっと見ると。小さい点が見る。それは動かず、、、いや、、徐々に大きくなって俺達の方に向かってくる。この期に及んでまだ何か問題の追加か!

 だが、俺は少し寒い物を感じていた。ここは高高度の空の上で、季節は冬になるころなのだ気温は低く寒さを感じるのは当然なのだが、それとは別にもっと奥底の恐怖を湧き上がらせる何かが俺の前進を支配した。


「あれは!間に合いましたか!」


 その得体のしれない恐怖を肌で感じていると隣にいた騎士がその点に向かい歓喜の声を上げる。


「あれが何か知っているのか!?」


「ええ、あれは、、、、。」


 とその騎士が言ううより早く、その得体のしれない気配が大きく肌で感じていた。急いで視線を戻し目に映る者に俺は唖然とするのだった。


「ドラゴン!!!」


 それは気配の大きさからは想像もできないほどの小柄だが、俺のグリフォン騎士たちの飛竜、後ろから迫るコカトリスよりも体躯は大きく、蒼い体は空の青さよりも深く陽光を反射し輝いてみえる。


「グオオオオオオオア!!」


 ドラゴンからの強烈な咆哮で大気が震える。その方向の先にいたコカトリスは動きが止まると、そこを目掛け飛んできたドラゴンが体当たりをする。


「Groooo!」


 その衝撃に吹き飛ぶコカトリス、だがすぐに体制を整えこちらに首を向け敵意のこもった目を向ける。


「ここは任せて逃げるんだ!」


 今目の前に飛来した青い光は、俺達とコカトリスの間に入り俺達を守るように空に立っている。いや、今はそれが問題ではない、そのドラゴンの背に青いコートを着た人物がそう言ってきたことの方に俺は驚く。


「了解しました!ここをお願いします!!」


 隣を飛んでる騎士がそう答え俺に砦へ先導する。それに従う中混乱した頭振り、今はただ妹の安全を第一考えその場を後にしたのだった。








 奇襲のような形で体当たりし魔物の進路に割り込むことが出来た。しかし、相手も少しよろけただけですぐに体制を整えている。

 

「さてっと、、、、、何だろうかあれは?」


 奇怪なる姿の鳥、鶏のように見えるが、下腹は鱗に覆われ、それに続く尾は羽ではなく二本の蛇が生えている。


『、、、、バジリスク。』


「あれが分かるのか?ファナ。」


「うん、あれはバジリスク、、、、鶏と蛇の体を持つ魔物、、、、耐久力が高くて、石化の毒を吐く、、らしい。」


「なるほど、、、、まあ大した事なさそうだが、、、毒には注意だな。」


 油断なく、、、ただ目の前の脅威に対して慢心無く対応するべく。アイテムボックスからクロトスを出し構える。


「行け!」


『うん!』


 ファナは翼を一つ羽ばたかせる。コカトリスも俺達に向かってくる。互いが正面からぶつかる。鉢合わせに俺は槍で羽を切り裂く。


『GYaaaooo!』


 切りつけた翼駆ら鮮血がこぼれる。すれ違い背を取るために向きを変えようとしたファナ、しかしその前に背後から何かが飛来する音が聞こえる。


「ファナ!」


 俺の声に反応して、翼を折り空を下降してそれをよける。どうやらあれが毒のようだ。見れば尻尾の蛇が此方に頭を向けて口を開けているのが見えた。


「背後にも注意しないと、、。」


 あれだと空中戦で背後を取ったとしても油断はできないな、、、、前から飛来する毒をよけながら追いかけっこはなるべく避けたい、、、、、なら。


「ファナ!もう一回正面からだ!」


 それにこたえたファナは、突撃の体制を取り斜め上にいるコカトリス向って力ず良く羽ばたく。向こうもこちらに首を向け体当たりしようと下りてくる。

 空に咆哮と雄叫びが響きこだまして、交差する瞬間に合わせて俺は槍を薙ぐ、一閃の斬撃は首を飛ばしそのまま宙を舞う、勝ったなと思ったが、首筋にチリチリと焼けつくような感覚に俺は魔力を込めて槍を振るった。

 剣先にじゅ!と音がする。見るとコカトリスの尾の蛇が口を開けているのが見える。どうやらまだ死んではいなかったようだ。すれ違いざまに毒を吐いてきやがった。本当に油断ならない相手だった。

 空を落ちるコカトリスの体は、力なく翼を天に伸ばし体は地へと落ちて行く姿を見るのだった。しかし鶏か、、、しっぽは蛇だけど、最近蛇繋がり多い気がする。何か縁でもあるのか、ケーリュケイオスの呪いなのでは、、。

 しかし鶏か、、、鶏肉は唐揚げが一番だけど、、肉!!


「ファナ!回収!!あれ回収するから追いかけてくれ!」


『う、、うん!』


 急いで降下するファナの背の上で俺は、鶏肉を使った料理を想像しながら落ちて行くコカトリスを見る、このままいけば、木森の中へと落ちて行くのが見える。

 あれならうまく回収できそうだ。コカトリス、、、、どんな味だろうと思いを馳せるのだった。 

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