第二章一節
「おい!そろそろじゃないか?」
一人の男がそう隣に立っている友人にそう言った。
ここはオルスの街にある大通りで幅は人が10人並んでもまだ余裕がある大きだ。この道は、町の正門からいったん右に曲がりそこから山の斜面にできた街を上り中腹のところで折り返して一番上まで行くV字を横にした道になっている。
その道の端には多くの人が並んでいた。数は二千、四千とこの町の総人口のほとんどがそこに集まっている。なぜ集まっているかと言うと事の始まりは五日前のことだった。
「数日前、南にある砦で国崩しの魔物ケーリュケイオス種が出現した。その魔物は巨大でこの町を一飲みにするほどだった。」
広告台、町の主要の場所例えば、中央の広場や、ギルド前や門の近くに設置されている。そこで領主や国の知らせを伝える。
今そのには町の騎士が革製の書状を手に声高らかに文面を読み上げ、それを市民が聞いていた。
国崩しの魔物、その名の通り一匹で国一つを滅ぼすほどの力を持つ魔物、それがここより南に出たと、それを聞いた人たちはどよめいていた。
この町はだめなのではと不安な声を出す一般の市民、討伐するための募兵か?と聞いている冒険者。その答えはすぐに分かった。
「だが、砦の兵士達と居合わせた二人の冒険者によって危険は去った!!」
そう聞いた人々は安堵し、冒険者は稼ぎ時を逃したと口々に愚痴をこぼしている者と、誰だ?と疑問に思った者もいた。
告知にあった冒険者、国崩しを相手できる冒険者はこの町には数人しかいないいったい誰がやったのかざわつきが起きていた。
「国崩しの魔物の討伐に伴い、活躍した騎士とその冒険者を中心に凱旋式を五日後に執り行う。それに伴い当日の大通りの使用制限について発表する。」
そう告知があってから凱旋式の準備は進められ今日にいたる。人々は数少ないこの町の娯楽として楽しみにしているようで、パレードの邪魔にならない場所で露店が多く出ているなどの賑わいを見せていた。
道の端には人の壁が道を作り凱旋式の始まりを心待ちにしていた。
ドンドン!と空に打ち上げられた音だけをならせる魔法がはなたれそれを聞いた市民は、一斉に門の方へと向くとラッパの演奏と一緒に門が開かれる。
ワアアアアアアアアアア!!!と歓声が街中を響かせる。最初に見えてきたのは。ウラド伯爵が礼服着た姿で現れその後に続く側近の騎士達が町のシンボルである風の紋章と風車が描かれた旗を持ち一定の距離で歩いていた。
伯爵は、この町に住む市民にとっては英雄だ。数百年前にこの町を作り付近にあるヘイズの森から現れる強敵の魔物を狩り人々を守ってきた存在として知られている。
そんな、人気のある伯爵が通り過ぎ次に目にしたのは10以上の牛が引いている荷車に積まれた巨大な蛇の頭、口は上下合わずできた隙間から零れ落ちている二つに先割れた舌が力なく垂れていた。
そのおぞましく恐ろしい姿に、参列した人々は悲鳴を上げていた。と言っても逃げ惑う人はいない、凱旋式とは言わないが巨大な魔物が町を歩くことはそう珍しいことではない、ヘイズの森で現れる魔物は個体差はあるが巨大な魔物もいる。
そしてそれを討伐しギルドへ運ぶために台車に乗せ移動することもちょくちょくあるのだ。まあ、今回の物は今まで見た物より大きいがそれだけでは早々取り乱さない。
それよりも気になることがある。これを倒した人物は誰なのかをその答えが台車の後ろから姿を見せた。
「これは結構恥ずかしいなファナ。」
「・・・・」
空は晴天なれどそよ風は冷たく頬を撫でる。昼過ぎの時間、俺は馬上にて大道理の中心をファナと二人乗りで歩いている。
「そう緊張しないで、リラックスしてほら笑顔笑顔!」
「俺は大丈夫だが、後ろはそうもいかないみたいだ。」
正門を潜り人々の歓声を聞いてから、ファナはじっと黙って俺の背中に顔を隠したまま動かない。無理もないか、なんせこれだけの人に見られているんだからな。
最近はギルドや町への買い出しで人の視線にもなれたかなと思ったが、もう少し時間が必要か。
「まあ、何にしても伯爵の話に乗ったのは正解かな。」
あの日、俺が目覚めた火に伯爵やギルマスのグランたちと話し合ったのはこのことだった。
ケーリュケイオスのような国崩しの魔物はおいそれと倒せるものではない、Aクラスの冒険者を10人以上もしくはSランク冒険者でないと討伐は難しい、そして難しいからこそその功績は大きいものだ。
その功績を大大的に知らせるため凱旋式と言った形を取った。そうすることでこの町で暮らす市民達に活力を与えることが一つの目的、そしてもう一つが、、、、。
「俺達のお披露目、、、、ね。」
俺とファナは、この町に来て約一ヶ月が俺達の存在はいろいろと噂されている。低ランクの冒険者が高ランクの魔物を倒せると言うこと、希少な魔道具を持っていることなどイランな話が飛び交っている。
中でも問題はファナだ、彼女右派この辺では見ない竜人族の少女だ、その希少さ目をつける輩が存在する。俺の持っているアイテムボックスもそうだが、これらに目をつけるもの達が存在した。
現に何回か問題が起きている。ファナに近寄り言葉巧みに連れ去ろうとしたこと、俺のアイテムボックスを売ってほしいと言って来る者もいた。祖言った者達による牽制の意味もあるのだろう。こうやって表舞台に立ち町にとって大切な存在と認識させればそう言った屋からも簡単には手を出しては来ない。
ウラド伯爵やギルマスのグランも、俺達がしっかりと認識されてこの町にとって重要な人物になることでいろいろと得をするようだ。そんなところで今こうして凱旋式に参加しているわけだ。俺自身も名が売れることは悪いことではないと思う。
「まあ、いいことだけとも限らないが、、。」
「どうした?」
隣を歩くシャルルが考えに耽る俺を見て声をかけてくる。
「いや、何でもない。」
まあ、今後周りがどう反応するかそれによってどうなるか、その時になってから考えよう。
いまはできるだけ愛想よく振舞おうと思い俺は手を振っている人達に俺も手を振り返すのだった。
群衆の中に見知った顔があった。エヴァ達だ、皆一様に俺とファナを見ては手を振ってくれている。
まあ御察しの通り賑やかしのポロナが手をぶんぶん振っているのが見える、と言うかすっごく目立っている。周りにいる他の奴らも若干引きつった顔をしているのが見えた。
「ヴァンさんさすがっす!すごいっす!」
「ぽ、ポロナ頼むからもう少し声抑えて目立ちすぎてるから!」
「まあまあ、いいじゃないですか、今日はめでたい!酒がはかどるってもんですよ。」
「ちょ!バルダスさんもう飲んでるんですか!!」
「おう!バルダスの旦那俺にも一本くれ!」
「アスラ!」
「なんだアニラ?こんな昼間っから飲むなってか??」
「私もいっぱい貰おうか。今はそんな気分だ!」
「ヴァン!ファナ!アンタら私よりランク低い癖に目立ってんじゃないわよ!!」
「姉さん顔がにやけてるよ。」
「ヴァンの旦那!とびっきりの串焼き用意しときまっせ!」
今日も元気な、我らの仲間たちは群衆の中にいても一際目立っている。目立ちすぎと言うか騒ぎすぎだ。
「お前ら!あんまり周りに迷惑かけるなよ!!」
「ヴァンさん!ごちそう用意して待ってるっすから!!」
「ああ、楽しみにしているぞ。ほら、ファナも。」
「うん、楽しみ。」
そう言って俺の背中に埋め居ていた顔を出してを振ったている。
「じゃあまた後でな!!」
俺もそう言って列へ戻る。途中勝手に抜けるなとミレーユに怒られもしたが。あいつらの割って騒いで笑っている姿を見れただけで式に参加た価値はあったと思った。
凱旋式は無事終了し今俺達は伯爵邸の一室に集まっている。そこにはウラド伯爵とギルマスのグランが座り、その反対側に俺が座っている。ミレーユとシャルルはあとかたずけ、ファナは人に酔ったようで別室で休んでいる。
「まずはご苦労だった。式の方は無事終了し領民にもいい刺激になっただろう。」
「ええ、領民からもいい反応が返ってきましたし、ヴァン達の顔出しもおおむね成功ですね、ギルドの方に早速何件か氏名依頼が入ってきていました。」
二人はそう言って満足そうにしていた。まあ狙いが当たったのだからそうだろう、俺としてもこの結果には満足だった。ファナには悪いことをしたが後でたっぷりねぎらうことで許してもらおう。
「さて、それもあるが今後のことだ、まずはヴァンAランク昇格おめでとう、このことはすでにギルドを通して町全体に広がっているだろう、ケーリュケイオスの魔物討伐の英雄としてな。」
「ありがとうございます。その英雄の名に恥じないように努めます。」
英雄か、そう呼ばれたくてあんな行動をとったわけではないが、客観的にはそう見えるんだろう。俺も今思い返してみれば英雄と呼ばれるに足る行動だったと思う。
まあ、何にしても、この英雄と言う肩書を存分に利用しよう。そうすれば俺達がこの町でも安定して暮らしていける。ならば俺はこれからも英雄として振舞っていこうと思った。
「それでその英雄に、一週間後ここであるパーティーに参加してほしい。」
「パーティーですか?」
「ああ、毎年この時期に開かれるもので、この一年間の終わり無事過ごせたことを皆で祝うこの町の祭りだ。」
要は忘年会の様なものだなと、まあ、祭りがあるのは前々から知っていたし、仲間たちとも祝う予定ではあったから、それに間に合うならいいかなと結論する。
問題は、ファナだな。あいつは人込みを嫌うからそれもお偉方の集まるパーティーならなおさらだ。
「それは、俺だけにですか?」
「できればファナ嬢にも出席してもらいたいが、今日を見る限りでは無理強いはできん、だからヴァンだけでも問題ない。」
「それでしたら問題ありません、ただ仲間内でもその日予定があるんで、途中抜けてもいいなら参加します。」
「ああ、私も最後までは居ないからな、問題ない。」
「分かりました、ではその日にと言うことで、。」
そう言って席を立って挨拶し部屋を後にした。




