第一章十一節
ゴオオオウ!と吐き出される炎の吐息は地面に這いずる蛇の群れを焼き、焦がし、灰にする。砦の前を埋め尽くしていた黒いモノを更に黒くしその後を地面へと映し出し、地面を一直線に線を描く。
端のまで行くと再び高度を上げる。そのまま辺幅してもう一度線を引く、何度も繰り返し大地に線を引く地面をキャンパスとして、その大地と言う絵を黒く染めるように何度も繰り返す。
緑一面の草原は、やがて黒一色になった。生きているものは居ない地獄に変えた。
「「「わああああああああああああああああああああああ!」」」
砦からは歓声が上がる。後ろから声の風を受ける。振り向くとそこには笑顔、一人一人が俺達を見て口を開け大声で叫んでいるのが見えた。その中にミレーユとシャルルがいた。手を上げぴょんぴょんと飛んで喜んでいるのが見える。
もちろんシャルルの方だが。その姿に俺は苦笑を受けべ笑う。
「ファナ、とりあえず塔の上に降りてくれ。」
砦で一番高い要塞の上、屋上のようになっていると頃を指さす。
『分かった。』
短くファナが返事をした後、その場所に向かって下りていく。近づくと見知った顔が俺達に向かって手を振っているのが見えた。
白い甲冑が光で反射し、それと同じように輝いている金髪ロングのエルフミレーユと、その隣には同じ格好の金髪ロングポニーのエルフでミレーユの妹のシャルルが、両手を高く伸ばし振って騒いでいる。
二人とも無事なようだ。そんな二人に近づくと、ファナは変身を解いて俺の腰に手を回してくる。この高さなら無事着地できるだろうと俺もファナの肩に手を回して着地した。
「ヴァアアアアアアン!」
着地した俺達に、シャルルが駆け寄って来る。その後ろにはミレーユと複数の騎士達。
「シャルル、ミレーユ、災難だったな。」
「ほんとだよ。ヴァンとファナちゃんが来てくれなかったら。私死んでた!。ホントありがとう!!」
俺とファナの手を取って、ぎゅっと掴んでくる、かすかにだがその手は震えていた。口調と表情とは違い、内心では本当に恐怖していたようだ。
「ヴァンそれにファナ、よく来てくれたな。」
遅れて、ミレーユが声をかけてくる。
「ああ、無事でよかったな。こっちも配達先が消えたんじゃ困るからな。」
「配達?」
「ああ、ギルドの依頼で、この砦に物資を届けるよう依頼があって来たんだ。」
「なるほど、遅れた補給物資は明日届くと聞いていたが、なるほど、、、、、、。」
ミレーユは、ファナに目を向け俺の腕にあるアイテムボックスの腕輪を交互に見て納得したようにうなずいていた。
「あ!そうだ、、、、ヴァン、ファナちゃんはよかったの?ドラゴンの姿みんなに見せちゃったけど。」
「ああ、大丈夫。別に絶対秘密と言うことではないし、ファナも了承したから。」
そう言うと俺はファナに目線を送ると、本当?とシャルルも見る。ファナはコクと頷く。
「まあ、このことで変なちょっかいをかけるようなら返り討ちだけどな。」
「うん!その時は私も協力するね!!ファナちゃんをいじめる奴は私が殲滅してやるから!!!」
フンス!す鼻息荒くそう言ってきた。後ろではミレーユがやれやれと肩を竦めている。咎めないところ返り討ちには賛成のようだ。
「さて、話はこれくらいにして、物資の納品とサインをお願いしたいんだが。」
「ああ、案内す、、、。」
ギュウウウロオオオオオオアアアウ!
ミレーユの話を遮り天地に方向が響く。慌てて聞こえた方を見る。
「なあああ!なんだあれは!!!」
一人の兵士が、驚愕の声を張り上げ森を指す。壁際まで移動した俺達もそれを見ると、黒い点が見えた。
それは緑の木々に空いた点、不自然、不釣り合いな色が浮かんでいる。なんだ?と重い目を凝らすと、その点が増える。
一つ一つと増えていく、合計九つの点が現れそして、メキメキと木のなぎ倒される音と共に森の中から巨大なモノが現れた。
漆黒の体に、怪しく光る金色の瞳が、砦を睨みつけていた。やがて地鳴りと共にそのすべてが分かる。黒い点は長く伸びる。首だった。
九つの首が長く天に上がり、赤黒い口を開けて吠えていた。
その姿に周りの兵士たちは茫然となり、中には失神して倒れるものまで、ただ立ち尽くす。
まさに、蛇に睨まれた蛙状態となり砦はシーンと静まり返る。
そして、鳴り響く地響き、その音に呆けた顔の兵士たちは悲鳴を上げ逃げ惑う。
「おいおい!あれはなんだ!!」
「ケーリュケウス!」
あまりの光景に驚いて声を出すと、ミレーユが答えてくれた。
その顔は青く濁っている。声も怯えていた。
「あれは、、、、国崩しだ。あれ一匹で、、、国が亡びる。」
「そんなにやばいやつなのか!」
確かに、ものすごい威圧感を感じる。見ているだけで体が動かなくなる。
改めて見ると、それが分かる。あれかものすごいエーテル、魔力を感じる。見ているだけで、体全体にかかる重さが倍増したようだ。
「ヴァン。」
何も、あの化け物をたやすく倒せるとは思ってはいない。見るからにやばいと思う。これまでヘイズの森の中で出会った魔物の中にも強いやつはいた。
見るからに自分より格上、絶対に勝てないと思うことなんてしょっちゅうあった。それでも、何度も挑んで戦って倒してきた。それに今は、、、、。
「ああ。」
隣にはファナがいるそれだけで何も怖くない。
「いこう!」
ファナが手を差し伸べてくる。「私も怖くないよ。」と言っているかのように綺麗に笑っている。
「ま、待って!ヴァン!」
シャルルが声をかけてくる。その目にはあきらめが映り真っ青な顔で俺達を見てくる。
「あんなの勝てないよ、、、逃げよう、、、。」
震え声の彼女は、寒空の下捨てられた犬の様に怯えた手で袖をつかんでくる。
まあ、無理もないだろう、あれほどの存在は普通ならこうなる。でも逃げって変わらない。
ここで逃げても、向う先はオルスの町、あの最悪は町へ向かう。そうすればまあ、冒険者、それも高ランクの冒険者が束になって掛かれば倒せるだろう。多大な犠牲を払って。
それは、なんかやだな。知らん奴は知らんが、あの町にはあいつらがいる。それだけでいい。
「心配ない、俺達に任せろ。」
俺達は壁を越え光となって空へ高く飛び立つ。光の中から蒼い翼が羽ばたく、力強く羽ばたき向かっていく。それをただ茫然と皆が見ていた。




