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第一章十節

 そこは、秋も終わりに近づいている森の中、大半の木々は枯れて葉は地に落ちる季節。

 森とは命の揺り篭であり、家であり、牢獄だ。命は生まれ、育まれて死んで逝く、そうしてまた新たな命が生まれていく一つの世界を作り出している。

 その中では植物や動物は勿論、魔物達もそこで生きている。森の中は弱肉強食の世界、弱い物から死に強いものは生き残る。

 魔物は森の中ではその頂点に立っている。しかし、その魔物の中でもヒエラルキーは存在する。人間基準で言えばSランクの魔物がそうだろう。

 しかしSランクのモンスターは個体数が少ない、最も多いのは、AランクとBランクが大半を占めている。ヘイズの森のような辺境も同じくA,Bランクのモンスターの数が圧倒的に多い。

 そして数は戦力を覆す。Aランクのモンスターが数をそろえればSランクも倒す。今も一匹数の差で打ち負かされている。

 そのモンスターがなぜ倒されたのかは分からない。そしてそれはこの森の中ではあたろ前のように繰り返されてきている。

 そしてその屍は、勝利者たちに与えられ、まれにその中から進化する個体が現れる。それを希少種や亜種といった物へと変化させていった。その変化は多種多様でその場の環境や生まれ持った体質で変化は決まってくる。

 今回も、それは起きた、Sランクの魔物の地肉を食らい己の力へと変えていく。やがて喰らいつくしたモンスター達は次の獲物を求めて森を彷徨う。その中でも一番巨大一頭が何かを嗅ぎつけ首を向ける。

 新たに見つけた得物へと森を進む。木々をなぎ倒し、地面を削りながらゆっくりと進んでいく。






 どうもっす!ポロナっすよ!!私達がこのオルスに住み始めてもう約一ヶ月が経過し、秋の終わりといった具合で朝はとっても寒いっす!

 朝練の時なんかは、吐く息も白く汗は湯気のように立ち上っている季節ですが、自分達はやっと安定したって感じで毎日を過ごしています。

 Aランク冒険者のアスラン達と屋台のトトロス夫婦がうちに住むようになってから本格的に動くようになった自分達はまずは職を探し資金を稼ぐことから始めました。

 ディオス大佐、元大佐がなんとお店を始めました。初めはいろいろと大変でしたが自分たちの住んでいる家のすぐ隣、メインストーリーから一つ道を外れた街路に2階建てのいい感じの物件が手に入ったっす。

 最初は空き家で、中も誇りまみれで痛んでいたっすけど。トトロスさんがドワーフの大工さんを紹介してもらってアッと言う間に改装をしてしまったっす。その技術力にみんなびっくりでした。

 最初は自分よりも背の低いおっさんで毛むくじゃらと言った感じで、酒臭かったっすけど、さすがと言うか仕事が始まったら職人と言った雰囲気に変わっててきぱきと作業をしていたっす。

 そのおかげで店は二日くらいで仕上がったっす。内装は神聖帝国式で、あっ!デザインは勿論ディオスさんがしてました。雰囲気も自分たちの故郷を思い出させてくれる物に仕上がっていたっす。

 外観は赤レンガと白を基調にした石造りの立派な酒場になってるっす。自分お酒はあまり得意ではないっすけど、その雰囲気が良くてよく夕食を食べに行くっす。もちろん、お金は支払っているっすよ。まあ、知り合い価格っすけど。

 ああ、ディオスさんのお店は酒場だけではなく、軽食も作っているっす。調理は、飛行船で一緒だった船内コックさん、森の中でもこの町でもヴァンさんと一緒になって自分たちの食事を作ってくれている人で、最近ではもっぱらその人が料理担当をしてるっす。

 そういえば最近、ヴァンさんとトトロスさんとで新たな料理を作っている見たいっす。ちょっと味見してみたっすけど、もう口の中がとろけるかと思うほどおいしかったっす。でもあれで未完成品だなんてもし完成したらものすごい物ができるっっすか!是非食べてみたいっす!!

 

「おう!ポロナちゃん!!」


「あ!トトロスの親父さん!!」


 自分に声をかけて来たのは、青いバンダナを巻いてガッチリとした体格のトトロスの親父さんだった。


「商売繁盛っすか?」


「おう!もうすぐ完売しちまう勢いだよ!!まったく旦那には足を向けて眠れないぜ全く。」


 家の隣なあった宿屋が火事になりその近くに家を持っていたトトロス夫婦の家も一緒に燃えて住む場所を無くしてしまっていた所にヴァンさんが声をかけて家に招いた見たいっす。

 最初は生きるしかばねと言った具合に目が死んでたっすけど、今は元気に屋台を再開しているっす。


「旦那に教えてもらったケバブってやつが大当たりでな、開店したらすぐに売り切れってもんだ。今は夕方の仕込み中ってことで閉店してんだよ。」


 そう言って屋台のカウンター前には、準備中の看板がぶら下がっている。


「良かったっすね!屋台が再開できて。」


「ああ、あの夜は本当に参ったよ。商売道具も、住む場所も無くなっちまって本当どうしたらいいか頭ン中真っ白だったな、幸い貴重品はアイテムボックスに入れて持ち出せたけどさすがに屋台まで入れることはできなかったからな。」


 アイテムボックス、形はいろいろだけど、ポピュラーなのはバック型なのがほとんどでその大きさよりもより大きなものをしまうことが出来る魔法のカバン。結構な値段で取引されるそれをなぜこのおっさんが持っているかと言うと。

 元Bランクの冒険者だった彼は、ケガで引退して屋台を始めたとか。その時に買っていた道具が今役に立っているみたいだ。


「まあ、今は元通りここで屋台をやれっるってもんだ。いや、売り上げ的にはまえいじょうだな全く人生何があるか分からんな!がははは!」


 そう言って豪快に笑うおじさんを見ていると自分もそう思うっす。なんせ自分もおっさんと同じ境遇なんすから。そのうれしさは共感できるっす。本当にヴァンさんには頭が上がらないっす。

 

「ところで、嬢ちゃんは?サボりか?」


「失礼な!見回りっすよ!!仕事中っすよ!!騎士団のお仕事中っすよ!!!」


 それは悪かったがははは!と笑うおっさんを口を曲げて文句を言う。

 そう、自分は今騎士団に所属してるっす。もちろんこの町のオルスの騎士団、シャルルさんやミレーユさんの騎士団ではないっす。エヴァ隊長を団長とした新しい騎士団っす。

 あの、朝の会議の時、エヴァ隊長は言ったっす。


「この町で、騎士団を起こそうと思っています。」

 

 そう言って事情と計画を話したっす。もともとミレーユさんやこの国の領主のヴラド伯爵様に相談していたようっす。でも、他国からの亡命者がそう簡単に騎士にはなれないみたいで、もしなるにはそれなりの貢献が必要だった見たいっす。

 だから初めに、エヴァ隊長は騎士団を独自に作り、まずはこの町に貢献をして実績を積むことにした見たいっす。例えば、町の中のドブ掃除や、夜間街頭の点灯係、町の見回り、特に夜間を中心にと言ったことをしてるっす。

 その仕事の報酬で、騎士団を運営してるっす。最初マスクにシャベルの格好をした体調を見た時は、ビックリしたっすけど、なんだかすごくたとしそうにしていたっす。なので、自分をはじめバルダス副隊長や他の皆も頑張って仕事をしているっす。

 

「最初は大変かもしれません、ですが今の私はすごく楽しいんです。何もないところから少しずつ積み重なっていくことが何よりも楽しい。だから私はどんなことだってします。ドブ掃除でも、畑仕事でも。なんだってやります。」


 そう笑って話しているっす。なら自分も頑張らなくではと思ったっす。


「しかしエヴァの嬢ちゃんも立派だね。まだ少ないけど買い物客が噂しているよ。奇麗な姉ちゃんが、不釣り合いな装備で街中を走り回っているってよ。」


 そう、騎士団として始めてそう日は立っていないけど、自分たちはそれなりに有名になったっす。何が有名かっていうとエヴァ団長自身が有名っす。

 容姿可憐で輝く銀髪の髪をした少女が、スコップを手に毎日泥だらけでドブ掃除している姿を見て噂になっているっす。もちろんいい噂っすけど。

 その仕事ぶりを見た人たちが、いろんな仕事を自分達に頼むようになってきたっす。

 

「そんなわけで今自分は、忙しいんっすよ!」


 手に持っているケバブをもぐっとかぶりつく、それをにやにやと見つめるトトロスはそうかそうかと笑って話を聞いていた。


「ま、お互い忙しいようで何よりだ。」


「そっすね、これも全部ヴァンさんのおかげっす!」


「ああ、そうだな、、、、その旦那も今は南の空の下ってか。」


「そうっす!南に三日行ったところにある砦にお使いだそうですよ。」


「そうか、旦那なら大丈夫だろうが、そろそろ雪が降りそうだしな、この前の雨なんか若干凍ってたしな。」


「そうっすね、本格的に冬になる前に帰ってきてほしいっすね。」


 ポロナとトトロスはそろってすらを見上げる。薄い青と白の空どこか寂しく冬の到来を知らせるように少し寂しく二人の目には映っていた。






『寒い、、、。』


 下から聞こえる声が心なしか震えている。目を向けると赤い角に深い青の鱗が太陽の光に反射して光っている。


「もお少しで目的地だから頑張ってくれ。終わったら何か温かいものを食べよう。」


『、、、、、わかった、、。』


 俺は、首筋をなでてやると少し不満の声でそう返事するそれに苦笑する。

 俺達は秋終盤の空を飛んでいる。なぜかと言うと、簡単に言えばお使いだ。ウラド伯爵のお使いで南にある砦に補給物資の運搬を頼まれたのだった。

 そしてこの依頼にはもう一つ、俺とファナの昇進試験も兼ねていた。あれは3日前のことだ。俺とファナはあの日、オーガの群れを討伐した日からギルドの依頼をこなす毎日を送っていた。

 採取系、討伐系、といった物を中心に依頼を受けてそれを達成させていた。家の方でも、エヴァやディオスが着々とここで生活していくための下地を整えていったのを確認し俺も、俺の生活をしっかりと安定させようと毎日頑張っていた。

 そして、ある日ギルドへ依頼の報告をしていると。


「ヴァンさん、お待ちしていました。ギルドマスターがお呼びです。」


 受付嬢の金髪ハーフアップのエルフで、名前はルルナさん、彼女とはここのギルドに初めて来たときに受付と登録のお世話になった人だ。あれから俺もいくらか話す機会があったのでそれなりに交流をしていた。

 ある日、帰る途中で彼女を見かけた。話しかけると最近できたお店を探していたようで、そのお店がディオスの酒場だった。帰り道だった俺とファナは彼女を案内し共に夕食をと誘った。

 店に案内して、中に入ると。ディオスが「お帰りと」言っていたので、この店は俺がオーナーをしていると伝えるとひどく驚いていたのを思い出す。そんな彼女とファナで席についてその日は驚かせたお詫びとして俺がおがった。

 そして食事が始まり酒が入るといろいろと話してくれた。名前をルルナと言って。最近故郷から飛び出して、エルフつながりのウラド伯爵でこの町に住み始めたとか、ギルドの受付嬢としての仕事はまだ一年にもなっていないく新人であるとか。

 上司の小言や説教が理不尽だとか、冒険者にナンパされて困っているとか。ギルドマスターは怖い、、、、などなど、酒の勢いでいろいろと話してくれた。まあ、溜まっていたのを吐き出しているようで終始しゃべりっぱなしだった。

 俺も相槌を打ちながら聞いてはいたが、いつの間にか眠ってしまった彼女を性がなく介抱し家まで連れて行った。後のことはポロナに任せて、次の朝、ものすごく頭を下げて謝って来た。

 まあそれ以来、彼女とは少し仲良くなった。


「グランさんが?、、、、なんだろう。」


「内容は聞いていません、私がご案内しますのカウンター内に入ってきてください。」


「了解。」


 ルルナさんに案内されたのは大きな扉の前に立つ。


「ギルドマスター、ヴァンさんファナさんをお連れしました。」


「入れ。」


 短くそう言って目の前の扉が開く、中央には大きな机と、左右に3人は座れるソファーが置いてあった。正面の机にここオルスのギルドマスターグランが座っていた。

 ガッチリとした体格に、重い声をしている。顔を見ると無数の傷が走り、厳つい顔をより一層際立たせていた。


「よく来たな、まあ座れ!、、ルルナすまんがお茶を入れてくれ。」

 

「はい。」


 ルルナさんが退室したのを見て、ギルマスのグランさんが話し出す。


「お前さん方を呼んだのは、二人に昇格試験を受けてもらうためだ。」


「昇格試験?」


「おう!二人がジェネラルオーガを討伐した日にな、アスラから推薦があったんだ。おまえらをFランクにしたままはもったいないってな。」


「アスラが、そんなことを、、、。」


「おう、それで、今日までの依頼達成率と討伐できるモンスターのランクから、お前ら二人はもっと上のランクにしても問題ねえと判断した。」


 失礼します。と言ってルルナさんがお茶を入れてくれた。それを貰い一口飲んでから尋ねる。


「試験と言いましたが具体的には何をやればいいんでしょうか?」


「それも用意している。まあ、簡単だあるものを運んでもらいたい。お前たちのこれまでの依頼は討伐か採取だけだったが。運搬や護衛といった物はやっていなかったな。それをやれはお前達は晴れて昇格することが出来る。」


「なるほど、それで荷物は何を運ぶんですか?」


「軍事物資だ槍だの剣だのといった物をそれを町の南に行った場所にある砦に届けてほしい。結構な量だがまあアイテムボックスを持ったお前さんなら問題ないだろう。」


「解りました、それでいつ出発ですか?」


「明日の早朝にここに来てくれ。物資は解体場の中に置いておく。」


「解りました。では明日に、、、。」


 そうして次の日の早朝に俺とファナはギルドで大量の物資を受け取って日の出と共に出発し今に至る。


『ヴァン!』


 物思いに耽っていると、ファナの緊張した声が聞こえてきた。何事かと意識を前へ向ける。


「どうした?」


『下を見て!何か変なのがいる。』


 ファナの首元からから顔を出し下を覗いてみる。そこには草原があり左手にはヘイズの森が広がっているのが見える。

 その緑一色の地上にポツンと六角形の構造物が見えた。どうやらあそこが目的地のようだ。やっと着いたかと思ったのもつかの間、その砦の周りに奇妙なものが見える。

 なんだ?とよく目を凝らすと。そこに見えたのは黒い線しかも動いていてそれが何百と要塞の方に向かっている。


「なんだあれ?ファナ!高度を下げてくれ!!」


 降下して、地上に地下ずくとそれがはっきりと見えてきた。


「蛇だ!なんだあの数は!」


 空から見えていた黒い線は、巨大な蛇の群れだった。すべて森から出てきている。

 この高さと砦の大きさと比較してかなり巨大であることが分かった。中には頭が複数あるモノもいた。その光景に俺は身震いし背筋が寒くなった。


『ヴァン!あそこ見て!砦の東側の塔の上!』


 そこに映し出されていたのは、戦闘の様子だった。多くの兵士が城壁の上から矢を放ち、魔法を打って応戦している様子が見れる。その中心に日時は目立つ存在がいた。

 白銀の鎧に身を包み黄金色に輝く髪をなびかせて周りにげきを飛ばしているのが見えた。俺達が知っている人、、、いやエルフだった。


「ミレーユさん!何でここに!!」


 ウラド伯爵の騎士で双子のエルフの片割れであるミレーユ彼女は、俺達がヘイズの森を出た時盗賊の集団に襲われていたのを助けた時からの知り合いだ。

 真面目な少し堅物と言った武人が鎧を着ているような人だ。整った容姿に流れるような黄金色の髪が周りの兵士だけでなく冒険者からも人気が高い。

 その彼女が今下で戦っているのが見えた。しかも苦戦している。


「まずいな、、、、ファナ。」


『うん、私は大丈夫だよ。ヴァンが何を考えているか分かるから。』


「そうか、ありがとう。」


 俺はここで、見捨てると言う選択肢は出ない。しかしそれでは、ファナのこのドラゴンの姿を人前にさらしてしまうそうすれば周りからどんな目で見られるか、、、。

 俺はそれを心配していたがファナは察してくれたようで、安心して、とこちらに目を向けてくれた。なら俺も覚悟を決めよう。たとえ国だろうと何だろうとファナの人生を脅かす者がいたら俺は徹底的にそれを叩く、そう心に誓った。


「よし!腹は括った、行くぞ!」


『うん!』


 そうして俺達は空から真下へ向けて急降下していく、要塞から聞こえる戦いの声が徐々に大きくなって耳に届いてくる。その中に聞き覚えのある声が俺の名を叫んでいるのが聞こえた。

 砦に目をやると、金髪のポニーテイルが目に入ってくる。シャルルだ、ミレーユの妹で同じく伯爵の騎士が剣を高らかに掲げ叫んでいる。

 アイツも居たのか、これは何としても負けられない!


「ファナ!一発かましてやれ!!」


『グウウルルルアアアアアアアアオオオオオ!』


 高らかに叫ぶドラゴンの咆哮に、今全ての視線は俺達に集まっている。その浴びる視線の中でファナは特大の火球を城塞の少し離れた位置に放った。

 ごうごうと燃える蒼い炎が唸りを上げ、触れたものすべてを灰塵へと変えていったのだった。

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