第一章八節
「ただいま帰りました。」
夜、空が黒くなり東の空には徐々に星明りが輝く頃、俺とファナは今朝受付したギルド内のカウンターに前に来ていた。
今ギルドのカウンター前で出発する時と同じ金髪エルフの受付嬢を前にして依頼の品であるマクニウ草を取り出していた。
「は、、い、、え?」
カウンターには人が一人隠れるくらいの量のマクニウ草が山と積まれている。それをこの場で出したことで注目も浴びるが俺は気にせず話を続ける。
「確か十本で銀貨一枚でしたよね?」
そう声をかけると、あまりの量で固まっていた金髪エルフ嬢が「ハッ!」と我に返る。
「は、はい!すぐ数えますので少々お待ちください!!」
そう言って奥の扉へと姿お消しすぐに数人の人を連れて山と積まれたマクニウ草に手を取り束を作っていく。
「おう!随分と取って来たんだな!」
大剣を背負ったアスラだ。
「そっちは終わったのか?」
「おう、こっちの報告は終わった。終わったがアンタに頼んでいたオーガの死体を素材として渡したいんだが出してくれないか?」
そう言って奥の扉を指す、そこには虎の耳をした大楯を持った女性シアンが手を振っているのが見えた。
「ファナ、すまないがここで待っていてくれ?」
「うん、、わかった。」
大丈夫だろうか?人見知りな彼女を一人にしてと心配したが、まあ大した時間ではないから大丈夫だろう。
返事を確認し、アスラと共にギルド奥にある扉を潜るとそこには大きな空間が広がっていた。そこにはすでに依頼を終え素材の確認を鑑定をしている冒険者とギルド職員があちこちに散見される。
解体や、魔石の鑑定を行っているようでとても活気がある。
「あそこだ。」
アスラが、指さした一角には複数のギルド職員達とシアンが立っているのが見える。
「おう!アスラ、待たせてくれるな!」
中でも一番大柄な男がこちらに振り向き手を振っている。
「すいませんグランさん、お待たせしまして。」
大柄なアスラが、腰を曲げて謝っていることに俺は驚いた。二人ともとても親しい間柄なのだろうか?それよりも驚いたのはあのアスラの態度だった。アスラとは今日あったばかりだが、第一印象よりかけ離れた姿を見せていた。
「ヴァン!紹介するこの人は冒険者の先輩で、ギルドマスターのグランさん。」
「おう!お前さんか!ジェネラル級のオーガを討伐したって言うFランク冒険者は!」
室内、いや、ギルド内全体に響くかのような大声で言って俺に詰めかける。巨大すぎる声は周辺にいた冒険者達にも聞こえたようで、ぎょっとなりこちらを振り向いている。
その視線は初めにギルドマスターであるグランに向けられ、声の内容を理解したようで次いで俺に向けられる。
「初めまして、ヴァン、、です。」
大声に驚き、少し怯んでしまったがとりあえずぐっと堪えて、挨拶をする。
「おう!ここのギルドマスターを任されているグランだ!早速だがオーガを見せてくれ。」
ギルドマスターと名乗った男は身長は俺や、アスラより高く、恰幅が良い筋肉の塊のような男だった。しかし一番目を引いたのはその顔だった。頭は剥げており顔も厳つく無精ひげを生やしている。しかしもっともめだつのは左顔半分に深い傷跡だろう。その傷跡のせいで厳ついかををもっと厳つく見せていた。多分ファナ辺りはまともに顔を見ることはできないだろうと思えるほどの恐ろしさがあった。
そんな恐ろしい顔つきのギルマスグランに促され、アイテムボックス内にある、オーガの死体、特にジェネラル級のを出そうと少しその場を離れる。
ズドン!と重いものが地面に落ちた時のような音が室内にとどろく、そうすると俺を見ていたほかの冒険者達が悲鳴を上げる。
近くにいたギルド職員の数名がしりもちをつき、若い冒険者がその場から逃げ出していた。ギルマスグランは「ほう!」と一言しゃべるだけでその様子を腕組してみている。
アスラから預かった二体分のジェネラルオーガの死体を出したところで俺に声をかけた。
「確かに、ジェネラル級だ。こっちの切り口が鋭い方がヴァンが倒しはオーガか?」
そう言ってグランは、オーガへと近づいて死体の様子を見ている。
「はい、そうです。」
アスラも同じように、オーガへとち数いていき俺も同じように移動する。
「見事な切り口だ、得物も相当な業物だが腕前もAランククラスだ、、、。」
グランは顎に手添え俺を見るとじっくりと四肢を確かめるように見つめてやがて。
「どうやら相当だな、お前の話以上に、、。」
「ああ、それだけの価値はあると思います。」
何のことだ?と俺はアスラとグランのやり取りに首をかしげる。
「ヴァン、このオーガの死体だが家で買い取ることでいいか?」
「ええ、お願いします。他にもオーガの死体がありますが、そちらもお願いします。」
「わかった。どうれ位の数あるんだ?」
「ざっと50体以上ですね。半分はそこに居るアスラが討伐したやつも俺が預かっていますので合わせてお願いします。それでいいか?アスラ??」
そう言うと、アスラもうなずいた。俺は職員の指示で空いているスペースに残りの死体を取り出すとそこには山と積まれたオーガが姿を現す。さすがに全てを出すことはできなかったので残りはまた後日に買い取りをしてもらうことになった。
「さて、俺はこれからやらなくてはならないことが出来たから戻るぞ。報酬を出すよう指示したから受け取ってくれ。」
ギルマスグランは、幾人かの職員に指示を出し扉の奥へと消えて行った。それをお辞儀であいさつしているアスラが。
「さて、俺達も行くか。」
「おい、さっきの話ってのはなんだ?」
先ほどのやり取りが気になって、先を歩くアスラに尋ねると。
「フッ、あとのお楽しみだ!」
いたずら小僧が悪だくみしているような顔で俺を見る。隣を歩くシアンも肩を竦め苦笑しているだけだった。そして俺達が部屋を出ると。
「ヴァン、、。」
ファナが袋を見って、俺に駆け寄ってきた。
「終わったか?」
「うん、これが報酬だって。」
マクニウ草の清算が終わったようで、ファナが袋を俺に差し出す。その中を見ると金貨が数枚と銀貨が数十枚入っていた。報酬としてはまずまずの稼ぎだなと思った。
横で覗き込んだアスラも、「稼いだな!」と言ってくる。しかし、俺達がこの町で暮らしていける額かと言うとまだ足りない気もする。まあ、初めの依頼にしては上々だろうと満足し金貨袋をアイテムボックスにしまう。
「お、、、お持ちしました!」
隣から声が聞こえ、振り向くとそこには、俺の受付をしてくれたエルフの受付嬢さんが立っていた。
「こちらが素材の買い取り金です、、!」
手には先ほど手にした袋よりも幾分か小さい物がトレーの上に二つ載せてあった。それを見て俺は首をかしげる。
ジェネラルオーガはの素材にしては少ないなとおもったが隣のアスラは気にせず受け取っていたので、俺もそれを手にすると、受付さんはホッと息を吐いていた。
「グランさん、奮発したな。」アスラがそう言って袋の中をのぞかせた。俺も袋の中を見て一枚取り出す。
そこには俺の持っている金貨や銀貨と同じ円形の形をしているが、色と模様が違っていた。
「た、確かに白金貨20枚!お、お渡ししました!」
なるほど、高額だから緊張したのかと思い改めて俺はそれを見る。
この世界の貨幣は銅貨、銀貨、金貨と、異世界ではおなじみの者だったがそれに加えて白金貨と言う物がある。金貨50枚で白金貨1枚と言う計算だ。白金貨は普通に暮らしていればそうお目にかかるものではない。
普通に一日暮らしていれば、銀貨3枚あれば1日を過ごせる。宿だと、銀貨1枚から10枚の値段だ、大体銀貨1枚で100円ほどだ、銀貨百枚で金貨1枚とするとこの白金貨は、、、!
(2千万!!、、、、予想以上だ、しかしこれならしばらくは安心して暮らせて行けるな。)
この金額なら、俺達が10年くらいは何もせずに暮らしていけるなと言ってもいろいろと入用はあるだろうが、当面は安心して暮らしていける。
まあ、この町でやりたいことをやるには金がかかるし、いくらあっても足りないことはないだろうと、ともあれ、金銭的には余裕ができた、今日得ることのできた収入を半分にして袋に詰めるとファナに手渡そうとして押し返された。
「どうした?」
「お金は、ヴァンが持っていて、その方が安全だから。」
そう言ってアイテムボックスを見る。確かにここに入れておけば盗まれる心配はまずない。なんせ俺以外は使えることが出来ないうえ盗み出し使おうとすると相手は腕輪に魔力を吸われてしまい最悪死んでしまうからだ。
しかし、それではと、片方の袋に銀貨数十枚を残しそれを渡す。お金が必要な時に俺が近くに居なければお金を使うことはできない。なら少量は持っておくべきだと言って手渡す。まあ、ファナの場合全て食事代で消えてしまいそうだが。「分かった。」と受け取ってくれる。
「さて、帰ろうか。」と話しているとアスラが声をかける。
「お、帰るのか?どうだこれから飲んでいかないか?」
「悪いが、今日は遠慮させてもらう。」
「そうか、まあ機会があったら飲もうぜ。おごっからよ!」
「ああ、その時はよろく頼む、今日は世話になった。」
「いいや、俺達の方が世話になったよ。」
差し出された手を取り固く握手をする。今日はいろんなことがあった。初めての依頼からここまで大変だったがいろいろと楽しかった一日になった。
予想以上の収入を得ることが出来たし、なのよりアスラ達と知り合えることが出来たのが今日一番の収穫だった。この異世界での情報や知識を得られるだろうと思ったからだ。
大剣使いのアスラに、獣人であるシアンはAランクの冒険者、同じく冒険者で双子の獣人族であるCランク冒険者のマナとミナ。その飲み会の時話してもらおうとも思った。
別れの挨拶を交わしていた時ふと周りを見る。双子の彼女達がにも挨拶をと思ったが、姿を見ていない。
「そういえばあの双子達は何処に?」
「ああ、あいつらなら宿に先に帰っている、、、、と噂をすれば、」
そう言って俺の肩越しに入り口を見て手を上げたアスラ、俺も振り返るとそこには双子のマナとミナの姿が見えた。
俺達を探しているのかきょろきょろと視線辺りを見ていたがアスラの姿を見た途端慌てた様子でこちらに走り寄ってくる。
「た!大変!!大変よ!!!」
と、焦った様子でこちらに近づいてくる。
「や、宿が燃えちゃった!!」
「なんだ、、、と、、、。」
それを聞いたアスラとシアンは呆然と立ち尽くしていた。




