第一章五節
西の空はまだ暗く星が見え、東からは朱く染まった空がのぞいている頃の早朝、俺達はオルスの町へと向かってあるっていた。
先頭をミレーユ、シャルルの2騎が先導し、その後ろに伯爵を中心とした騎士達、さらにその後ろにエヴァ、ディオスの神聖帝国の元兵士たちが2列になって続いていた。
早朝にも拘らず、皆の足取りは軽く町へと続く道のりを楽しく歩いていた。
彼等はこの国で、居場所を得ることができこれまで気の休まる時間が取れず神経を張り巡らせた生活をしてきたが、一息付けると安心したようにその表情は緩んでいた。
そんな彼らの表情を見ていて俺は嬉しくなった。ここまでの道のりは決して楽なものではなく彼等とも親しくなることができた。そんな彼等が、これからの人生で報われてほしいそう思ったら今の状況に嬉しさがこみ上げた。
「どうしたの?」
「うん??」
隣を歩いていたファナが、俺の顔を覗き込んでくるその顔はいつもの表情乏しい顔とは違い、どこか嬉しそうにしているのを感じた。
「顔が笑っているよ。」
そんなに顔に出ていたかな?と頬に手をやり確かめるように揉んでみる。
「何か面白いことでもあった?」
「ああ、これから行く街にはどんな食材があるのか想像して、それをどう料理しようかと想像するだけで楽しみなんだ。」
「うん!ヴァンの料理おいしいから私も楽しみにしてるね!」
ファナはそう言って花の様に敬礼な笑顔を向けている。それを聞いてた周りから「自分も楽しみっす!」と声が上がるみんなが笑っていた。
「町が見えたぞ!」
そんなやり取りをしていたら先頭から声が聞こえた。すると周りの仲間達は顔をそれに反応して前を見ようと顔を列からひょこひょこと出している。俺も同じようにのぞき込むとその姿がはっきりと見えた。
白い城壁が目に入り、その奥には建物が並んで立っていた。山の斜面に建てられた家々は規則正しく山の頂上から並ぶように建てられていた。中でも一番目に目を引くのは山頂に建てられた巨大な風車だった。
それ一つだけで山半分くらいは面積を使って建てられていた。時間は早朝で日の出とともにその羽を回し始めている、すると所々の煙突からは煙が立ち込め人の気配がより強く感じるようになったころ町全体が日の光を全体に受けて輝きだした。
俺は、その光景に見入ってしまった、これほど幻想的な光景に唖然としていた。とてもきれいだとそう思ったのだ。
「どう~私達の町は?大きいでしょう!」
いつの間にか横にいたシャルル聞いてくる。
「ああ、見事だな。特にあの風車がすごく立派だ。」
「うふふ~そうでしょう!あの風車は寝、地下から頂上の山まで水を引いているんだよ、だからあの町では井戸は一つもないんだ。あの大きい風車が汲み上げと一緒に水路を使って町全体に生き渡らせているんだよ。」
「へ~。」と、周りで一緒に聞いてた何人かそう答える。
「あの小さいのは何に使っているの?」
前を歩くエヴァが聞いてくる。
「ほかの風車は、その溜池から各区画に水を引くために作られていたり、工房や機械作業にも使われているよ。後は移動手段や荷物を運ぶためのリフトの動力にもなっているんだ。」
「面白いっす!」
ほんと面白い、ますますあの町での生活が楽しみになってくる。いったいどんな構造をしているんだろうと興味が尽きない町だと感心する。
「まあ、何はともあれ、ようこそオルスへ!」
シャルルはそう言ってニコっと微笑んだ。
「では、我々の新たな門出に。」
「「「乾杯!!!」」」
「さぁ~食ってくくれ。今日は今までにない位のご馳走だぞ!!」
「「「おお~~。」」」
俺は目の前のテーブルの料理を見渡す。そこにはこの町で手に入った食材をもとに作り上げた料理が並んでいる。
「おお!旨いっす!!これなんて料理っすか!!」
「それはシュウマイって料理だ、ひき肉を薄い小麦の皮で包んで焼いた。他にも中身を変えて色んな種類を用意してから食べてみて感想を聞かせてくれ。」
この世界での初めて凝った料理を作ってみたがうまく作れたようだ。ただ醤油がないのが残念だった、市場に出て、いろいろと探してみたところ大豆のようなものは見つけたので、いつか作ってみようと思う。
「この鶏肉、カリカリもちもちでエールが進みますな。」
バルダスが摘まんでいるのは、鶏肉のから揚げだ、油があるか心配だったが。獣の脂身を熱して溶かすことで作ることが出来た。匂いに癖があるが、揚げ物としてならうまく使ええるようだ。
その他にも野菜で作るサラダ、炒めの元多種多様のものを用意できたが、海産物はここでは少なく全て干物と言った保存食しかなかった。ここから海までは距離があり川魚以外はすべて加工品になっている。
いつか海に行って刺身を食いたいと思う俺は、なおのこと醤油を作ろうと決意したのだった。
「酒は、伯爵様から樽でもらってきたからまだまだあるぞ!」
「至れり尽くせりですな!!」
がはは!と笑うバルダスはジョッキ大のエールを飲み干すと豪快に笑っていた。
酒好きの彼にしてみれば、森の中での生活はあまりにも苦痛だったようだ、これでもかと次から次へとジョッキを殻にしてはお代わりを鳥に樽の方へと向かっていた。
「でも無事住むところが決まって安心したっす!これからは柔らかいベットで眠れると思うと箸が進むっすよ!」
「ああ、まったく、硬い地面での野宿もしばらくはごめんだな!」
「ああ、見張りもなく夜ずっと眠っていられる。これほどうれしいことはない!!」
ここにいる皆は、野生の生活から文明の生活なったことで心持が軽くなり、大騒ぎしては次々と皿を空にする。
「お姉ちゃん!これすごくおいしいよ!」
「ああ、この町では食べたことがない味だ、この赤いソースがたまらない。」
俺の、2つ隣りから声が聞こえてきた。視線を向けるとそこにはこの町の道中で知り合った金髪エルフの騎士シャルルとミレーユが手にした料理を食べている。
「ああ、それはケバブっていって、小麦の皮を丸く焼いて中に肉や野菜を挟んだ食べ物だよ。、、、、楽しんでいるようだな。」
「うん、今日は招待してもらってありがとね!」
「なに、ここに住まうことが出来たのもあなた達のおかげだ感謝している。やはりウラド伯爵様は来れなかったのか?」
「ああ、仕事が立て込んでいてな今日は来れなかったよ。本人は残念そうにしていたからまたこのような機会があったら誘ってほしいと言っていた。」
彼女達は、この町の騎士団所属のエルフと、この町の領主である銀髪長身のダークエルフ、ウラド伯爵に今回無事に俺達が家を持つことが出来たことを祝い宴会を開いた。
彼女達にはここまで世話になったことから招待したのだが、生憎伯爵は仕事のため出席できず代わりに彼女たちが来てくれたのだった。
「ミレーユさん、シャルルさんも今回は招待に応じて頂きありがとうございます。今日は楽しんでいってください。」
「ありがとう、エヴァちゃん!」
「あ、あの、、そのちゃん付けは、、、どうか、、。」
「ええ~、いいじゃん!!私の方が年上なんだし、その方が可愛いでしょ。」
「まあ、エルフにして見れば私たち全員年下なんですが、、。」
「そうだな、体格的にはエヴァが勝っているけどな。」
俺は、二人の一部分を見比べる。それに反応したエヴァは、胸元を隠し、シャルルはギロッと冷たい視線を向けてくる。
「確かに、エヴァ殿とシャルルを比べれば。シャルルの方が幼く見えるな。」
「ひどいよお姉ちゃん!双子なんだから体格は変わらないでしょう!!」
二人の言い争いが始まったので、そそくさとその場を離れるが、、、視線を感じ振り向くと、エヴァが赤い顔で俺をにらみつけていた。
「どうした?赤い顔して酔ったのか??」
「酔っているのはあなたです。まったくデリカシーがないんですから。」
そう言って頬を膨らませ睨みつけてくる。
「ごめんごめん。」
そう言って、笑いながら手を振ると、しょうがないと彼女はため息をついていた。
「まあ、なんにせよ、ここまでお疲れさま、エヴァ。」
「あなたの方こそ私達より大変だったではないですか。、、、本当に、ありがとうございます。私達をここまで連れて来てくれて。」
「気にしないでくれ、どうせ俺達もあのまま森の中でずっととはいかなかったから、いずれは森を出ていたと思う。俺とファナだけだ毛だったら、ここまでこれるかどうか、この町に拠点を確保できたのも、君たちと会ったおかげだよ。」
そう、あのまま森を出ても、外の事情が分からない俺達は、いろいろとここまで来るのに手間もかかっただろうそう考えればエヴァ達と共にここまでこれたのは幸運だったと思う。
「まあ、大変なのはこれからだ、ここで俺達はどう生きていくか、しっかりと考えないとな。だからこれからもよろしくなエヴァ、、、。」
「はい!こちらこそよろしくお願いします。」
俺達は持ったジョッキを互いに打ち鳴らしその中を飲み干す。周りからは仲間たちの声が響く、その様子を微笑み眺める。




