もふもふ
朝。
寝ぼけた頭で鳴らなかった時計を探すと、大量の段ボールが目に入った。
ああ、そういえばまだ段ボールを開けていないんだった…。
まずはその片付けからかな。
3時間ほど、片付けをひたすらしていたらしい。
ぺき、と腰の音を鳴らし、お昼でも食べようかと一階に降りかけて止まる。
…そうだ、下にはあの物体がいる。
行こうか、行くまいか。
悩んだ後、そっと足を踏み出した。
きっと、朝なら大丈夫…だと思う。
階段を降り切ると、なにもいなかった。
ホッとしてキッチンへ向かうと、冷蔵庫を開ける。
簡単に済ませて、片付けの続きをしようと思っていたから、サラダうどんを作った。
もぐもぐと食べていると、後ろから視線を感じた…ような気がする。
もうこの家に何かがいるのは分かっていたから怖くない、と思い込んで食器を片付けに立ち上がる。
すると、視線はどこかへ消えていった。
二階に戻り、段ボールを開けては中身をしまってから畳む。
それを続けていると、やっと最後の1つになった。
最後に入れたものを思い出しながら段ボールを開けると、視界の端に薄グレーのなにかが見えた。
…さっき出した本に埃が付いていたとかだろう、と信じて箱の中身を取り出す。
全部しまい終わり、箱を片付けようとした時。
はっきりと見てしまった。
段ボールの中でぽんぽん跳ねている謎のなにか。
猫かなにかかと思ったけれど、謎にまん丸な形をしていて。
猫ではなさそうだった。
…しかも、じーっと見ていると目が合った。
「…っ!」
妙に、キラキラとした目がこちらを見ている。
目が青っぽくてキラキラしているから、ちょっとだけ可愛く見えてしまって…慌てて頭を振る。
いやいや、猫じゃないんだから。
「……」
変わらずこちらを見つめる瞳に、何度かほだされそうになりながら辺りを見回す。
ここには本もあるしさっき畳んだ段ボールもある。
昨日よりは戦えるから、なにが起こっても大丈夫だろう。
……そう、思っていたけれど。
<キュイッ!>
「うわっ!」
…まさか、段ボールを蹴ってこちらに向かってくるなんて誰が予想できただろう。
抱えたまま、というより俺の上に乗ったままのそれはよく触ってみるとふわふわしていて。
案外怖くないのかもしれないと思い始めた。
「えーと、名前ないからもふもふって呼ぶけど、もふもふはなんでこの家に…?」
<…キュ?>
俺の質問に、よくわからないというように首?を傾げたもふもふ。
というか、このもふもふに首や足はあるんだろうか。
「…ごめん、ちょっと失礼します」
ふわふわとした体を持ち上げて、下を覗いてみる。
頭と同じく、ふわふわな毛が続いているだけで足のようなものは見えなかった。
<キュー…>
「あ、ごめんね」
持ち上げたまま考えていたからか、少し不満そうな声が聞こえて、もふもふを抱え直す。
…そういえば、足は見当たらないけれど手はあるらしい。
うらめしや、とお化けがやる形に似た、ふわふわの手だった。
……いや、これは前足…?
何はともあれ、もふもふと仲良くなれた気がした俺だった。
片付けが終わり、謎のもふもふとも仲良くなり。
そうなったらやることは1つ。
…そう、お風呂に入ること!
もふもふも汚れていたし、俺も昨日はもふもふが怖くてそのまま寝てしまったから、入ってなかった。
もしかしたらお風呂が苦手かもしれないから、一応もふもふに聞いてみた。
「もふもふってお風呂に入ったことはある?」
<…キュ…?>
「あー、えっと…あったかくて、綺麗になれるところ、かな」
<キュ…!
キューー!>
しどろもどろな俺の説明を聞いた後、理解したのかもふもふがパタパタと飛び始めた。
よほど嬉しかったのか、楽しみなのか。
着替えなどを用意しながら、もふもふの手は羽だったのかと思っていた。
もふもふと仲良くなりました。
○活動報告にて、海の日だったよ短編のようなものを載せたいと思ってます。
良かったらそちらもご覧ください。




