謎の物体
のんびり更新してます。
「ありがとうございました」
お礼と共に、さっき買ったお茶を渡していく。
おそらく1日で引っ越し作業は終わりますよ、と言われていたけれど、本当に1日で終わるとは…。
少し驚きながら、引っ越しのトラックが去って行くのを見届けた。
完全にトラックが見えなくなると、くるっと後ろを振り向く。
そこにあるのは大きな家。
誰が見ても、1人暮らし用には見えなかった。
「今日からここに住むんだよな…」
そっと1人呟いた。
…まず、何から手をつけようか。
カラリと軽い音を立てて扉を開くと、暗闇になにかが動いた気配がした。
「……ほこり、だよな」
思わずそう呟いてしまうのも無理はないと思う。
…なぜか。
ここは1人暮らしなことが決まっていて、前家主はとうの昔に引っ越しているから。
そう自問自答しながら、何か戦えるものを探しに庭へ足を向けた。
草刈りの鎌だとか、バケツだとか何かがあるかもしれない。
…まあ、予想通りそんな儚い期待はすぐに消えた。
庭は雑草やらよくわからない花やらで荒れており、何かあったとしても見えなかったのである。
前に住んでいたのはおばあちゃんらしいから、花でも植えて放置されたんだろう…。
そこは確かにわかるけれど。
今は、家にいる何かに対抗するものを見つけたい。
もういっそ、なにも見つからないなら素手で勝負しようか。
妙な自信が湧いてきて、玄関に戻った。
きっと、今なら大丈夫。
出所のわからない自信はまだあった。
そろ、と足を踏み出して周りを確認する。
そろそろ夕方になるから、電気をつけてもいいかもしれないけれど、なにかを見つけるまでは安心してスイッチも探せなかった。
…一階か、二階か。
さっきの影のようなものを見た限り、そんなに大きくなかった。
きっと、どこからでも飛び出してくるだろう。
緊張しながら辺りを見回すこと、15分ほど。
そろそろ奥に進んでも大丈夫だろうか。
だんだん暗くなってきたことで、さっきまでの自信はどこかに消えてしまったらしい。
もしなにか出てきて怪我とかしたらどうしよう、なんて不安に変わっていた。
「家の中だし、何か探そう」
そう言ったはいいものの、なかなか足が進まない。
…気分は、無理やり入らされたお化け屋敷のようだった。
と、そこまで考えて、おばけだったらどうしようという想像をしてしまった。
新しい家に越してきたばかりなのに、おばけと住むなんて。
……このまま夜になったとしても追い出さなければ。
思い切り頰を叩き、気合いを入れて奥へ進んだ。
こんなにずっと歩いたり考えたりしていたのに、さっきの影は一向に姿を見せなかった。
…もしかしたら、勘違いかもしれない。
こんなに怖がりながら進まなくても、もしかしたらなんでもなかったじゃ…!
なにかを、踏んだ気がする。
「…気のせいだと、思いたい。
というか思わせて。
なにもいないはずでしょ!」
怖くなったので声を大きくしながら足を退けてみた。
いつのまにか差し込んでいた月明かりに照らされたそれは、黒っぽい丸い物体だった。
「いや、でも踏んだ時柔らかかった気がしたんだけど……」
気になったので、靴の先でちょっとだけつついてみる。
....。
タオルに近かった。
この、謎の物体が。
タオルに。
サッと血の気が引き、怖くなった俺は慌てて二階へ逃げた。
「これは夢、絶対夢。
そうじゃなかったら俺は……。
いや、もう寝よう!おやすみなさい!!」
目を閉じて、強引に眠りに落ちていった。
深夜、俺が寝た後のこと。
俺が踏みつけた物体は、しばらく月明かりに照らされていたのちに起き上がった。
そして、キュイッと一言。
少し心配そうに二階の方を見た後、暗闇へ駆けて行った。
もふもふと主人公の初対面。




