佐藤さんのお家訪問 1
土曜日。
もふもふたちと出かけようか悩んだけれど、明日佐藤さんが来るから、片付けや買い出しを済ませておくことにした。
もうお留守番が得意になったもふもふたちを家に残し、近所のスーパーへ買い物に行く。
明日、佐藤さんは何を教えてくれるのだろう。
連絡先を交換するという発想がなかったから聞けないけど、材料はたくさんあった方が良いと思ってたくさん買っておいた。
家に帰る途中、公園の中を覗くと幼い女の子がブランコに1人で座っていた。
少し辺りを見回して、誰もいなさそうなことを知り、公園に寄っていくことにした。
他に人がいたなら放っておいても大丈夫かもしれないけど、1人と知ると不安になってくる。
急に話しかけても怖いかもしれないから、とりあえずベンチに荷物を置いて少女の様子を見る。
親が迎えに来たり、友達が来たらそっと帰ろう。
…しかし、そこから30分ほど経っても人が来る気配はなかった。
これ以上は放っておけないので、そっと彼女のそばに行く。
「……」
俺が近くに行っても気づいていないのか、下を向いたままの少女。
少し、肩を叩いてみる。
…反応がない。
声をかけようとしゃがみこむと、ぱちりと少女の目が開いた。
「……?」
そのあと、不思議そうに首を傾げた姿がもふもふたちに似ていて。
可愛いな、と少し笑った。
「名前を聞いてもいいかな?」
優しく聞くと、少女は小さな声で「みゆ、」と答えた。
「みゆちゃん、お母さんとかは一緒じゃないの?」
「!お母さん、きらい」
お母さんという単語に反応して、ぷいっと顔を背ける。
頰も膨らんでいて、どうやら喧嘩をしたらしいことがわかった。
「じゃあ、他に家族とかはいる?
お姉ちゃんとか、弟とか」
「あゆおねえちゃん」
「あゆお姉ちゃん…?」
どこかで聞いたような名前だった。
誰だったっけ、と思い出していると、公園の入り口あたりから走ってくる足音が聞こえた。
「未由!」
声に振り向くと、そこにいたのは明日会う約束をした佐藤さんだった。
お姉ちゃんの姿を見て安心したのか、みゆちゃん…が走っていく。
「おねぇちゃん〜……」
「お母さんと喧嘩したら私のところに来てねって行ったのに、また公園に来て….」
と、佐藤さんがみゆちゃんを怒りながら顔を上げると、俺と目が合った。
「さ、佐渡くん…?」
「おはよう、佐藤さん」
軽く手を上げてそう言うと、佐藤さんは目を見開いたまま瞬きを2回。
それからみゆちゃんに視線を戻して問う。
「み、未由、佐渡くんとお話ししてたの…?」
「さわたりくん、ってこのお兄ちゃん?」
「うん、そうだよ。
お姉ちゃん、見つかって良かったね」
さらっと会話に入り込むと、みゆちゃんの顔がこちらを向く。
「さわたりくん、お話ししてくれてありがとう…ございます?」
ちらっとお姉ちゃん…佐藤さんを見ながら言ったみゆちゃんは、花のような笑顔を見せてくれた。
「よし、えらいえらい。
佐渡くん、ごめんね。
妹の相手をしてくれてありがとう」
「大丈夫だよ、これくらい。
…あ、それより、みゆちゃんお腹すいてない?」
「すいた!」
「こら、未由…!」
「だよね。
…ねえ、佐藤さん。
これからうちに来ない?」
「…え、でも…」
「ここで会ったのも何かの縁かもしれないし、みゆちゃんに美味しいものを食べさせてあげたくない?」
そこまで言うと、佐藤さんは困ったように笑って、「じゃあ…お邪魔します」と言った。
予想外の展開になってきました。
佐藤さんの名前は、佐藤 阿由です。
妹さんは、佐藤 未由。
みゆちゃんがいると主人公の名前も出るんじゃないかなーと期待してます。




