引っ越しの日
プロローグのようなものなのでものすごく短いです。
…これでいいかな。
部屋にあった、荷物の最後の1つを段ボールに詰め込んで。
時間を確認するついでに外を見た。
桜もとうに散った外は、暑さを感じ始める気温になっていた。
荷物はまとまったし、引っ越しの業者さんが来るまでまだ時間もある。
少しだけ、外を歩こうと思いついた。
ガチャ、と扉が開き、外の風が横を抜けた。
暑いような、少しだけ涼しいような。
なんとも言えない風に、外に出るのを諦めたくなった。
けれど、ああして家にいただけでは感じられなかったものがある。
それを目当てに、一歩足を踏み出した。
歩き始めると、部屋の中から想像していた暑さはあまりなく、かといって涼しいわけでもないが歩くには丁度いい天気だった。
…この街を離れるのだから、少しでも懐かしんでから行きたかった。
家のすぐ近くにあった公園で遊んだこと。
塀の上で伸びをする猫を見つけて撫でまくったこと。
あとは、近所に住んでいたお兄さんの猫を見に、家に通ったこともあったっけ。
こうして思い出に浸っていると、なんでもない通学路なんかも懐かしさでいっぱいになった。
ブー……
唐突に鳴った携帯に驚きながら通話ボタンを押すと、相手は引っ越し業者の人で。
すぐ行きます、と言って電話を切った。
これで、この街に来ることもなくなっちゃうのかな。
少しさみしい気持ちになりながら、家に向かった。
…家に着くと、引っ越し業者の人はホッとしたように息をついた。
「探してたんですよ、佐渡さん」
「すみません、少し、懐かしんでいたら遅くなってしまって」
そんな会話をした後、家にある段ボール箱を玄関前に集める。
大きいものはなんとかしてくれると言っていたからあとはこれだけ。
思い出の詰まった段ボールを、2つ、3つと抱えて家を出た。
……ここからがきっと、俺の新しい生活の始まりだったんだと思う。
もふもふは、これから!




