地原家にご招待
誤字脱字報告してくれる方ありがとうございます。一気に書いてしまうタチなので非常に助かってます。
この場を借りてお礼を言わせて頂きます。
あと色々調べてたら大体一話辺り二千~三千字くらいが読むのにちょうど良いって見たのでそれくらいにしてみました。
最初は張り切り過ぎて最低五千文字!! ってやってたので、長いと思ってた方すいません。
あ、でも今回区切りが良かったので一話更新ですが、話の区切りとしてやっぱり五千文字くらい書いちゃった場合には、その日二回に分けて投稿するつもりです。(長文すいません)
なんだかんだで学園生活一週目は光と亜咲に振り回される形で終える事となった。
大輝、亜咲と三人で帰宅した翌日、早速休み時間に光が襲撃してきて「仲間外れにされたぁー!!」と騒ぎ始めた。お前はヒナと一緒に帰ってたんじゃないのかよ。
「それなら五人で帰れば良かっただけじゃない!!」
「お前はともかく相手が困るだろうが」
正直早くヒナに会いたい気持ちはあるのだが、今まで心配をかけた事が申し訳なくて、どう謝ろう、など考えが纏まらず、なかなか踏ん切りがつかずにいた。
今ではたった一人の肉親なのだから、本来なら真っ先に会うべきだとは分かっているんだが……
「怒ってるだろうなぁ……」
「怒ってるよ!!」
「お前じゃない!!」
光と亜咲に話してしまっても良いんだが、せっかく友人になったんだし、俺というフィルター抜きで付き合って欲しい。
光と亜咲には散々世話になったから事情を話せばヒナは気を遣ってしまうだろうし、逆にヒナが俺の妹と知ったら光と亜咲は俺の妹だからと仲良くしようとするだろう。
それはそれでもちろんありがたい事ではあるが、まずは自然に友達として親交を深めて貰ってから、各々の関係を話したいと思っていた。
俺のわがままでしかなく、当人達にとっては余計なお世話かもしれないが。
そんなこんなで毎度毎度休み時間になる度に光か亜咲、あるいは両方が教室に押しかけて来るものだから、この一週間、俺の席に人が寄り付く気配はなかった。
そもそも隣に大輝という超優良物件が転がっているのだから当然と言えば当然かもしれない。
ナツはと言えば、時折チラチラとこちらの様子を伺っている姿が見て取れたが、例の天野や女子生徒達に話しかけられてしまい、ついぞ話しかけて来る事はなかった。
正直な話、お互い完全にタイミングを逃してしまった感がある。
では何故俺から話しかけないのだろうか。と思う事がある。
自分でも不思議なのだが、いざナツに声をかけようと一度は決心するのだが、急に不安に襲われてしまうのだ。
もし話しかけてそっけない態度を取られてしまったら……
彼氏の惚気を聞かされてしまったら……とか。
ただ幼馴染の女の子に話しかけるだけ、という事にすら臆病になってしまっている自分がいた。
思えばあの時まで一緒に居ることが当たり前だったし、俺自身ずっと彼女に恋をしていた自覚はある。
会えなかった間も、もう一度彼女に会うんだと、それを目標にしたからこそ生き残る事が出来たのだと思っている。
その想いが消える事はなかったが、この一年半でかけがえのない仲間も出来た。
この眼を使う事を決めた時にはもう、「こいつらと一緒に帰るんだ」という気持ちが大半を占めていたと思う。
それは果たして、彼女に対する気持ちが小さくなったのか、それとも仲間達の絆が大きくなり過ぎたのかは分からない。どちらの方が大事かと問われれば、きっと俺は答えに窮する事だろう。
そうやってズルズルと先延ばしにしてしまうのは良くないと頭では分かってはいるものの、まるで迷路に入ってしまったかのように同じ考えがグルグルとループしてしまう。
いったん週末の休みで考えを整理しようと思い、大輝に声をかけた。
「なあ大輝、もし日曜暇だったらうちに遊びに来ないか?」
「お、良いのか? 予定もなかったし迷惑じゃないなら行かせてもらうぞ」
「ちょっと相談したい事もあるし、来てくれるとありがたい」
「珍しいな……いつもだったら相談に乗る側なのに」
「ちょっとな。俺にも悩む事の一つや二つくらいはあるって事だ」
幸い俺には信頼のおける仲間がいる。一人で解決出来ないのなら二人で、二人でダメなら三人で、三人でダメなら四人で、いつもそうやって来たじゃないかと自分に言い聞かせる。
「じゃあ昼前くらいに行くから飯でも食いに行くか」
「そうするか。なんなら俺が作ってやってもいいぞ」
「いや、野菜炒めが出てきそうだからいい」
何故バレたし。多分亜咲だな。あの裏切者め。
――というわけで、今日は大輝が遊びに来る予定だ。
元々俺一人で暮らすには広すぎる家だし、友達が数人で遊びに来ても全く問題はない。問題があるとすれば、未だに学園内で友達がいない事か……
世知辛い。
――ピーンポーン。
どうやら大輝が来たようだ。
玄関に向かい、鍵を開けてドアを開く。
「おういらっしゃい。遠慮せず入っ……」
「来ちゃったっ」
「おぉ……ええ……?」
――バタンッ、ガチャッ。
一瞬目の前の光景が信じられなかった俺は謎の言葉を発しながらドアをそっと閉じ、鍵を閉めた。
これは夢、悪い夢だ。よし寝よう。寝たら夢から覚めるかもしれない。
――ピンポーン、ピポピポピポピーンポーン。
「こらー、開けなさーい」
インターホンを連打しながら開けろと迫る女性の声。
「開けろー!! 開けないとドアをぶち破るぞー!!」
先ほどとは別の声が物騒な事を言う。
アイツなら本当にドアを破壊しかねないと思った俺は、現実逃避を諦め、再度ドアを開いた。
「ふふん、観念したようね。さ、みんな入って入って」
「よう小吾、相変わらずシケた面してんな」
誰のせいだと思ってるんだ誰の……お前のせいじゃないけどさ。
「大輝よう……なんでこうなったんさ……」
「俺はそこで光に声をかけられてな。どこに行くのか聞いたら小吾の家に行くって言うから同行させて貰おうと」
ああ、やっぱり偶然だったのね。
「神は死んだ」
「殺した犯人ならそこにいるぞ。まあこんなところで立ち話もなんだし、話なら後にしないか?」
「お邪魔しまーす!!」
「お前は少しくらい遠慮しろ!!」
別に光が悪いわけじゃないけど!! なんか納得いかん!!
「お邪魔します」
「亜咲ぃ……お前もかよ……」
「えっ……と、お邪魔します。じゃないよね、ただいま」
「っ!!」
バタバタとしたノリで頭が追い付いていなかったらしい。そういえばそうだったよな。そりゃあいるはずだよ。
今日家に招待するって聞いてたもんな……確かにどこの家とは言ってなかったけどさ……もうちょっとこう、心の準備ってもんが……
「ああ……おかえり。それと……ただいま」
「うん……っ、おかえり!!」
こちらを見上げた顔は記憶よりもずっと近い。そうか、随分背、伸びたんだな……
「まったく、あの人にも困ったもんだ」
「あはは……っ」
苦笑するその声には僅かに嗚咽が混じっており。
「大きくなったな、ヒナ」
「ひっく……お兄ちゃん、お兄ちゃああん!!」
泣き出した妹をあやすように頭を撫で、俺達は並んで我が家へと入るのだった。
ようやく三万五千文字くらいかな? よく昔の自分は三十万字とか書いてたなぁと思います。年齢による衰えを感じました。以上。
あとがきは長くない方が良いってばっちゃが言ってた。