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亜咲のファーストキス

あーちゃんと小吾くんの掛け合い書くのが楽しくて、ついつい長引かせてしまいました。

「ふふ、気になりますか?」


 俺の反応を楽しむように、亜咲が笑顔で尋ねてくる。


「まあそりゃ、な。いや、言いたくないとか、聞かない方が良いって言うなら、無理してまで聞こうとは思ってないんだ」


 つい気になって質問してしまったが、亜咲が言いたくない事かもしれない、という事すら失念してしまっていた。

 あるいはそれを聞いたところで、俺はどうしたいのか、とも思ってしまう。後悔先に立たずとはこの事だろう。


 もっとも、亜咲の反応を見る限りでは言いたくない、という事はなさそうに感じる。

 じゃなかったら少なくとも笑顔で気になるか、なんて聞いてくる事はないだろう。


「言いたくないという事はありませんが……小兄様は後悔しませんか?」

「それは聞いてみないと分からない」

「そうですか。では話しますが……決して怒ったり、幻滅したりはしないと約束してください」

「分かった。約束する」


 相手の過去を詮索しようというのだから、それくらいは当然だろう。

 ましてや自分より年下の女の子に対して、ファーストキスは誰としたのか、なんて聞いた方が幻滅されたっておかしくはない。

 それに俺の方から聞いたのだから、それに対して怒るなんてもってのほかだと思い、俺は亜咲に怒ったりしないと約束した。


「私のファーストキスの相手は——」


 もしかしたら、あの天野に無理矢理迫られて……なんて可能性も考えてしまい、俺は思わず唾をのんだ。


「——小兄様です」

「……いや、さっきのは初めてじゃないって言ってなかったか?」


 やはり寸前になって、言いたくなくなったのだろうか。

 だとしたら、それはそれで仕方がないか、と自分以外の名前が出なかった事に安堵すると同時に、答えて貰えなかった事に対して残念な気持ちが湧きあがってくる。


「はい、今日が初めてではないですよ?」

「だったらおかしくないか? 俺は初めてだっ……たし……?」


 亜咲に疑問をぶつけながらも、不意に一つの可能性に思い至ってしまった。

 もしかしてそういう事(・・・・・)なのか?


「えーとだな。ちょっと確認したいんだが」

「なんでしょうか? まあ何を確認したいのかは、概ね察してはいますが」


 亜咲は俺の顔を見ながら笑顔を浮かべ——というよりもニヤニヤしながら俺の言葉を待っているようだった。

 その反応を見て、俺は自分の予想が外れていないのだろうと、半ば確信していた。


「亜咲のファーストキスの相手は俺だと?」

「そうですよ。さっき言った通り、私の初めては小兄様に捧げました」


 その言い方だと別の意味にも捉えられるんだが……まあいい。確認を続けよう。


「で、それは今日の事じゃないと」

「はい、私の初体験は今日じゃありません」


 だからその言い方だと違う意味だと思うだろ!? っていうか……まさかそっち(・・・)もって事はない、よな?


「亜咲さん?」

「はい、なんでしょうか小兄様」

「俺が忘れているだけだとしたら本当に申し訳ないんだが、今日以前に俺と亜咲がその、キスをしたのはいつの話だ?」

「今日以前に、となると何度くらい前(・・・・・・)まで遡れば良いでしょうか?」

「おいちょっと待て」


 え、なにどういう事!?


「今の言い方だと、今日のは二回目って訳じゃ……」

「ないですね。少なくとも数十回は」

「ちょっと何言ってるか分からない」


 数十回!? そんな記憶全くないんですけど!!


「なあ……俺全くそんな覚えがないんだけど?」

「そうでしょうね。小兄様は一度寝てしまうと、なかなか起きませんでしたから」

「お前寝込み襲いやがったなコラ」


 まさかの夜這いだった。その可能性は考えないではなかったが、本当にヤられてるとは思わないだろ普通……


「先ほど怒らないと約束しましたよね?」

「それは流石に汚い」


 つまり、少なからず俺が怒る事は予想していたわけだ。


「隠していた事は謝罪します。けれど安心しましたよね?」

「う……まあ、うん」


 寝込みを襲われていたという事に、多少怒りを覚えるところもあったのは事実だ。

 だがそれ以上に、亜咲が他の人とキスをしていたわけではないとも分かり、怒り以上に安堵した事もまた事実だった。

 いつの間にか、俺は亜咲に対して——いや、彼女達に対しての独占欲なんてものを抱いていたらしい。これじゃハーレムクソ野郎なんて言われても、仕方がないのかもしれない。


「だったら怒ったりはしませんよね?」

「ああ、怒らない」


 自分の意識がない内に、というのは少し釈然としないものはあったが、そもそも乙女でもあるまいし、俺自身のファーストキスというものにこだわりがあるわけではない。だから実際のところ、怒る必要は——


「光さんと日替わりで色々(・・)試しましたが、それも怒りませんよね?」

「おい」

「あ、でも安心してください。夏姉様は小学生の頃から——」

「おい!?」


 何をどう安心して良いのかも分からないし、光と日替わりで色々試したってどういう事? 逆に怖くてこれ以上聞きたくないんだが!?


「ですが小兄様。一つだけ謝らなくてはならない事があります」

「な、なんだよ急に……っていうかもうお腹いっぱいんだけど」


 というか一つだけ謝らなきゃいけないって、俺の寝込み襲った事については謝る気が無いって事ね。

 今更謝られても反応に困るけども……


「流石に寝ている間に、というのは気が引けたので、性交までは至りませんでし——」

「お前ちょっと黙れよもう!!」


 見た目(・・・)は貞淑な亜咲の口から、子作りだの性交だのといった、あまりにもド直球な言葉が発せられると思わずドキリとしてしまう。悪い意味で。

 こちとら健全な男子高校生なんだから、ちょっと勘弁して欲しい。


 ——というかコイツ俺より年下だったよ畜生め!!


このオチはみなさん予想通りかと思いますが、異論は認めないよ!!


あと小吾くんはマジで爆ぜれば良いと思うよ!!

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