エピソード1 第五話 「ギルド”クライオブビクトリー”」
「怪我はないかい?」
まるで何事もなかったかのように体についたホコリを払う仕草をすると
唖然と地面にへたれこむストレアに笑みをこぼす
「大丈夫?」
その言葉で我に返ると、虚空を眺めていた目に色が戻り
イラを見る。
「あ、ありがとう」
抜けた腰をなんとか動かそうと立ち上がり倒れそうになる
「バサ」
イラがすかさず肩を支えてくれたのだ
「!」
顔をいきなり赤らめると、肩を掴んでいたイラの手を解き
距離を取る
予想だにしない行動に驚き、それを悟られないように180度ターンし
咳払いする
「わ、私は大丈夫よ!それよりもあなたの方はどうなのよ
かなり激戦だったようだけど」
「心配ないよ。攻撃は受けてない。にしてもナイル以外はとんだ拍子抜けだったな・・・」
ストレアの心配を流し、それよりも相手の脆弱さにとても
失望しきっていた
「一応、都市では強力な一殺しギルドを選んだつもりだったんだけど」
その言葉にストレアが驚いた
「知ってたの?どうやって?それになんでそんなギルドのパーティーに入ったの?
そんなことをすればあなたも犯罪者扱いされるのよ?」
「質問が多いよ。あいつらの心情はスキル”心眼”で分かりきっていた。それでも参加したのは
単純に戦うためだよ。好奇心っていうのかな」
ストレアは呆気に取られた。この男は好奇心で犯罪者扱いされるのを承知で、
都市最強クラスの犯罪者ギルドに戦いを挑んだのだ
肩で大きくため息をつくとイラに尋ねた
「それでこれからどうするの?」
「うーん。一旦ダンジョンから出ようと思う」
その言葉を聞くとパッと目を見開きイラの手を掴み引っ張って歩き始める
え?と何をしているのか理解に困っているイラ
それに気づくとストレアは
「お礼をしたいし一度私達のギルドの人とあって欲しい」
と言われた。
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「そうか。ゴルドたちは殺されたのですか」
ストレアの説明を受け戦友の死を知るとガークと呼ばれている白いロングコートを着ている
若い男は残念な顔を浮かべ、涙すら浮かべていた。
下を黙って見つめ、思い出したようにストレアに向き直ると
「それで彼らの、骸は!?まさかダンジョンに置き去りなんてことは・・・・」
声を荒げたガークを静止するかのように、手をかざし落ち着かせるストレア
「大丈夫。連れてきた部下に回収させたわ。」
その言葉を聞き、安堵の表情を浮かべると
イラの方を向きそちらは?と尋ねる
「彼は私を助けてくれたの。デイブの、、、赤獅子を壊滅させてくれたの」
「な、あの赤獅子を!?”閃光の刃”、ナイルを殺したのですか!?
ストレアはイラに向き直ると、自分から言うようにと
合図される。それを理解したイラは一歩前に出ると口を開いた
「間違いなく殺しました。確実に脳を潰しましたし、再生能力を持っている線も
ありません。彼は同行していたオルドという男に治癒を求めていたので」
その言葉を聞き更に安堵の表情を浮かべ
改まると、恩人のイラの手を握り感謝の言葉を述べた。
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何度も感謝の意を述べられいい加減疲れる
「ならなんでも一つだけ願いを聞いてほしい」
「ええ!もちろんです!」
どんな願いも聞き入れるつもりでそう言う
イラの願いはただ一つだった
「帰らせてくれ」
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「結局、だめなのかよ」
もはや自分が何してるのかすら理解できず、ただ酒が入った酒坏を左手にだだっ広い
建物の――ギルド”クライオブビクトリー”の本部にある晩餐の間――に突っ立ている。
赤獅子はそこまで他ギルドに因果を持たれていたのかと初めて理解する
そんなイラのもとにやたらめったら従者をまとわりつける老人が近づいてくる
「あの爺さん、、、絶対に関係を築くために近づいてくるだろうな」
そんなことをつぶやき、老人に気づかないふりをして逃げる
「君が赤獅子の殲滅に貢献してくれた青年かな?」
逃すまいと、声を張り上げて呼び止める
「はい、そうです」
「娘を窮地から救ってくれたことに対しての褒美をやろう」
「それにあの”閃光の刃”をたったひとりで討伐するとは見事だ」
ピキ
持っていた鉄製の酒坏にヒビが入る。
別に褒めてほしくてやったわけじゃないが、そのなんとも
”褒めてやらんこともない”みたいな態度に思わず力む
「娘をあのダンジョンに、街に、戦士長ガークを連れずに行かせたのは間違いじゃった」
懺悔をしに来たのか、礼をしたいのかはっきりしろ!と思わず
突っ込みたくなる。
「結論を言うとな」
「お主の実力を見たいから、明後日開かれるトーナメンに出てほしいのだ」
そう来たか!ジジィめ。
「お断りさせていただきます。何分、俺の掟上誰かに命令されてという戦闘は絶対にありえません
第一ギルド内のトーナメントに参加するのは正式にギルドのメンバーに認定された者のみのはず。
俺が部外者である俺が参加するなど・・・・」
「心配無用だ。お主は今日をもって”クライオブビクトリー”の正式メンバーじゃ
トーナメント後も”忠義”に励むのじゃぞ」
ぞろぞろと従者を連れ去っていく。ギルド長ドワーフ
バキン!
紙のようにクシャクシャにされた杯を片手に黒煙のようなオーラを撒き散らしながら心のなかで叫ぶ
おのれクソジジぃ!おのれ糞ギルドめ!絶対にぶっ殺す!
強さ。その副産物である恐怖は人を支配する
あるものは英雄視しあるものは悪魔だと言う
人々は知ったこの世界には英雄にも悪魔にもなれるものが存在していると
次回 ジジぃ死す
嘘です。