第7話 鬱モード
「ファッ!? みかんソフト期待の新人プログラマーの東和麻って伽耶のことだったの!?」
有須さんが持ってきた恋千☆万花のスタッフロールに名を連ねる東和麻という人物。
月刊みかんソフトと呼ばれる雑誌に期待の新人プログラマーとして紹介されていた。
それがまさか伽耶のことだったとは……
「伽耶ぁ、お前いつの間にプログラミングなんて覚えたんだよ」
俺も高校生の時は、ゲーム開発のマネジメントよりもゲームのプログラミングをやりたいと考えていた。
だが、C言語と呼ばれるプログラミング言語に道を阻まれ仕方なくゲーム開発のマネジメントの仕事をすることを決意したのだ。
「プログラミングなんてC言語を覚えておけば簡単だよ信兄」
「いや、それを覚えるのが大変なんじゃん」
「そんなことないよ〜。僕、1週間くらいでC言語覚えられたもん」
「えっ、嘘でしょ? 嘘って言ってよ」
俺が高校生の時、C言語解説本の序章の部分を覚えるだけで1ヶ月はかかった。
流石に1週間は無理だろ。
「いやいや本当だよー。去年の春くらいにプログラミングの勉強を始めて、今だとC++とかJavaとかも使えるよ」
「マジかよ!?」
複数のプログラミング言語をマスターしているだと!?
伽耶は俺ができなかったことをいとも簡単に成し遂げてやがる……!
それに比べて俺は……俺は……
「へへーん! 少しは見直した? って信兄!?」
「もう無理ぃ、仕事できる気しなぃ」
自信を喪失した俺は、バタンと倒れこみ床に顔面を突っ伏した。
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しまった、地雷を踏んじゃった!
僕がそう思ったとき、すでに信兄は床に倒れ込んでいた。
「あ、秋月さん!? どこか具合でま悪くなってしまいましたか!?」
倒れた信兄を見て、よざ姉が慌てふためく。
まあ、始めてこのモードの信兄を見るのだ、驚くのも当然だろう。
ここは僕がちゃんと説明してあげないといけないな。
「よざ姉、今信兄は鬱モードに入ってるの」
「う、鬱モード?」
「うん、信兄が自分は駄目人間だって思い込むと発動するモードなんだけど、このモードになった信兄はこのまま何日も動かなくなる」
「な、何日も動かなくなるの!? そ、それは困るよ! これから他の会社の人たちも来て、ゲーム開発を始めるのに!」
そう、このまま何日も床で突っ伏されたら正直困る。
さっさと立ち直ってもらわなければ。
仕方ない、いつものやつをやるしかないか。
「安心してよざ姉。対処法はあるから」
僕はよざ姉にそう言ったあと、信兄の元に近づく。
そして――