第4話 天才シナリオライター
「それで、なんで信兄が僕たちの仕事場にいるの?」
場の騒動が落ち着いた後、伽耶からこんな質問をされた。
俺はその質問に質問で返す。
「伽耶たちこそなんでこの場所に? この場所は俺の会社と他会社の人たちが集まって住むシェアハウスなんだけど?」
そう、この場所はゲーム開発合同プロジェクトのメンバーが住むことになるシェアハウス。
伽耶たちがこの場所にいるのはおかしい。
一体どうして……?
ま、まさか不法侵入!?
しばらく会わないうちに伽耶が不良になってしまったのか!?
昔はあんなに優しくてお淑やかな娘だったのに!
「ああ、そういうことでしたか」
俺が伽耶たちがこの場にいる理由を考えている中、よざさんだけ何かわかったような声をあげた。
「えーと、よざさん……でいいのかな?」
「すみません、ちゃんとした自己紹介がまだでしたね。私の名前は有須夜桜、シナリオライターとしてお仕事させていただいております」
「シナリオライター有須夜桜……有須夜桜!? あ、あなたが天才シナリオライターの有須夜桜さん!?」
天才シナリオライター有須夜桜。
ゲームにラノベ、オリジナルアニメーションまで様々なシナリオを執筆している。
ツエッターのつぶやきやアニメーシュの取材などを見ていると、有須夜桜は男だと思っていたが……まさか、女の娘だったとは……
「あれ、私のことを知っているのですか?」
「そ、それはもちろん! 今読んでるエンドレスラヴ、めちゃくちゃ面白いです!」
「ありがとうございます! エンドレスラヴは私の自信作なんです!」
ガシッ!
つい、俺と有須さんはお互いに手を握り合ってしまった。
「ご、ごめんなさい! 私の作品を読んでくれている人がいたのが嬉しくてつい……!」
「い、いや、俺の方こそすみません!」
今度は同時に謝罪をしあう。
「つ、次は俺の自己紹介の番ですね! 俺の名前は秋津信也です。ゲーム会社ファルコミで働いてます」
「ファルコミですか! 私、ファルコミの奇跡シリーズが大好きなんです!」
おおー!
有須さんも奇跡シリーズが好きなのか!
「有須さんも奇跡シリーズが好きなんですね! 俺も奇跡シリーズとかエースシリーズとかが好きでファルコミに入社したんです!」
ガシッ!
またも有須さんと手を握り合ってしまう。
「す、すみません! わ、私また……」
「お、俺の方こそすみません!」
またも同時に謝罪をしあってしまう。
「もう、信兄もよざ姉も何をやってるの……」
呆れてしまっま伽耶の声が部屋に響いた。
「す、すまん伽耶。話を戻すけど、伽耶と有須さんはなんでこの場所に?」
俺は冷静になり、話を元に戻す。
「その話ですが……ここは私たちの会社、みかんソフトの作業場なんです」
「みかんソフト? それって……」
社長の渡してくれた資料に名前が書いてあったぞ。
まさかーー
「秋津さんのファルコミさんと私たちのみかんソフトがゲーム開発合同プロジェクトを行うみたいですね」
「……マジかよ」
俺はつい頭を抱えてしまった。