第3話 俺と従兄妹と裸の少女
「きゃあぁぁぁっ!! へ、変態っ!!」
鼓膜をぶち破りそうな音量で少女は叫ぶ。
これはマズイ!
この状況を誰かに見られでもしたら務所行き確実だ!
なんとかしなければ……!
「ち、違う! 俺は変態なんかじゃない!!」
「それじゃあ変質者ですか!? だ、誰か助け……ムグ!?」
「ご、ごめん!」
こんな状況で助けを呼ばれたら困ると考えた俺は、声が出せないように少女の口を手で塞ぎ込んでしまった。
「ムグッ! ムグゴゴッ!」
少女の口を塞いだことによって大きな声は出なくなったが、代わりに蹴りや拳が飛んできた。
その可憐さからは考えられないような蹴りと拳は、俺の躰を痛めつけてくる。
「ちょ痛い痛い! マジで落ち着いて!」
俺は自然に手の力を強めてしまった。
そして――
「ムミッ!? ムギュゥ……」
少女の躰から力が抜け、床に倒れこんでしまった。
「マ、マジかよ!? だ、大丈夫か!?」
なるべく少女の躰を見ないようにしながら呼吸の確認を行う。
女に縁のない男から見たら眼福光景かもしれなが、俺にはそんなものを感じる余裕など無かった。
「普通に呼吸はできているみたいだな……」
ちゃんと呼吸はできている。
どうやら気絶しただけのようだ。
とりあえず俺は、自分の手荷物から大きめのタオルを取出し、少女に被せてあげた。
「それにしてもどうするよこの状況……」
部屋の中にはタオルを被せられた裸の少女と見知らぬ男が一人。
警察が見たらレ〇プ現場と見間違えられてもおかしくないだろう。
「誰か来ないうちに逃げたほうがいいか」
打開策を見いだせない俺は現実逃避、もとい逃亡を計らうとした。
だが――
カチッ
「よざ姉ー、なんか悲鳴みたいの聞こえたけどだいじょ……」
カードキーによって部屋のロックが解除されるとともに紅眼銀髪ショートヘアのロリ娘が中に入ってきた。
「こここ、これは違うんだ!! 何かの間違えで……!!」
少女に対して必死の言い訳をしようとしたが……どうやらその必要はなかったようだ。
「あれ? もしかして信兄?」
「えっ……もしかして伽耶か?」
紅眼銀髪ロリの正体は、俺の従兄妹の秋津伽耶だった。
正直、今の状況を理解できず思考回路がショートしそうになっている。
どうして自分の部屋に裸の女の娘が?
どうしてこの場所に従兄妹の伽耶が?
「もう、訳がわからない……」
ドサッ
俺は床に突っ伏してしまった。
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「ん……?」
俺は一体何をしていたんだろう?
「あっ、目が覚めたかな?」
視界が何かに覆われている。
これは濡れタオルだろうか?
それになんだろう、頭の下にあるこの柔らかい感触は?
ま、まさか……
「こ、これは膝枕なのか!?」
「うわっ!? どうしたのさ信兄!?」
俺は濡れタオルを右手で取っ払い、上半身を起こす。
「な、なんで伽耶が膝枕なんてって、痛ててて!」
「こら、無理しちゃダメだよ信兄。軽い熱中症になってたんだから」
伽耶に頭を押さえられ、無理やり膝枕へと戻される。
ま、まあ、膝枕をされるのは嫌じゃないが。
そんなふざけたことを考えていると――
「あ、あの伽耶ちゃん、その人本当に変質者じゃないの?」
服を着た少女が部屋の外から現れた。
「うん、一応この人は変質者じゃないよ。よざ姉も安心して大丈夫だよ」
「一応ってなんだよ! 俺は断じて変質者なんかじゃありません!」
この後、俺は伽耶の助けもあり、よざ姉と呼ばれる少女に変質者でないということを信じてもらえた。
何回かDOGEZAはしたが。