第2話 新生活の始まり
「うわぁ、デケェ家だな」
数日前に他社の他会社とのゲーム開発合同プロジェクトのPMを務めることとなった俺は、これから住むことになるシェアハウスにやって来ていた。
シェアハウスはかなり大きめな一軒家……というか小さな豪邸で、今年にできたばかりの新築らしい。
ちなみに、プールと露天風呂が付いているという謎仕様。
一体どうなってるの?
まあ、豪華なのは良いことだけど。
「これから7ヶ月、ここで生活するのか」
社長から渡された資料によると、開発するのは携帯ゲーム機、PC、スマホを使用してできるオンラインゲーム。
ゲーム開発合同プロジェクトでの成果物の納期期限は来年の3月31日らしい。
つまり、今から約7ヶ月の間にゲームを開発しなければならないことになる。
「はぁ、とんでもないハードスケジュールになりそうだ」
実は、7ヶ月でゲームを開発するということはかなり過酷なことだ。
ストーリー構成、ゲームシステム構成など、見通しが立っていないことが多すぎる。
正直、メチャクチャ不安だ。
だが――
「一度やると決めたことだ、簡単には諦められないな」
そう、PMはどんなにハードな仕事でも投げ出すことはできない。
PMが仕事を投げ出したら、仕事は確実に失敗となってしまう。
ついでに会社もクビに……
そうならないためにも努力をしなければ!
「さて、とりあえず自分の部屋に荷物が届いてるはずだから荷ほどきしないとな」
これから始まる新生活に不安と希望を抱きながら、俺はシェアハウスの中へと入っていった。
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「こいつは驚いた……」
シェアハウスに足を踏み入れて第一声、驚きの声があがった。
「1階は仕事場になっているのか」
社長から渡されたていたシェアハウスの見取り図を開く。
どうやら玄関から左手にはゲームのプログラミングやイラストを制作する部屋があるようだ。
正面を進むと食堂と会議室、2階へと続く階段がり、右手にはBGM制作スタジオと資料室がある。
一体この家を建てるのにどれくらいの金がかかっているんだ?
「なんだか怖くなってきた……俺本当にこの家に住んでいいんだろうか」
つい、そんな不安を抱いてしまう。
今まで俺が住んでいた家というと、ベッドを置くとほとんど身動きが取れないような狭い部屋やシャワーしか付いてないオンボロアパート。
こんな豪邸に住んだことなんて一度もない。
「ま、まあ、とりあえず自分の部屋に行ってみよう」
俺は不安と汗を手で拭い、自分の部屋がある2階へと上がった。
「ここが2階か」
見取り図によると、2階は居住フロアになっているらしく、プロジェクトに参加するメンバーの個室と大型テレビなどがあるリビングで構成されている。
「あれ、プロジェクトに参加するメンバーの個室少なすぎじゃないか?」
2階にある個室はたったの6部屋のみ。
もしかして、参加メンバー全員分の部屋はないとかか?
「俺、廊下で寝泊まりとか嫌だぞ……」
廊下が貴方の部屋ですなんて言われたら泣崩れそう。
「というか、プロジェクトに参加するメンバーの数って何人だよ」
よく考えてみるとなんでプロジェクトに参加するメンバーの数が社長から渡された資料に書いてなかった。
普通、プロジェクトに参加するメンバーの名前とか書いておくんじゃないのか?
「なんだか嫌な予感がするな……」
大学の授業でも、先が見通せていないプロジェクトは危険極まりないとか言っていた。
先の見通しができていないままプロジェクトを進めることは自殺行為。
「自分の部屋に着いたら、今後について考えないとな」
俺はそんなことを考えながら、見取り図に書いてあった自分の部屋である205号室へと向かった。
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「ここが205号室か」
散策しながら歩くこと数分、2階の一番端にある自分の部屋の前へとやって来ていた。
「おお……! ドアが鉄製だ!」
俺が今まで住んできた家のほとんどは扉が木製だった。
あの台風の風で壊れてしまいそうな扉の不安といったら……
毎日、泥棒に入られないか不安で仕方なかった。
でもこれからは安心だ。
鉄製の扉、こいつは心強い!
「よーし、それじゃあ部屋の中を拝見するか!」
カードキーを取り出し、読み取り機にかざす。
すると――
カチッ
「うわっ!? 本当にカードをかざしただけで鍵が開きやがった!! スゲえな文明の利器!!」
俺はカードキーと呼ばれるシステムに興奮しながら部屋の中へと入っていく。
そして――
「え……? あ、あわわわわっ!?」
「ちょっ、なんで女の子がぁ!?」
夜空のように美しい黒髪ロングヘアと翡翠の瞳が目を惹く……裸の少女と出会った。