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8話 緊急召集

俺は静かに答えを待った。


テトラも黙って俺を見ている。だがその目は驚きを隠せない、と言ったところだった。


しばらくすると彼女は諦めたように溜息をつき、答えた。


「……そう、あんたの言う通り。私の中には「他人テア」がいる。正確には「他人」のうちの1人がテア、つまり『多重人格』。因みにあんたの届けてくれたこれは人格を安定させるための薬よ。」


そう言うとテトラは、先ほど俺が渡した薬瓶を見せた。


「忠告しておくけど、この事は言いふらさない方が良いわよ。理事長ちちうえも私の多重人格の事は誰にも言ってないから、あんたが知っていると分かったらその瞬間学園から排除しにかかると思うわ。」


質問してから、彼女の秘密を見破ったところで何の意味も無いことに気づいた。

そう思うと、さっきまでの興奮は妙に冷めてしまった。


「言わないよ。どうせ俺、明日学園辞めるし。」


「!………そう、なら好都合ね。」


彼女は一瞬驚く素振りを見せたが、そっけない返事をした。同情してもらうつもりは一切無かったが、少し傷ついた。


「もういい?そろそろ寮に帰りたいんだけど。」


「え?……あぁ。」


「じゃあね。」



…これが彼女との最後の会話かな、と思った。


臆病チキンな俺だからどうせ明日も自分からは話しかけないだろうし、このくらいの事件が無ければ彼女から話しかけて来るとこもないだろう。


(まあ、今日だけでもテトラと話ができただけ幸せか。)


………。


あれ?


何で俺は退学しようと思ったんだっけ……?



『ピリリリリリ!』


突然、アラーム音が鳴り響いた。


一瞬驚いたが、すぐに水星学園連絡用端末タブレットの音だと分かった。

水星学園では、生徒への連絡を効率化するため、連絡用の端末が生徒一人ずつに貸し出されている。


俺のものは鳴っていない。どうやら彼女テトラの端末の音らしい。


教室から出ようとしていた彼女は足を止め、黙々と連絡の内容を読んでいた。


彼女は大きく息を吐くと振り返り、俺の顔を見た。


「武藤エイユウ。」


「えっ?」


「今から理事長室に行くわ。あんたも来て。」



************



「まさか1日に2回も理事長室に来ることになるとは…」


俺とテトラは理事長室直通のエレベーターの中にいた。

ここに来るのは久しぶりな気がしたが、よくよく考えてみれば、一回目に来てからまだ1〜2時間程しか経っていない。


「…………。」


テトラは相変わらず黙っていた。彼女は他愛もない話をするような人では無い。そう知っていても、少し怖い。


でも何も会話がないのは辛いので、率直な質問をした。


「なあ……何で俺も呼ばれたんだ?」


「一緒にいた目撃者を連れてこい、って言われたの。」


「目撃者……一緒……?」


「あんたも見たでしょ、『レムレース』」


「っ!!そうだ!完全に忘れてた!」

今日の放課後は色々ありすぎて、既に記憶が混乱し始めている。


「私もさっき連絡受けた時思い出したわ。」


……では何故俺のストーカー疑惑は覚えていたのだろうか。それに関しては、勇気が出ず質問できなかった。


「倒し損ねた奴らについては安心して。連絡によると、フォンテーヌが片付けたみたいだから。」


「フォンテーヌ……生徒会長が?」


ブランシェ・フォンテーヌ。この学園の生徒会長を務めている女性だ。その役職に相応しい実力も持っている。


「やっぱレムレースが出たとなれば、生徒会長レベルが動かないと収集がつかないよな……」


『レムレース出現』――俺はようやく、この事件の重さを理解し始めた。


そうね、と興味無さげにテトラは返事した。学園最強の彼女から見れば、生徒会長など他の生徒と同様なのかもしれない。



ある程度状況を飲み込んだところでエレベーターが止まり、ドアが開いた。


「行くわよ。」


理事長室の木製ドアを開ける。

そこには、神妙な面持ちの生徒会長と理事長がいた。

ありがとうございました。

次回も読んで頂けると幸いです。

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