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プロローグ

「始め。」


審判の声が聞こえたと同時に、俺は背中に掛けた剣の柄を掴み、少し腰を落として構えた。相手の坊主頭の大男も背中の剣に手を掛け、同じ姿勢を取りつつこちらの出方を伺っている。


先に静寂を破ったのは相手だった。


「うおおおおぉっ!」


勇壮な雄叫びをあげ、男は距離を瞬く間に詰めてきた。


「抜刀!」


相手がそう叫んで振り下ろした剣を、俺は鞘に入ったままの剣で受け止める。重い衝撃が身体の隅々まで響き渡った。


振り下ろされた相手の剣は、俺の身長を遥かに超える大きさになっていた。典型的なパワータイプの能力だ。


「くッ!…」

このまま受け止め続けるのは無理だと判断した俺は、その巨大化した剣を受け流し、再び相手との距離を取った。


手には既に尋常じゃない量の汗が滲んでいる。油断すれば剣を落っことしてしまいそうだ。


すると男は意地汚い笑みを浮かべて、話しかけてきた。


「なるほど。今日もお得意の戦法って訳か」

「何…?」

「ああ悪い悪い。戦法も何も、それしかできないんだったな!」


落ち着け。これは挑発だ。相手に呑まれるな。自分の戦い方をしろ……そう言い聞かせ、平常心を保とうとした。

しかし


「…ナメるなぁぁっ!!」


俺のプライドは、この一方的な罵倒を許さなかった。今度は自分から距離を詰める。


「おらよっ、と」


うるさいハエを振り払うようにその男―――ディミトリ・コールマンが大剣を振るうと、俺―――武藤エイユウは、それこそ振り払われた虫ケラのように吹っ飛ばされた。


「ぐぅっ……」


空中で一回転、叩きつけられた地面で一回転して立ち上がる。


「おいおいディミトリ、その辺にしといてやれ。」

「こいつもう足がすくんじまってんぞ」


周囲で見物していた人間が俺を嘲笑う声が聞こえた。

悔しいが、その通りであった。俺の本能は既に戦意喪失し、身体を降参モードに切り替えていた。


試合中にも関わらず、どうしようもなく泣きたくなってくる。



ディミトリは群衆に笑顔で手を振っている。余裕しゃくしゃくといった感じだ。

しばらくすると、群衆に向けられていた奴の視線はこちらに移った。


「じゃあそろそろ終わらせるか。とりあえずケガはさせないようにしてやる。一応オレにも……情けっていうモノはあるからなっ!」


そう言うや否や男は飛び上がり、その大剣のきっさきを俺に向けて流星の如く降りかかってきた。


「『クレイモア』ッ!!!」


(なっ、何が「ケガさせない」だよ!半端ない殺意込めてんじゃねえか!)


身の危険を感じた俺は反射的に自分の剣の柄を握りしめていた。

握りしめると同時に、俺の中の理性が自嘲的に囁く。


何でだよ。こんな能力使いたくないのに。まして見せ物になるだけだと分かってて使うなんて。


……なんて俺は……




臆病者チキン』なんだ。





「うああぁっ!抜刀っ!!」


情けない叫び声とともに、その剣を鞘から抜きざまに思い切り振りきった。


閲覧ありがとうございます。小説サイトに自分の小説を投稿するのは、実はこれが初めてです。まだまだ未熟者ですが宜しくお願いします。

※この作品はフィクションです。

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