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君と歩むため最弱になる  作者: ちゃのま
12/12

渓谷での戦い

「これで何人だ?」


 俺は今、ルギウス帝国に行くための渓谷で、ルギウス帝国の軍隊を殺していた。


「くそったれが!なんなんだ!お前は何なんだよ!?」

「お前らが襲った村の生き残りだよ」


 ルギウス帝国の軍人からは罵詈雑言が鳴り響く、しかし《ディストーション》を使っているため、敵の攻撃を受けることはない、しかし、範囲外から弓を打たれればそれを防ぐ手段がない。

 この技は近接戦については絶対的な効果を発揮するが、代わりに周りの魔力を無くすため、自分の身を守るための魔力操作が出来ない。

 だが、そんなことは関係ない、弓のようなのろまな攻撃なら避けることはたやすいからだ。


「お前ら、全軍引き上げろ」


 すると、一人の男が出てきた。

 その男は中年の男なのだが、その存在感は今までの兵士とは違っていた。


「しかし!将軍を一人になど……!」

「本隊の三割が、たった一人に削り取られたのだ、あれは王国の切り札『最弱』だ、ここ二年間姿を見せることがなかった奴がどうしてここで出てくるか知らないが、お前たちでは役不足だ」

「くっ……ですが!」

「安心せよ、ただで死ぬ気はない、お前たちが逃げる時間は稼ぐ」

「…………了解しました、全軍退却!殿はカイザス将軍が行ってくださる!急いで撤退を開始しろ!」

「お主のようなものが軍部にもっといればよかったのだがな……」

「いいえ、将軍あってこその我らです、ですのでご武運を……!」

「年寄りに頼りすぎだ、行くがいい……」

「はっ!」


 敵の軍隊は撤退を開始し始めた、まだ逃がすわけにはいかない!もっと減らさないと村が……っ!?

 俺は追撃をしようとするが俺の剣は受け止められた。


「カイザルか……」

「久しぶりだな『最弱』、お前がなぜここにいる!」

「……この中で動けるとは、やはりお前は化け物だな」

「それでもいつもの半分も力が発揮できないが……な!」


 重ねていた刃をカイザルが横薙ぎに薙いで俺を無理やり吹っ飛ばす、俺は体制を立て直し、再び軍隊に突撃を決める。


「させぬわ!」

「チッ……!邪魔だ!」

「自分の部下を見殺しにするほど儂は耄碌しとらんぞ!」『最弱』!」


 俺は対象をカイザルに変え、目の前の中年に剣戟を繰り出していく、奴はそれを最小の動きだけで避けていく、


「くっ……相変わらず無駄に走ってんだな!」

「ハハハ!儂もただの趣味だったのだがな、お前に対抗できるとは思っとらんよ!」


 ただし、奴が最小の動きで防いでいたとしても、俺が速くなっていくとともに奴の体に刃が掠る。


「ぐぅ……!相変わらず出鱈目よの!お前らは!」

「その出鱈目に真正面から立ち向かっていてよく言うよ!」


 俺は目の前のカイザルという男を嫌いではない、帝国に生まれ、帝国で育ったくせに傲慢ではなく、ステータスがあるというのに体を動かすという無駄なことをしている。

 だが愚直に進み、自分の信念を持っているこいつは真正面から俺達の前に立ちはだがる、余計なおせっかいも焼く奴だった。


「お前がここ二年間、どこにおったか知らん!しかし、ここで立ちはだかるというのなら迎え撃つしかない!」

「黙れ!貴様らが村を襲うからこそ、俺が出てきたんだ!略奪なんかしようとしなければ俺もここにはいない!」

「なんじゃと?儂はそんなことは指示しておらん……ぐぅ!軍は撤退したか……ぬお!待て!お前の話を聞かせてもらえぬか!儂はそんな命令は出しておらん!」

「そんなことを信じろというのか!?」

「ふむ、ならーー」

「……どういうつもりだ?」


 俺と剣を交えていたカイザルが、戦いの最中に剣を捨て、手を頭の上まで上げる。

 警戒をして、首元に剣を添える。


「止まってくれたか……お前は二年たっても変わらんな」

「黙れ、指示を出してないとは言ったがどういうことだ?奴らはルギウス帝国の軍人と名乗り、襲ってきたぞ」

「指揮官の名は何と言った?」

「知らん、副官らしい奴はギムルと聞いていたが……」

「ジュリスの隊だな、奴には偵察と村があれば交渉をするように話していたのだが、やはり元老院が関わっていたか?」

「おい、一人で納得するな、つまりはどういうことだ?」

「むぅ、まぁ簡単に言うと、今ルギウス帝国の軍部と元老院は犬猿の仲での、儂のことが邪魔らしい」

「ふん、どこのお偉いさんも邪魔な奴は排除ってことか」


 俺はその話を聞き、カイザスの首元に添えていた剣を引っ込めた、だからと言って警戒を解いたわけではない。


「やつらめ、まさか自分の息がかかっているものを儂の隊に潜ませていたか、それが本当のことなら謝罪しよう、村の方は無事なのか?」

「ああ、そこには俺がいたからな、指揮官と何人かは殺したが、残りは帝国に戻ったんじゃないか?」

「……そういえば、どこかの隊が帰還すると報告を受けていたような」

「どこが耄碌してないだ、してんじゃないか」

「う、うるさいぞ!お前はここ二年どうしていたのだ?」

「王国に裏切られたから名もない村に隠れていた」

「なんと!?あの女王がお前を裏切るとは思えぬが……」

「だが実際に裏切られていた、洗脳魔法などを警戒していたのだが、魔法の痕跡がなかった」

「ううむ、どうなっている?儂ではさっぱりわからん」

「あんたはもともと肉体派だろ、考えるなんて似合わねぇよ」

「……さっきの言葉は訂正しよう、お前は変わったな!ハハハ!いい変わりようだ!」


 奴はいきなり俺の背中を叩き、大笑いをする、いてぇっての!


「そんなことより、あんたはこの後どうすんだよ」

「ふむ、お前が見逃してくれるなら、これから帝国に戻る、そろそろ元老院を潰すか、国を出ようかと考えるぞ」

「お前、結婚とかはしてないのか?いい年だろ?」

「む、失礼な、儂はこれでもまだ三十一だぞ、それに結婚もしてない」

「老けすぎだわ!え?若!どういうことだよ!」

「お前は本当に失礼だな、そういうお前はどうするんだ?村に帰るのか?」


 カイザルは俺の顔を見て聞いてくる。

 ……そういえば考えてなかった。


「村には帰らない、記憶の処理は済んでいる、王国があそこの人間に聞き出す可能性もあるしな」

「ふむふむ、なら一緒に帝国に行くか?」

「はっ?」


 こいつはなにいってんだ?


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