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宇宙の愛の物語。  作者: ~ちあき~
9/13

第3章 救出(1)

遠い昔。


神は

アダムとイブを

地球に住まわせたという。


そこから

人類の歴史が

始まったという。



しかし


その地球の歴史が

まもなく

終わりを告げる。




地球人絶滅を回避するため、

パラダイス星人は

地球に一人の勇者を送り込んだ。



彼は まもなく

『第二のアダムとイブ』を、

滅びゆく地球から救い出し、



新しい惑星に連れてくるだろう。



そして


『第二の地球』の人類史が今、


新たに始まろうとしている ーー










ここは『第二の地球』。


この惑星の開拓を進めてきた

多くの仲間たちが

すべての作業を終えたところだった。



すると仲間の一人が叫んだ。



「カーロが地球から戻って来る!

彼のエネルギーがここに向かってくるのを察知したぞ!」



興奮する仲間たちの目前に、

突然

まぶしく光り輝く

大きなエネルギーの物体が現れた。



大きな歓声が上がるなか、


その物体は徐々に小さくなって霧状にキラキラと輝き始めると、


その中からは、

微笑むカーロと二人の地球人が

姿を現した。


再び湧き上がる大歓声。


「よくやった!カーロ」

「任務終了だな!おめでとう!」

「危険な任務、ご苦労様!」


歓喜した仲間たちが、

次々と祝福の言葉を叫んでいる。



カーロはその様子を冷静に見つめながら、ゆっくりと周辺を見渡した。


一面の花畑が広がり、

甘い蜜の香りが

カーロの疲労を癒すように包む。


遠くの山々には、

主食の実がなる木々や

広々とした野菜畑、果樹園も見えていた。

『第二の地球』は完璧に仕上がっている。

これなら地球人が何人来ても受け入れ可能である。

カーロは安堵した。





「カーロ、危険な目には遭わなかったのか?」

「地球人はどうだった?」

「大気汚染は一体どのくらい進んでいるんだ?」



仲間からの質問が熱く飛び交うなか、

カーロは質問には答えず静かに言った。



「本当に申し訳ないのだが‥‥。

私にはまだ、これからやらなければならない事が残っている。

まだ私の任務は終わってはいない。


地球のことが知りたければ、

地球人の二人に聞いてくれ。

恐れることはない。


パラダイス星人が考えるよりずっと、

地球人は友好的で、愛情深い。


だから‥‥

今からでも地球を改善できる可能性が残っていると、私は信じたいんだ。


それも含めて

私はボスに話したいことがある。


今からすぐにパラダイス星へ戻る。

とにかく、急がなければ!」




















「‥‥‥私は仲間にそう言って、再びワープしました。


第二の地球から、パラダイス星へ。


ボスに会い、地球人を救出し続ける許可を得るために。



そして、

地球の汚染を少しずつでも改善し、

滅亡を少しでも

遅らせることができれば、


多くの地球人を救えるはずだという

提案を伝えるために。



つまり、


私たちパラダイス星人が

地球人と関わり、

彼らを指導することで、


それは可能だと言いたかったのです。



きっとボスも過去には

それを望んでいたはずです。


彼が100年前に

地球に行った時には、

そう考えていたはずだと

私は悟ったのです。





「地球人は凶暴である」

と言い伝えられていますが、


凶暴なのは、

一部の上層部の人間だけ。

しかも彼らは無知なだけです。


いや、無知と言うよりも

間違った知識に支配されているだけです。


凶暴なのではなく、

自分が正しいと信じていることを行動しているに過ぎないのです。


本当は‥‥

地球人はみな愛に溢れています。

だから彼らを助けたい‥‥‥。







しかし‥‥。


やはりあの時、

私は身体を休めて疲労回復させるべきでした。


比較的近い距離のワープに油断していたのでしょう。


忠告してくれた仲間の制止を聞かず

パラダイス星へ速攻ワープしてしまった私は‥‥



途中で意識を失ってしまいました。


着地のコントロールが不可能になり、硬い地面に叩きつけられました。



それが‥‥


ニコルとダイゴ、

きみたちに昨日助けられた、

あの場所だったのです‥‥」









黙ってカーロの話を聞いていた

ダイゴは深くうなずいた。


「‥‥なるほど。

それであなたは、ひどい怪我をして大きな絶望感を放ちながらも、ここで死ねないという強い生命力に溢れていた、というわけですね」


ニコルは、地球のユウリの心情を察して悲しくなった。


「あなたがこんな大怪我をしたこと、彼女は知らないのね。

長い間会えなかったら、すごく心配するよね‥‥」


ダイゴも腕を組んで考えこむ。


「次の脱皮までは、あと約70年。

身体の完璧な回復を待っていると遅すぎますね。

地球滅亡どころか、

彼女の寿命が来てしまう‥‥」



カーロはため息をついた。


「えぇ、そうなのです。

地球人は身体の細胞の衰えが

かなり早い。早く行かなければ‥‥」






「許可はできない」


突然、部屋中に低い声が響いた。


得体の知れない何者かが入ってきたことに驚いたニコルとダイゴは、

床に座り込んで息を飲んだ。


そこに入ってきたのは、パラダイス星の最高責任者ルーサだったのだ。


彼の光が一気に広がり、部屋中が明るい輝きに満たされた。


「ボス‥‥」

カーロは眩しさに目を細めた。


再びルーサの声が響く。


「カーロ。私は最初に言っておくべきでした。どんなことがあっても、地球人を愛してはならないと。


私たちと違い、

短命な彼らはすぐに老いて死にます。


辛く悲しい思いをするのは、カーロ、あなたなのです‥‥」



カーロは首を振った。


「私はただ彼女を助けたいだけです。


あの地球から1秒でも早く、

救い出したいだけです。


薬品にまみれた食べ物ではなく、

美味しい野菜や果物を

食べさせてやりたい。


澄んだ空気の本当の美味しさを

感じさせてやりたい。


そして私の命のある限り、

地球人の救出を

ずっと続けていきたい。

それが彼女の望みなんです。


私の決意は変わりません。


私の命はすでに、

地球人に捧げたも同然です」




ルーサはため息をついた。


「あなたの望みはわかりました。

別の形で検討しましょう。

しかし、

あなたは非常に優秀な人間です。

パラダイス星の大切な人材です。

これ以上あなたを

危険にさらすことはできません。


地球は

すでに危険な状態です。

もう二度と行ってはなりません。


あなたの任務は終わったのです。


再び地球へ行くことは、

どんな理由があろうと

私が許可しません。


もうすぐ世話係が数人ここに来ます。

あなたに安全にゆっくり休んでもらうために‥」



カーロの顔色が変わった。


「私の監視‥‥ですね?」



「あなたは少し良くなればまた地球に行きかねません。世話係に見守ってもらい‥」


ルーサが言い終わらないうちに、

カーロはいきなり立ち上がると病室を飛び出した。




「カーロ、待ちなさい!」


追いかけるルーサの目の前で、

まるで逃げるように

ワープ状態に入っていくカーロ。





消えていく彼の後ろ姿を、

ニコルとダイゴは

黙って見送ることしかできなかった。


ただただ、彼の無事を願いながら。




ルーサは、

カーロのエネルギーの残像を

呆然と見つめ、涙を流していた。


「あなたはまったく。

自分の命も惜しまず突き進んで‥‥。


カーロ‥‥。まるで亡くなった私の父を見ているようだ。

やはり‥‥

あなたは、そうなのでしょう。

どうか、どうか無事で‥‥」










カーロは今


宇宙を漂っていた。



ボロボロになった身体で。



意識はない。



呼吸もしていない。




宇宙の塵となって


ただ


彼はそこに浮かんでいた。





地球へのワープに失敗したのだ。






しかし死んではいなかった。



彼の強固な精神力が、


そして

彼の無事を願う人間たちの

愛のエネルギーの力が、



彼を生かし続けていた。




宇宙の壮大なエネルギーは

どんな奇跡も起こせる。





幾多のブラックホールに

吸い込まれることもなく、


彼の身体に絡みついた

地球に対する熱いエネルギーが、


少しずつ

彼を地球に近づけていく。



彼を

地球のユウリのもとへ

運んでいくかのように‥‥‥。






〜続〜


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