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宇宙の愛の物語。  作者: ~ちあき~
7/13

第2章 地球(3)


私はすぐに、

その先生を捜しました。


彼はあまりにも有名な医者で、

見つけることは簡単でした。


しかし彼は忙しすぎて、

自らの食事や睡眠時間さえ

ほとんど取らない人間。


私と接触し、話をすることなど、

到底できそうにないのです。


そこで私は考えました。

患者になりすまし、

診察室で会うことを試みたのです。


羽を小さく折りたたみ、

上から厚手のコートを着て、

看護師には退席を申し出ました。




診察室で先生と二人になることに

どうにか成功した私は、


「まずはこれを見て下さい」


と言ってコートを脱ぎました。


背中の羽を見せたのです。




「こっ、これは‥‥?」


「驚かせて申し訳ありません。

私の話を信じてもらうためです。


私は見ての通り、地球の人間ではありません。宇宙から来た者です。


先生、あなたにお話が‥‥」





「宇宙から来た‥‥?」


彼は絶句しました。



しかし彼はとても好意的で、やはり

他の地球人とは違うようです。



「宇宙人が、私に話があると言うのですか?光栄なことです。

ぜひ聞いてみたい」


冷静に話す先生に、

私は安心して

すべてを話しました。


ユウリに話した内容と同じように、

現在の地球の状況と、

私が地球に来た目的を。




先生は私の話に何度も

うなずきながら、言いました。



「なるほど‥‥。

君のおかげで謎が解けましたよ。


呼吸困難になって突然死する不可解な事件が最近何件か起きていたんです。


酸素不足による脳障害の患者が増えていることも、医学会で取り上げられていました。


原因も治療法もわからず、

巧妙な手口のテロなのか、とも噂されていましたが、

すべては、有害物質『Rp44』の仕業だというわけですね。


すべてが解明されましたよ!」



そして彼は腕を組むと、

ゆっくりと語り始めたのです。



「やはり‥‥

地球はもう終わりなんですね。


あと100年ですか‥‥。


実は、

薄々感じてはいたんです。


汚染された今の環境。

添加物と農薬にまみれた食品。


知らず知らずのうちに体内まで汚染された人間たちは、

非常にキレやすくなりました。


そして今、弱者や子供たちが犠牲になる事件が多発しているのです。



私たちは無邪気な子供たちに、

恐ろしい現実を教えなければならない時代になりました。


『誰も信用するな』と。


『知らない人と一切関わってはいけない』と。


『誰からも菓子などをもらってはいけない。毒が入っているかもしれないよ』


『道を教えてと頼まれても、

案内してはいけない。

そのまま連れていかれるよ』


『学校にいても路上でも、家の中でさえ、安心してはいけない。

いつ、どこから、

刃物でピストルで、毒入りジュースで、殺されるかもしれない。


信じられるのは自分だけ。


家族でさえも信じてはいけな‥‥」



彼は感情が高ぶって

言葉に詰まり、

深いため息をつきました。



「‥‥傷ついた多くの子供たちを診てきたんです‥‥。


人間は本来、人を信じるものです。


その本能に逆らって、

人を信じることの愚かさを、

子供たちの頭に

叩き込まなければならない‥‥。


しかも徹底的に!

子供たちを守るために!


でも本当は‥‥‥


これからを生きる子供たちに、

こんな教育はしたくない。


こんな残酷な社会を与えたくない。


正直‥‥


地球にはうんざりなんです。


地球から逃亡させてくれるのなら、


私は宇宙のどこへでも行きます‥ 」




彼は

疲れ果てた様子でした。


自己犠牲の精神で、

常に患者優先で生きてきて、

今、

彼の心は折れそうになっている。


今すぐにでも、

彼を地球から救出しなければ、

心の病を発症しそうな精神状態であると感じました。


急がなければなりません。


彼はさらに続けて言いました。



「君は男女一人ずつしか、

連れていけないと言いましたね」



「はい、そのことですが‥」

「おーい、ちょっと来てくれ!」



私の言葉は

彼が看護師を呼ぶ大きな声に

かき消されました。


「はい、先生?」


呼ばれた看護師は、

少しふっくらとした体形で

優しい目をしていました。


彼は立ち上がり、その看護師の肩を引き寄せて言いました。



「彼女は、私の助手として、

共に医療に携わってきました。

先日、婚約したばかりなんです。


彼女と一緒でなければ、

私は行きません ‥‥」



~続~




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