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宇宙の愛の物語。  作者: ~ちあき~
6/13

第2章 地球(2)

ユウリが運転する車の助手席で、

私は

咳が止まらなくなりました。


呼吸も苦しくなっています。



「大丈夫?」


ユウリが心配します。



「空気が‥‥‥。


汚染されています。


慣れれば‥‥大丈夫‥‥」


私はそう答えると

また咳き込みが激しくなりました。



「空気‥‥?


遊園地は

森の中だったから、

空気がきれいだったのかしら?


ここから先は、もっと空気が悪くなるのに、どうしよう‥‥‥。


んー、少し遠いけど‥‥

両親の別荘に

行き先を変更しようかしら?」



ユウリは車をUターンさせました。

そして

携帯電話で母親に承諾を得ると、

微笑んで言いました。


「別荘なら、

冬場は誰も使ってないの!

初めから別荘に行けば良かったかも」



そうして私たちは、

空気の澄んだ場所にある

美しい木造の家に到着したのです。


息苦しさは、

すっかり消えていました。




家の中に入るとすぐに、

ユウリは

キッチンの冷蔵庫から、

飲み物を持ってきました。


そして二つのグラスを並べると

赤や黄色に光る液体を注いでいきます。


この色と光は‥‥合成着色料の類です。



「ユウリ‥‥。

このキラキラ光っている物質は

何なのか、知っているんですか?」



「ん?何かしら?知らないわ。

これね、最近 流行りの

『キラキラジュース』っていう

名前のドリンクなの。


『乾杯!』ってやると、

光が揺れてすごくきれいなのよ!」





「ジュースの色が不自然です。

鮮やか過ぎます。


地球人は本当に、

これを飲むのですか?


ハッキリ言わせてもらいますが、

これは毒ドリンクですよ。


すぐに死には至りませんが、毒が

徐々に身体に蓄積されていきます。


これが流行っている?

やはり、地球は狂っています!」




「毒って‥‥‥添加物のこと?

でも安全だと言われてるものよ‥‥。


ここに買い置きしてある食べ物は、

防腐剤やら食品添加物が

色々と入っているから、

カーロが食べられる物は無いかも。


どうしよう‥‥」



ユウリは悩みながら沈黙し、



私は、

湧き上がる疑問が

口をついて出るのを止められませんでした。



「地球人は‥‥


なぜ、こんなにも、

自分で自分を苦しめるのだ‥‥‥。


食品も、空気も、水も、自然も、


汚染はやがて、

自らに影響を及ぼすというのに!


もしかしたら地球人は、

苦しむことが好きなのか?



地球人は何が楽しくて、


『幸せ』を無視して

『不幸せ』を必死に探したり、


悪い感情を

ずっと大事に持ち続けたり、


不必要な

不安や心配を、

異常に募らせたりするのだろう。


何の利点もないのに!


利点どころか、

わざわざ不幸を

引き寄せてしまうだけなのに‥‥。


彼らは、

どれだけ苦しめば気が済むのだ?


どれだけ苦しむことが好きなのだ?」




私のつぶやく嘆きを、

ユウリは黙って聞いていましたが、


真っ直ぐに私を見つめると

穏やかな声で言いました。



「カーロは宇宙人だから、

理解できないかもしれないわね。


決して『地球人は苦しむのが好き』

ではないわ。


きっと、みんな知らないだけなの。


『幸せ』の正体を‥‥。



私は‥‥

小さい頃からずっと

身体が弱くて、


入退院の繰り返しだったから

わかるの。


今の普通の生活が、

どんなに尊くて

幸せなものなのか。



生きていること、

呼吸できること、

食べられること、

歩けること、


あらゆることが、


どんなに

ありがたくて、嬉しくて、

幸せなことか。


たぶん、多くの人は気づいていない。


『幸せ』が周りにたくさん

溢れていることに。




私は‥‥今まで『幸せ』を

たくさん見つけてきたわ。


入院していた時だって、

病院の優しい先生や看護師さんが

大好きで、毎日会えて幸せだった。


入院しなければ

出会えなかったんだものね。


どんなに

不幸と思えるような場面でも、

幸せは必ずある。


探せば無数に出てくる。



全世界の人たちが、このことを

心から理解できたら‥‥


この地球上に、

『不幸』なんて

存在しなくなるのに‥‥」






私は興奮しました。


やはりユウリは、

私の思った通りの人材でした!


「ユウリ、第二の地球を作っていくのは、あなたしかいません!」



不思議そうに私を見つめるユウリに、

ようやく私は

自分の任務について

説明を始めることができたのです。



地球の汚染により、

地球上の生命が

絶滅する危機になっている現状と、


そして‥‥


地球人絶滅の危機を回避するため、

男一人と女一人を

第二の地球へ救出することが、

私がここに来た目的であること。



しかし私が話を進めていくうちに、

ユウリの顔が

悲しそうに歪みました。



「二人だけって‥‥‥!」


ユウリは声を震わせました。



「私には愛する人がたくさんいるわ!ここには両親も友達もいる!


二人だけなんて、ふざけないで!


みんなを救える方法を見つけてよ!


カーロ、

あなたは宇宙人だから、

何でもできるんでしょう?」



彼女は動揺と怒りで涙ぐみ、

パニック状態になったのです。



私は思わず

彼女を抱きしめて言いました。



「今の私の力では、一度に連れて行けるのは二人が限界です。


でも約束します。


最初の二人を救出した後、再び地球に戻って救出活動を続けます。


そして


何度でも、

何度でも地球に戻ります。


私の命をかけて、

救出活動を止めないと誓います!


だから、ユウリ、落ち着いて‥‥」



彼女の肩の力が抜け、

怒りが消えていくのを感じました。



「ごめんなさい。

あなたは悪くないのに‥‥‥」


その言葉と同時に私は言いました。



「ユウリ、急ぎましょう!

一人でも多くの人々を救うために。


すぐに恋人に会わせて下さい。

ユウリと恋人をまずは救出します。


彼には私が直接、

事情を説明した方が早いでしょう!」




「‥‥私に恋人なんていないわ」


ユウリは平然と言いました。


「隠し事はやめて下さい。

あなたに愛している人がいることは、わかっています。


遊園地であなたが歌った愛の歌は、

その人に向けて歌ったものです。


優しい目をした、

黒いメガネをかけた男性です」



ユウリは驚きました。


「えっ?そんなことまでわかるの?

どうして?」



「宇宙人ですから。

いや、地球人にも本来この能力はあるのですが、まだ使い方を知らないようですね。

さあ、早く恋人に連絡を取って下さい!」



ユウリは恥ずかしそうに

うつむいて、

小さな声で言いました。



「でも、本当に恋人じゃないのよ。

私が勝手に好きになっただけ。


彼は‥‥

私の担当医だった先生なの。


有名な外科医でね、

私の体内に散らばった腫瘍を全部取ってくれた恩人なのよ。


とても難しい手術だったわ。

彼じゃなければ、

不可能な手術だった。


先生は、

全国にいる私のような患者を

今も救い続けているわ。


自分の生活は後回しにして、

自分の食事や睡眠よりも、

患者のことを

第一に考えて‥‥‥。


私は、健康体になっちゃったから、

もう何か月も会えてないんだけど、

私‥‥‥

二年後に先生に会いに行くと決めてるの。


あと二年経てば

二十歳になるから。

大人になるから。


そうしたら先生の所へ行くつもり。


先生のそばで、

先生の健康をサポートするのが、

私の夢。


お嫁さんじゃなくて構わない。

先生の役に立ちたいの!」



~続~





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