表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙の愛の物語。  作者: ~ちあき~
3/13

第1章 パラダイス星(2)



あれから三日が経ち、


目覚めたニコルは、

鏡を見てにっこり微笑んでいた。


背中には、優雅に伸びた艶やかな羽。


肌から放たれる、透き通った輝き。


全身の新しい細胞に、心地良いエネルギーがみなぎっている。



脱皮は大成功であった。



ニコルは喜んで母親に言った。



「ニコルね〜、次の脱皮の時は、

羽をマリンブルーにしようかな?


そして髪はキラキラの虹色にするの!

それから‥‥」






「まぁ、もう70年後の話なの?うふふ。

マリンブルーと虹色?いいんじゃない?

でも、

羽と髪の色のバランスを考えないと、

ママみたいになっちゃうわよ〜」




「あは。ほんとだ!

70年間は変わらないもんね~。

ママの色彩感覚、うける~!」




「そんなことより、ニコル!

今日は学校に行くんでしょ?」



『もちろん!ダイゴに会うの!」








ここパラダイス星の学校では、

教えたい者と学びたい者が集まり、


宇宙の言語や、世界の仕組みについての

授業が行われている。



ニコルは

自分の授業を終えるとすぐに

ダイゴの教室に向かった。




「脱皮して大人になったから、

今日はお祝い〜〜!!

これから一緒に花畑へ行って、

花の蜜を飲みまくろうよ〜!!」




「あぁ!飲もう!」



3年前に初脱皮を終えたダイゴは、

ニコルの恋人である。











静かに広がる一面 真っ白な花畑で、

二人は

蜜を飲みながら、

宇宙の話に夢中になっていた。





「ずっと不思議に思ってたんだけどね、

ダイゴって、地球の言語の授業ばかり

選択しているでしょ?

何が面白いの?


私はラブリー星とか

ピース星とかが好きなのよね。

いつか行けたらいいな、って思ってるの」





「ニコルにはラブリー星が似合ってるよ。

この星から近いし、そのうち行けるさ。


オレは‥‥地球が気になってる。

いつか

地球の人間と交信したいと思ってるよ。

だから地球の言語を習得してるのさ」





「え〜?地球〜?本気なの?

地球との交信は法律で

禁じられてるんじゃなかったっけ?」





「確かに法律で禁じられているさ。

今はね。

でもいつか、その法律も変えてみせる。

オレの血が騒ぐんだ。


なぜ地球人は殺しあうのか。

なぜ自らの住んでいる地球を

汚すのか。

なぜ破滅への道を急ぐのか。


その理由が、知りたくてたまらないし、

発展途上の地球の手助けが何かできたら、と考えているんだ 」





「もぅ〜、ダイゴは正義感、強すぎる〜!

野蛮な地球人は超 危険だよ!」





「そうかな。

地球人 全てが野蛮なわけじゃないさ。


平和を愛する人だっているのに、

一部の地球人の素行の悪さが原因で、

誤解されているだけなんだ 」






「え?悪いのは一部の地球人だけなの?」







「そうさ。

あ、これは有名な話だから知ってるかな?

オレたちが生まれるずっと前の話でさ。


この星の、最高責任者のルーサ氏が、

地球に行った時の話 」









「え〜っと。確か歴史で習った!


地球人がやらかした『宇宙人捕獲作戦』。

失敗して大惨事になっちゃった、あの事件ね。


生きて帰れたのは、

ルーサ氏ただ一人だけ。

仲間はみんな地球人に殺されたっていう…


ただ地球人に宇宙の法則を

教えようとしただけなのに。


進化を助けようとしただけなのに!」









「あれは一部の地球人の犯行だ。


彼らが

宇宙人を脅かすために使った爆薬の量が

多すぎたんだ。


あれは事故だった。

宇宙人殺害事件では決して無い。


それを嘆き悲しんだ地球人も

たくさんいたはずなんだ。




でも地球では

この事件は『極秘』として隠されてきたし

100年も昔の話だから、


知っている地球人は

今はもう

生きていないだろう。


でも、当時の地球人はパラダイス星人を

『羽の生えた天使』と呼んだ。


愛と平和の象徴として

今も

語り継がれているらしいよ 」








「へー、そうなの?」






ニコルは

手にしていた花の蜜を飲み干した。



地球の話はもう、どうでも良かった。




「ねぇ〜、今日は

もう少し先まで花畑を探検してみない?


まだ飲んだことのない、美味しい蜜が見つかるかも〜!」




「あぁ、そうしよう」




二人は立ち上がると、花畑を奥へと進んでいった。



その時。


草の茂みの中に何か黒い物体が見えた。



「誰かいる!」



パラダイス星人の特殊な感覚で、

二人にはすぐにわかった。


間違いなく人間だ。


しかしこの惑星には珍しく、


その人間が放っているのは、

大きな絶望感。



「誰だ?こんなところで何してる!」



ダイゴが近づいていくと、

一人の男性が

うつ伏せになって倒れていた。



大きなゴツゴツとした背中に、立派な羽。


しかし羽は傷つき、

血が滲んでいる。



肌はガサガサで

全身が少し焦げたように黒ずんでいた。





「だ、大丈夫ですか?」


声をかけたが反応がない。



男性は身体だけでなく、心が深く傷ついているのがわかった。


大きな絶望と悲しみが溢れ出している。





ニコルとダイゴは、

その悲しみの大きさに、

心を震わせた。




愛と平和に満ちているはずの

この惑星で、

彼にいったい何が起こったのか。


彼をここまで苦しめるものが、何なのか。


二人には全く想像できなかったのだ。











地球人とは違い、

パラダイス星人は

人の感情を読み取る能力が備わっている。


怒り、悲しみ、痛み、不安など、

その人間が発している感情が

強ければ強いほど、

つまり、

エネルギーのパワーが大きいほど、


容易にそれを感じとるのだ。



脳を120%活用し、

超能力を使いこなせる結果なのである。



地球人は残念なことに、

その能力を

活用できないまま、


活用方法を知らないまま、

生涯を終えているのだ。








「大丈夫ですかぁ〜?」


大きな声で、ニコルが聞いた。




「動けない‥‥」


男性は、最後の力を振り絞るように答えると、そのまま意識を失った。



しかし男性は

深い絶望の中にありながらも、


強い生命力を維持し続けている。


(ここで死ぬわけにはいかない‥‥必ず‥‥

必ず‥‥しなければ‥‥)


男性が発しているのは、

何かに対する

強く、熱い、思いのエネルギー。


謎だらけだった。






「とにかく急ごう!彼はきっと助かる!」



ダイゴは

男性を急いで担ぎ上げて背中に乗せると、

病院に向かって飛び立った。


ニコルは後を追った。




〈続〉

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ