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Gift₋01 彼は何を生み出すか

なぜ、こんなことになってしまったんだろう?


 人通りの激しい繁華街から外れた路地裏に、男女二人の足音と彼らを追いかける男の足音が響く。

前を走る男の容姿は、学生服を着ていてでも分かる、ほどよく引き締まった体に端正な顔立ち。

おそらく地毛であろうこげ茶色の髪の毛・・・・。一言で言い表せばイケメン、しかも主人公クラスである。

一方そんな男に引っ張られながら走る女といえば、かなり地味である。いや、正確には服装だけが地味なジャージ姿である。

 服装以外はというと長い睫に大きな目。小ぶりな唇に透き通った白い肌。モデルと並んだら、公開処刑としてネット世界で一盛り上がりするであろう手足。

 しかし、もっとも目を引かれるのは腰まで届くであろう長い髪であろう。その色は黒。なんの混じり気もない純度100%の黒色の彼女の髪はこの薄暗い路地裏の中で、ひときわ輝いている。おそらく彼女はお嬢様というやつだろう。


しかしそんな彼女が野暮ったいジャージを着ていると、

〝社長だった父と秘書の母は次期社長の座と彼の財産を狙う者の陰謀にはめられ、不慮の事故にあい、裕福だった家庭は一気にどん底に転落。唯一助かった彼女は両親の知人から援助を受けほそぼそと一人暮らし〟感がでてくるのはなぜだろう?


まあそんなことより、お嬢様をつれて走るイケメンと追いかけてくる男。この状況から考えるに、イケメンは箱入り娘のお嬢様に外の世界を見せようと屋敷から連れ出すが、屋敷の者に見つかり追いかけられている。といいたところか妥協であろうか。いたって普通。少女漫画やラブコメにはありがちな展開。


ただし、後ろから追いかけてくる男の両手が、金属の爪に変形していなければの話だが。


     なぜ、こんなことになってしまったんだろう?


 場の状況は、爪男により一変する。一夜限りのラブロマンスから、命がけの逃亡劇に。

捕まってしまったら、屋敷に戻されえるのではない。

待っているのは確実な死。そんな空気を爪男一人が作り出している。

 「きゃあっ!?」

あまり動きなれていないのか、ついにお嬢様の足がもつれる。

この隙を見逃してくれるほど爪男に余裕はなかった。彼のも彼なりの事情があるのだろう。

 そして均衡は日破られる。およそ人とは思われないほどの跳躍力でいっきに爪男の射程内までつめる。

彼女は動けない。見上げた先にあるのは、爪男の血走った眼。

「・・・フーッフーッッ!」

爪男の荒い息が聞こえる。

彼女はもう、声すら出せない。


なぜ、こんなことになってしまったんだろう?


彼女は、最後の力を振り絞り彼を、自分を連れ出してくれた彼を見ようと

後ろを振り向く。が、

 「え・・・?」

あまりの驚きに今まででなかった声がいとも簡単にでる。

目の前にあるのは不可思議な光景。


  彼は、右手を前に突き出したまま、何かを願うように目をつぶっていた。

「え、ちょっと・・なにをしているの・・・?」

彼女は戸惑いの声を漏らす。そして続けざまに言葉をまくし立てる。

「だって、だっておかしいじゃないっ!!貴方にはなんの力もにはずよ!

その手から何かが出るというの?ううん、そんなはずがない!そんな都合のいいことはおこらない!!  

 その言葉を聞いても彼は動かない。ただ手を前に突き出す。


「てめえええっ!!!なめてんのかああああっ!!!」

彼の行動に虚を付かれた爪男が叫び、動き出す。

爪男がその何かを切断するためだけの鉄の塊を振り下ろし、彼女の命が絶たれるまであと数秒。


   ----さて、間に合うのだろうかーーーー

 

 程なくして暗い路地裏に光が満ちる。


   本当に、なんでこんなことになってしまったんだろう?








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