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きっとこれは愛なんかじゃない

もういいよ

作者: 琉未

一気に書き上げたので誤字脱字があるかも知れません。

「もういいよ」


貴方を見て小さく呟く。

まるで、自分に言い聞かせるように。



私は、貴方に出会って消えかけていた“感情”を取り戻した。


暖かさ、楽しさ、嬉しさ、寂しさ、愛、嫉妬、妬み、恨み、嫌悪、痛み……


取り戻さなくてもよかった“感情”まで取り戻してしまった。



こんな醜い私。

貴方に知られたら嫌われてしまう。


そんなの嫌。

また独りになるのは嫌。

あんなに暗くて、冷たくて、寂しくて、怖いところに戻るのは嫌なの。


だから、笑う。


でも、感情が増えれば、増えるほど笑顔が歪んでいくような気がした。


それでも私は、笑顔を作り続けた。

その結果、悲しいことに私の笑顔はきれいになった。


誰も気づかない。

気付かせない。

でも、誰か、気付いて欲しい。


矛盾した想いが交差する。


苦しい。



でもね。

どんなに綺麗に笑顔を作っても貴方は見破ってしまう。






「どうした?なにかあったの?」



ほらね。

でも



「なにもないよ」



そう言ってまた笑う。

馬鹿みたい。



「……そっか」



君は寂しそうに笑った。

あーあ。

見捨てられちゃったかな。



悲しさと、寂しさが混じりあったような不思議な感情が胸に渦巻く。

感情から目を背けるように、私は、君に背を向けた。

そして逃げるように走り出した。


背中に私の名前を呼ぶあなたの声が刺さる。

強く、鋭い声が。


私は、聞こえないフリをした。



そして


「もういいよ」


と小さく呟いた。



もういいよ

口ではそう言うが、まだ期待している、縋っている、自分がいる。


諦めきれてない自分がいる。








ねぇ、優しくしないでよ








目が熱くなる、水滴が頬に伝う。

ああ、もう、思いっきり泣いてしまおうかな。

泣いても目腫れないから貴方にもバレない。


寂しさを紛らすために。

吹っ切るために。

貴方を諦めるために泣こうとした。



でも――




「なんで、出ないの……」



涙は出なかった。





私は貴方を愛してる。

でもね。

もう、とっくに気付いてるの。


この愛は“恋”なんかではない。

もっと歪んでいる、と。



私は、貴方の“言葉”に依存してる。

優しくて、暖かくて、柔らかくて、真っ直ぐな“言葉”に。




だから


もういいの


私は、貴方と笑い合ってたいの。

だから、こんな想い消してしまいたいの。


こんなに苦しかったら上手く笑えない。










ねぇ、出てこないでよ。









声にならない叫びが。

口に出せない想いが。

私を、苦しめる。



そんなとき


「どう、した?」


息を切らしながら、心配そうに、まっすぐ私の目を見ながら

貴方は私に問うた。


私の腕を強く掴んで。




あぁ、もう。




私は、貴方に抱きついた。




「大好き。だから、もうやめてよ」



抱きついているから顔を見られなくてすむ。

だから、伝えられた。



貴方の真っ直ぐな瞳と向き合って告げたら、絶対、見破られるから。




そして、トンっと貴方を突き放す。






「愛していました」






あぁ、私、笑えているかな?

多分今までで、一番綺麗な笑顔なんだろうな。


なんて、皮肉なんだろう。



貴方はただただ呆然と私を見ている。



しばらくして



「俺も、お前のこと愛してる」



そう告げた。



「ありがと」



でもね、違うよ。

それは“同情”だよ。

“愛”とは違う。


貴方は親から愛されていない私に同情しているだけ。

人の顔を窺って、偽って、無理に笑ってる私に同情しているの。



だから



「でも、貴方の愛は愛じゃないよ」



そう言うと君は



「気付いてるよ」



と、声を低くして気まずそうに笑った。

ごめんね。

そんな顔させたくは無かったんだけど……




もういいよ




「でも、それでも、俺はお前の傍にいたい」





もういいよ





「なぁ……」



そんな目で見ないで。



もういいの。




私は、もう一度笑う。



「もういいよ」



その声は寂しげで、悲しげで、表情とは不一致だった。



けどね





もういいの





もういいよ







さよなら、愛した人



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