一章:ラミア盗賊団編 (4.5)
昼下がりの午後、多くの人々が昼食を経て、新たに仕事に励むその時刻、アレイスは一人、薄闇に溶け込む暗闇の中で数人の男たちを囲んで、腕を組んで椅子に腰をかけていた。
周囲を取り囲む人々の人相は決していいものとはいえない。あえて言うのなら街のごろつきがグループをなして、集ったような面々がその場には集まっていた。無論、腰には剣やナイフなど物騒なものを所持している男も数人見受けられる。アレイスはそんな彼らを見ても怯えることなく声を上げた。
「下級Bランクの魔物を1体とCランクの魔物を3体、ほしい奴は言い値を書いて俺の前まで出してくれ。後、現金はその場支払でお願いしたい。いささかこちらも早期に金を工面したいからね」
普段は値段を決めて売るのが鉄則だが、時間がない場合や金に困ったときは出来るだけ早く売れるように買い主の意見を尊重するようにして販売するようにしている。言い値で売る利点は速さにあるからだ。アレイスは周囲の男たちの顔を見据えながら背後に待機させている魔物に数匹に目をやった。
それぞれこの辺りでは拝めないCランク以上の魔物であり、この街では結構な値段で売れるとアレイスは踏んでいた。魔物の価値はその街や情勢によって変動するもので、このルバールの街の周囲には魔物が少なく、入手するのに遠出をしなければならない事が重なって通常の場所よりも高額で売れるのだ。しかし早急に物をさばきたいときはその半値で売ることもある。
「Cランク三体で1万ルピー? それにBランク一体を2万2千ルピーで買いたいと?」
「あぁ、これが俺に出せる最高金額だ」
それは男たちに渡した紙に記された最高金額の客の提示額だった。
(おいおい、普通ならCランクだけでも5万はくだらないぞ? それにBランクとなれば10万だ、この辺りだと15万が普通だぞ? いくら金がないからって、この価格で売るのはかなり損失が……)
それは原価の半額以下の提示額だった。通常の状態なら拒否を即答するが、今は金を造り下層区間に出向く必要がある。損を覚悟でアレイスはその提示額に応じることにした。
「いいでしょう。貴方の言い値、受け入れることにします」
アレイスは周囲にいた他の客たちを追い払い、最高金額を提示した男と向かい会ってそう言うと
早速、提示額の取引が行われた。男はアレイスに金貨3枚と、銀貨20枚を手渡し、魔物の前に歩みよる。
「金は払っただ、こいつはもらっていくぜ?」
緑色の髪をした男はそういって、魔物を眺めながらアレイスを見た。
「えぇ、どうぞ。血の契りを交わせばその魔物は貴方のものです。ですが一つ注意していただきたいことがあります」
「なんだ? 人を殺すのはやめろだの、悪用するのはよせだの言うんじゃぁーないだろうな?」
「彼らを何に使うのかそれは貴方がたの自由です。しかし、一つだけ、これだけは守ってください。
彼らの額にある印、それを消すことだけはおやめください。それは彼らを縛る鎖のようなもの、それを消し去れば魔物は狂乱し、人を襲います。それも主である貴方を---ですからそれだけは守ってください」
「おう! わかったぜ、でその血の契りっつぅのはどうやんだ?」
「それは------」