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一章:ラミア盗賊団編 (1)

 

 『エルフの森』そうこの森が言われるようになったのは随分と昔のことになる。遠い祖先たちはエルフたちを敬い、互の種族のために一時は彼らを保護する法を立てたが、その法も長い年月と共に風化し、今では目に見える範囲までの対策しか講じていない。エルフたちはいつしか森のあちこちに罠を貼り、魔物を飼育しては森の守りに徹するようになった。それは彼らなりの防錆作だったのだろう。実際、この森の守りは非常に硬い。魔法によって作り出される霧の結界は人を森の中で迷わせ、視覚を奪う。視覚を奪われた人間はただ、その先にあるエルフたちの作った罠にかかり絶命していくのだ。しかしそんな罠を前にしても人はこの森に引かれ、エルフたちを付け狙う。無論、それらを行うのは盗賊や傭兵たちに限る事だが命を賭けるに値するほどにエルフたちは奴隷に続いて最も金になる存在なのだ。アレイスはそんな彼らの中でも最も人と接する事の少ないであろう存在と一体一で食事の席についていた。

赤色のカーテンが部屋中の壁と言う壁にかかり、無数の文様を描いて並んでいる。それら全てが上質な絹で縫われたもので、アレイスとはトンと縁の無い品々である。少しばかりの息苦しさを感じつつもアレイスは前に座る存在に声を上げた。


「数年前まではビィアにくっついて離れようとしなかった君が、今ではエルフ族の長なんて、信じられない話だ」

 

 テーブルに並ぶ料理をアレイスは口に運ぶと、そう漏らした。


「正確には2年前です。私と貴方が出会ったのは---それにビィアにくついていたのではなく、ビィアが私にくっついていたのです。あの子には困ったものですよ。まだ私を子供扱いするのですから」

 

 席に座る水色の髪をした小さな少女。青瞳と整った容姿、それを飾るようにして白く美しいドレスがよりいっそ少女の美貌を輝かせている。そんな少女を眺めながらアレイスは微笑を浮かべた。


「子供扱い---ね」

 

 どこからどう見ても彼女は子供であり、大人には見えない。


「あ! アレイス様? もしかしてアレイス様も私がまだ子供だとお思いなのですか?」


 険しい表情で少女は机に手を置くと、こちらを眺めながらそう呟いた。

 

「う~ん、どうかな? 見た目はそうだなぁ~子供だし、やっぱり子供だよ」

「ぅぅぅ・・・・・・こう見えて私は19なんですよ! 人間で言えばもう独り立ちできる歳なんですからね! そもそもなんで私の体は・・・・・・」

「あぁーそうだったね。君も可哀想な体質をしているよ。なにせ将来の夫と愛を育まないと幼児期の姿のまま永遠に成長しない体なんだからね」

「うぅぅ! なおのことそちが私の初めてにならぬか? そうすれば私は成長し、立派な大人になれる。アレイスが嫌で無いなら私は・・・・・・」

「おいおい、人間である俺とそんな関係になっていいのか? そもそも何をするのかわかっているのか?ニナ」

「ナニをするか? 愚問だ! 当然知っておるわそのくらい。用はあれじゃろ? 子孫を残すためにやるあの、野蛮な・・・・・・」

 

 少女の姿で何の恥じらいもなくそう続ける彼女にアレイスはとっさに声を上げた。同時に彼女の声はアレイスの声に吹き消される。


「いや、ニナの理解のほどはよ~くわかった。だが、俺は君の提案を却下させてもらうよ。そもそもそんなに安っぽいものでもないだろう? もっと自分は大切にすべきだ」


 ニナは大きなため息を漏らしながらアレイスを眺める。


「うぅぅぅ~やはりこの身が幼いから、私には魅力がないのだな」

「そんなことは無いよ? 君は十分に綺麗だし、魅力もある。俺が言いたいのはただ、心の持ちようって言うか---そうだなぁ~将来の夫となる人はもっと考えて自分の心に従って選ぶべきだと思う。とっさの思いつきやその場の空気で流されるようにして選んではいけない、そう俺は思うんだよ」

 

(恋とかそいうのは俺にはあんまりわからないけど、ただ幸せになるにはやっぱり自分の心に正直にならないとな、そうでないと絶対に幸せなんてつかめる訳が無い。彼女のように特殊な家柄の人はなおさらだ)


 アレイスは胸にそう思いながらも、少女を見つめていた。その視線を少女は一身に受けとめ、わずかばかり小さな笑みを浮かべた。


「そうか、そうだな・・・・・・そなたの言うとおりだ。私は少し急ぎすぎていたようだ。最も、私の心はすでにとある殿方に惹かれているがな」

「へぇー誰だ? その殿方というのは? まさか俺だとか言うなよ。さっき丁重にお断りしたんだからな」

「ばーか、そなたのような流浪の商人などであるものか! 私の将来の夫となる男は---」

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