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一章:ラミア盗賊団編 (0)

「やれやれ……ようやくへばってくれたかな?」

 首をグイグイと鳴らすように回し、地面に気絶して山積みとなったエルフたちの姿を見て

 アレイスはそう漏らした。見るからに外傷らしき物は無く、命に別状は無いように思える。

 それはすべて、こいつのおかげだ。アレイスは隣に座り込む狼のような獣を見てそう胸に

 思うと、獣に片手をあて、喉を鳴らした。

「よーし、そろそろ行こうかな」

「この者たちはどういたしましょうか?」

 獣の問にアレイスは笑みを浮かべながら答えた。

「うーん。君が見張っててくれないかな? もちろん俺がここへ戻るまでだけど」

「御衣に」

 獣はそういって、両手を地面に付けると視線を数人のエルフたちに向けた。

「ではお願いするね。行ってくる」

 アレイスはそう言って硬く閉ざされた門に手を当てた。

 ズッシリとした重みが片腕に伝わる。僅かに手に力を込めるとその扉は

 音を上げながら前へ押し出されるようにして開いた。

 ----

「外の騒ぎは何だ? さっさと報告をよこせ!」

 白色で統一された宮殿の一角でそう声を上げ、無数の列の先頭を歩く一人の女。

 額には青く輝く宝石が煌き、両手両足には軽装の鎧を纏っている。

 彼女、ビィア・ルゥースはエルフ族の戦士

アルバン

の長であり。村の平和と

 秩序を守る役目を受けた上級エルフの一人である。今日はいつも以上に忙しく

 様々な雑務に追われていた。そんな最中、外が騒がしいと報告を受けてビィアは

 すべての雑務を後回しにし、事態の把握に掛かっていた。

「隊長、先ほど外の者から報告が上がりました」

「うむ、早くよこせ」

 ビィアの鋭い声が背後から前に歩み出てきた男に向けられる。

 男はビィアの青い瞳を直視すると、懐から小さな紙を取り出し、ビィアに手渡した。

 それを彼女は眺めながら、頷き、同時に早足になっていた足をピタリと止め、右手を

 額に当てるようにして添えると、

「……これは確かなんだな?」

「はい! 進入者は男、体型は細身でローブを纏い、平然と門を開きそのまま

 村の中へ進入、その後、この宮殿を目指して歩き続けているという事です」

「そうか……ならば、伝令を送れ。その男には私が行くまで手出しするな、っとな」

 その問に男は首を傾げた。

「手出し無用っということですか?」

「あぁー頼んだぞ?」

「了解いたしました」

 男はそういって、駆け馬のように足を加速させ、白色に統一された通路の先へと消えた。

 それからしばらくして、宮殿の玄関口、中央広場にたどり着く。

 そこでは巨大な噴水が中央に置かれ、それを軸に床に彫られた溝から水が流れ

 小川の水の音に似た音が空間に響いている。そんな巨大な噴水の前でフードを纏った

 男が一人、噴水の壁に背を預け鎮座しているのが見えた。同時に男と視線が交わる。

 ++++


「久しいなぁー獣売り」

 澄んだ声が空間に響き、アレイスの耳に入った。

 背後で流れ行く噴水の音色を耳に刻みながらアレイスは前に立つ美しい女に声を上げた。

「やぁービィア。元気だった?」

「あぁーお前が来る前まではな」

 一歩、一歩とこちらに歩み寄ってくる女を見据えてアレイスは一息呼吸する。

 同時に、背中に背負った小さな袋から無数の紙を取り出すと、それを空に放った。

 次の瞬間、揺ら揺らと散り行く葉のように空に舞った紙は青い閃光と共にその姿を消し、

 大量の煙を発生させ、空間を包み込む。

 煙の中でアレイスは地面に座り込み、腰に巻いていた大きな鞄から分厚いファイルを取り出した。

 それを地面に複数並べると煙の先に声をあげる。煙の先では彼女以外のエルフたちの声が複数

 聞こえた。だが、気にすることなくアレイスは喉を鳴らす。

「準備よし、後は……」

 数秒後---空間に荒々しい息遣いが響く。

「スゥゥゥゥ---ハァ------」

「ルゥゥゥゥ---ヌァァァァ---」

「な、なんだ! 何の声だ!」

「隊長! な、何が起こっているんですか!」

「う、うぁーなんか足に当たった!」

「隊長!」

 悲鳴と困惑、そんな声の色を持った叫びが幾度と無く聞こえた、そして次の瞬間、空間の空気が

 重く、冷たく鋭い物に変わった。空気の変動を肌身に感じながらもアレイスは平然と声を上げる。

「んじゃービィア。そろそろ始めよう」

「いいだろう。しかし、使えないような奴を用意していたら私はお前を殺すからな?」

 薄れ行く煙の先からそう鋭い声音が聞こえると、アレイスは半笑いを浮かべ、ため息を漏らした。

 彼女と始めて出会ったのは5年も前の事になるが、あの頃はまだ可愛らしく女らしかったと思う。

 しかし、今ではエルフ族の武装兵、彼女の性格がひん曲がったのは悲しく思うが、今とはなっては

 どうすることもできない。アレイスはそう胸に思いつつも煙が薄れ、消えていく中で彼女の

 顔をジッと見つめて二度目のため息を漏らした。

 

 それから数秒------

 

 突如として発生した煙はどこかへ消え、広く美しい広場の姿がアレイスの視界にくっきりと

 移りこむ。同時にアレイスの左右に巨大な何かが寝息のような声を上げて座り込んでいる。

 それらを見つめ、両手を組みながらビィアは言った。

「今日は4頭か?」

「うん、左から順番にB、A、B、Bのランクだよ」

「相変わらず品はとんでもなく上等のようだな」

「まぁーね」

「お前のような人間がどうやってこのような化物を飼育するのかわからんが、こちらとしては

 ありがたい。買おう。いくらだ?」

「うーん、Bランクが10万ルピーで、Aランクが25万ルピーってとこかな?」 

 赤色の皮膚をした三頭の化物、筋肉が異様に発達し、むき出しとなっており牛のような骨格と

 頭には二本の大きな角が生えている。毛は一切無く、荒々しい息を空間に撒き散らしている。

 そしてもう一頭は牛模様の毛並みをした小さな獣、鋭い牙が口元に生え、四足方向の

 一見、弱弱しく思えるその容姿とは別に素早い足と電撃を口から発生させることの出来る

 極めて珍しい魔物。それらを左右に並べ、大きなファイルを片手にアレイスはそう漏らした。

「いいだろう。買おう」

「まいどー」

「後、いつものようにCランク以下の魔物も見せてくれ。何匹か買いたい」

「そう言うと思ってもうファイルをそこに出しといたよ。何百匹もいるから時間かかるかも

 だけど、まぁー選び終わったら名前と希望額を言ってもらえばすぐにでも売るよ」

「わかった。獣売り、お前は客室で待っていてくれ。部下に案内させる」

「了解ー」

 そういって、彼女は部下に命令し、宮殿内にある客間にアレイスを送った。

 それからしばらくして、Cランク15匹、Dランク30匹の売買が行われた。

 

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