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拝啓、空と世界へ  作者: 鷹利


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7.一嵐過ぎて見つけたもの

「碧乃さん。

 ご自宅はどの辺りになりますか?」

 

「あっ、それなら………ここを真っ直ぐ行った先にあるコンビニ前でお願いします」

 

「かしこまりました」

 

「……」 


「……」

 

孤児院から出て約五分。

リルドさんが話しかけてきてくれるまで車内は無音状態だった。

俺は後部座席で海条と隣同士でありながらも、いまだ気まずい雰囲気が抜けず気が気じゃなかった。

 

『どうしよう…。

 何か話すことがあれば……』

 

「ここでよろしいですか?」

 

「…へ?」

 

気が付くと既に目的地に着いていた。

車が速かったのか俺が惚けすぎていたのか、一気に現実に引き戻された頃には到着地点であるコンビニが見えていた。

 

「あっ…はい。

 ここで十分です」

 

車が止まってからドアに手をかけようとした直後、ドアが自動的に開いた。

 

『おぉ、これはタクシーでよくある自動開閉ドア………じゃなくてッ!!』


やけくそ気味に俺は腹の底から声を出した。 

 

「か…海条さん…!」


「あ…碧乃君…!」

 

俺が降りようと思った瞬間、思わず彼女の名前を呼ぶと海条もまた先ほどと同じタイミングで俺を呼んでいた。

 

「あ……えっと……」

 

そしてお互いに顔を逸らす。

その様子にリルドさんは愉快そうに微笑んだ。

 

「うふふ…。

 お二人は本当に仲良しさんですね。

 少しだけ、妬いてしまいます」 

 

その発言にめちゃくちゃ恥ずかしくなるも、俺は海条に振り返る。

 

「……じゃ……じゃあな海条さん。

 明日……また学校で……」

 

その言葉で我に返ると、海条は少し寂しげな面持ちになりながらも笑顔で返してくれた。

 

「うん……今日はありがと。

 ……ばいばい」

 

そして小さく手を振るのを確認してから俺は車から降りた。

ドアが自動的に閉まると車がゆっくりと動き出し、あっという間に遠くなっていった。

 

「……」

 

俺は車が見えなくなるまで見つめ続けていた。

……気のせいだろうか。

走り去る車の中で、海条が手を振っていた気がした。

 

「………帰るか…」

 

 


 

 

  

 

 

 

 

 

 

碧乃君が降りてから、一気に全身の力が抜けた気がした。

 

「お見送りご苦労さま。

 帰ったら甘いカフェオレでも作りますね」

 

「…ありがとうございます」

 

ふいに自分の手を見る。

宙にかざした手は不自然に震え、いかに自分が強ばってたのか見せつけた。

 

「…初めての碧乃さんのご訪問はいかがでした?」

 

「…ふぇッ!?///」

 

「碧乃」という言葉に敏感になってたのか、思わず私は変な声をあげてしまった。


「………すごくびっくりして、すごく緊張した…。

 あんまりお話も出来なかった…です…」

 

「そうですか…」

 

その感想に何かを察したのか、リルドさんは黙り込んでしまった。

 

「……けど……」

 

「…?」

 

さっきまではすごく緊張して、碧乃君といる間は不思議と動悸が激しくなって何も考えられなかった。

でも……いなくなって落ち着いた今だからはっきり分かった。

 

「……すごく楽しい時間でした。

 紫ちゃんといる時間も好きですけど…碧乃君といるときは……なんか……胸がきゅってなって……言葉にしづらいけど……すごく暖かな気分でした…」

 

ルームミラー越しに私を見ていたリルドさんが少しだけ目を見開く。

そしてすぐに微笑んだ。

 

「…帰ったら、お夕飯と何か……甘いデザートを作らないといけませんね」

 

「じゃあ、私も手伝うんでホットケーキ食べたいです!」

 

「では、小麦粉を切らしていたのでまたお買い物に行きましょう」

 

「…はいっ!」

 

そして私とリルドさんを乗せた車はエンジンを吹かせ、近所のスーパーへと走っていった。

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「これ、クラスメイトの子の保護s………お、お母さんからクッキー食べてってもらってきた!」

 

「あらぁ。

 美味しそうじゃない」

 

袋を開けると、色んな模様のクッキーが入っていた。

 

『さすがリルドさん…。

 きっと飯も美味しいんだろうなぁ…。

 てか、海条の家が孤児院ってなんか言いづらいな……』

 

そう思慮している間に、母さんはクッキーを一枚食べていた。

 

「……美味しい。

 お砂糖の加減もちょうどいい。

 燈、あんたも食べなさい」

 

「はいはい」

 

そんなことよりも海条の家に行けたことと、まともに話せたことですごくお腹いっぱいだった。

その日は、いつも以上に心も体も満たされた一日だった。

 

『明日も海条の笑顔……見れるかな……』

 

すっげー普通なことなのかもだけど……他人の笑顔があんなに嬉しいと思えたのは、初めてだったかもしれない。 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は夜の十時。

俺は寝る前にマンガを読み更けていた。

 

『俺は君の笑顔を守りたい!

 君が笑ってくれるなら、世界中を敵に回してでも君を守ってみせる!』

 

マンガの主人公が臆面なくヒロインに向かってそう叫ぶシーン。

そんな異世界でお姫様の笑顔のために戦うヒーローマンガをクッキーをつまみながら読んでいた。

 

『マンガだから言えることだけど、リアルだったらめちゃくちゃ痛いセリフだよなぁ』

 

とは思いつつも、俺の脳内では普段、小野々儀と楽しげに話す海条をイメージしていた。

 

「………」 

 

パンっとマンガを閉じ、俺は電気を消してベッドに潜り込んだ。

 

『俺は……傍で眺められればいいかな…』

 

そんな片思い(?)的な思想を浮かべつつ、俺は明日の学校に備えて寝ることにした。

 

 

 

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