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拝啓、空と世界へ  作者: 鷹利


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Ext.2 我が家の日常(後)

『……しゃん…!

 …おとーしゃん…!』

 

「んぅ………ッ!?」

 

突然、誰かに呼ばれた気がして目を覚ますと、隣で知子が俺を眺めていた。

 

「おとーしゃん、おねむ…?」

 

「あ……寝過ごした…。

 今何時だ…?」

 

「いちじー!」

 

キンキンと響く愛娘の声にようやく意識が覚醒し身体を起こす。

 

「もう学校は終わったのか?」

 

「うん!

 おべんきょーしてごはんたべないでかえれたの!」

 

「そっか。

 …冷蔵庫にプリンあるから食べたかったら食っていいぞ」

 

「プリン!?

 たべりゅーー!」

 

「ぴゅー」という擬音が似合いすぎるほど知子は冷蔵庫に飛んでいった。

 

「……やべっ、洗濯物干しっぱなしの放置しっぱなしだ!」

 

洗面所に急ぎ洗濯機の中で固まっていた洗濯物を回収し、慌てて俺はベランダに干しに行く。

 

「おとーしゃんどーしたの?」

 

「洗濯物乾かすの忘れてたんだよ。

 知子は気にせずプリン食べい」

 

「んー……。

 …知子もおてつだいするー!」

 

「えっ……いいよ。

 知子は学校で頑張ったんだからプリン食べてていいんだよ」

 

「んーん!

 知子がおとーしゃんのおてつだいしたいの!」

 

「そっか。

 じゃあ乾いた洗濯物をたたんでくれるか?」

 

「わかた!」

 

取り込んだ洗濯物をカゴに入れ、知子がそれをフラフラとおぼつきながらも持っていく。

 

「助かるよ知子。

 今日は知子の好きなハンバーグを作ってやろうかな」

 

我ながら甘やかしすぎな気もするも、褒めるとこは十二分に褒めるのがうちのやり方であるゆえ変えるつもりは無い。

 俺はテキパキと洗い縮みした洗濯物を延ばしつつ、新たに物干し竿にぶら下げていく。

 

「…よし」

 

ようやく終わり知子の様子を見に行く。

 

「ちゃんとたためてるか…?

 …おっ、よく出来てるじゃん!」

 

知子が畳んだ服はちゃんと袖を内側に折り、綺麗に積まれていた。

 

「すごいでしょー。

 おかーしゃんにおしえてもらったの(*`・ω・´)」

 

「そうか。

 これだけ綺麗に出来れば、知子も立派なお嫁さんになれるな」

 

「ほんとっ!?

 じゃあ、おとーしゃんのおよめしゃんになるー!」

 

「あはは…。

 お父さんにはお母さんがいるからダメだよ。

 知子も大人になればきっと好きな男の子が出来るよ」

 

「むぅー…。

 ……じゃあ、おとーしゃんのあいじん(?)になる!」

 

「……ちっ……知子…。

 今…なんて言った…?」

 

まさかとは思うが、うちの娘に限ってそんな事を言うはずがない。

きっと俺の聞き違i…

 

「んとねー、おとーしゃんのあいじん(?)になるの!

 ふりんかんけー(?)になれば、知子もおかーしゃんもしゅきになってもらえるから!」 


「……あー…そういう事な…」

 

意味は理解出来た。

知子はどうも「愛人」や「不倫関係」の意味を履き違えてるようだった。

一体どこで覚えてくるものなのか…。

 

「おわった!」

 

気がつくと、知子の畳んでいた服は全て綺麗に積まれていた。

 

「おぉ、全部綺麗にたためたな。

 …出来ればみんなの着る服を分別して乗せられたら花丸だな」

 

知子の畳んだ服は全て綺麗に積まれたものの、夏怜や璃杏たちの服を一色単に積んでしまっていた 。

これではみんなのタンスに服を戻す時に手間がかかってしまう。

 

「うぅー…。

 知子、まだまだおよめさんなれない…?」

 

涙目で知子は聞くも、世の中には服すらろくに服を畳めない女など腐る数いる。

 

「もう少し頑張れ。

 知子は頑張り屋さんなんだから、もっと努力すれば良いお嫁さんになれるよ。

 お父さんが保証しよう(ドヤッ)」

 

「ほんとっ!?

 おとーしゃんだいしゅきー!」

 

「はいはい。

 早くプリン食べないとぬるくなっちまうぞ」

 

抱きつく知子の頭をなでていると、玄関のドアが開かれる音が聞こえてきた。 

 

「…ただいま」

 

帰ってきたのは長女の夏怜だった。 

 

「おかえりなさいおねーちゃん!」 

 

「おかえり夏怜。

 早かったな」

 

セーラー服をソファーに脱ぎ捨てながら夏怜は受け答える。 

 

「今日は午前授業で終わった。

 特に用事もなかったから帰ることにした」


洗面所に置いてあったスウェットに着替えて夏怜は戻ってきた。

ちなみに夏怜は平気で俺や強乃の前で着替えをする事に恥じらいを持たない。

正直、男として色々困る。 

  

「友達と遊ぶとかなかったのかよ。

 璃杏と強乃は遊びに行ってくるって言ってたぞ」

 

「私は別に遊ぶ友達なんていらない。

 遊ぶ暇があるなら勉強に費やした方が有意義だから」

 

僅かなトゲのある夏怜の呟きに知子は俺の後ろに隠れて少しだけ怯えていた。

ある意味この二人は対象的だもんな。

 

「そんな事言うなよ。

 友達と仲良くすることだって大事だぞ?」

 

「……何故?」

 

あまりに純粋なまでの疑問に思わず俺でさえたじろいでしまった。

 夏怜は成績・態度こそ優等生であるものの、世間一般の常識や他人との関わりが苦手なのだ。

いわゆる「コミュ障」というやつか。

 

「それはだな……まぁとりあえず座れよ」

 

無言で俺と知子の対面側に夏怜は座る。

 

「……普通に座れよ」

 

「あら失礼」

 

何故かソファーに正座で座る夏怜を軽く粛清し、俺は続けた。 

 

「いいか夏怜。

 お前はうちの家族の中でも飛び抜けて頭がいい。

 中学でも先生から文句のない、優秀な生徒だとも褒められた。

 だがな…無理にでもとは言えないが、友達が居た方がより学校生活も楽しくなるし、向上心の発達にもなるんだぞ。

 勉強に時間を費やそうとするお前の考えは大したものだが、せめて仲の良い友達の一人くらい居た方が見方も変わると思うぞ?」

 

「……」

 

夏怜は何も答えない。

ただ真摯に俺の言葉を一言一句聞き逃さんと言わんばかりに見つめていた。

知子は隣で足をパタつかせながら美味しそうにプリンをほおばっていた。

 

「別に友達百人作れとは言わない。

 無理に作れとも言わない。

 お前のことだ、一人居れば十分だろうからな。

 …ならさ、せっかく始まったばかりの高校生活で「本当に大切にしたい」と思える友達を見つけてみろ。

 夏怜は人を見る目があることを俺は知ってる。

 だから、お前の選んだ子ならきっと末永く仲良く出来ると父さんは信じてるからな」

 

夏怜は黙って話を聞き、俺が言葉を切ったのを確認してから口を開いた。

 

「…それは命令?」

 

実に夏怜らしい返しだ。

普通の親ならブチ切れるセリフだろうな。

 

「いや、俺からの宿題だ。

 期日は……高校卒業までにな」

 

「………分かった」

 

ようやく俺から目線を外し夏怜は承諾した。

 

「…プリン食べるか?」

 

俺の一言に夏怜はプリンを美味しそうに頬張る知子を見る。

 

「……父さんの手作りプリンなら食べる」

 

「あはは……参ったな…。

 プリンは作ったことないからなぁ…」

 

そう。

夏怜は食べ物……特にアイスクリームや果物以外のデザートに関しては、ほとんど市販の物を好んで食べることはない。

 半年くらい前に興味本位で作った杏仁豆腐を夏怜に食べさせたところ、どうもそこから俺の手作りデザートにハマってしまったらしい。

 

「おとーしゃんのてづくりプリン!?

 知子もたべたーい!」

 

「…まぁ今どき手づくりキットもあるしな。

 今度作ってみるよ…」

 

「やったーーー!(( 'ω' 三 'ω' ))♪」

 

元気いっぱいに喜ぶ知子に比べ、夏怜は目尻を下げていた。

夏怜は物事を了承したり安心したりすると目線を逸らす癖がある。

きっと表情には出ずとも喜んでくれてるに違いない。

そんな夏怜の頭を俺はわしゃわしゃとなでる。

 

「…んっ……何…?」

 

俺の手が離れてから夏怜は俺を見つめる。

その様はまるで猫のようだった。

 

「そういやご近所からもらったさくらんぼもあるんだが……それなら食べるか?」

 

夏怜は目線を逸らし、静かに口を開く。

 

「………食べる」 


 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

夕方、買い物から戻った俺は晩飯の準備に取り掛かっていた。

 

「さて、今日はハンバーグカレーにしようかな」

 

エプロンを身につけ気合を入れる。

 

「おとーしゃん!

 知子もてつだうのー!」

 

同じようにエプロンを身につけ袖まくりをした知子が来てくれた。

 ちなみに夏怜は部屋で勉強の最中である。 

 

「おっ、そうか。

 じゃあ手を洗ってからそこの棚にいつも使ってるナイフ入ってるから、まずは玉ねぎの皮を剥いてくれるか?」

 

「うん!

 知子やるの!」

 

ハンドソープで手を洗った知子は棚を漁り、いつも手伝う時に使うセラミックナイフを出す。

これならば手を切る心配もない。

 

「これどーやってむくの?」

 

「んとなぁ……まずは茶色の表面の皮に切れ込みを入れて剥いて、上のとんがってる部分とわしゃわしゃしてるお尻を切って、それから内側の茶色くなってる部分を手で剥くんだよ。」

 

「わかった!

 やってみる!」

 

言われた通りに表面の茶色の皮を手で剥き、上下のヘタを少し危なっかしくも切り落とす。

 

「で、内側の皮を剥く時は、こうしてちょっと切れ込みを入れれば剥きやすくなるよ」

 

知子の後ろから二人羽織の形で知子の手で実演させる。

こういう教え方が一番分かりやすいだろうからな。

 

「えへへー、おとーしゃんとくっつくのしゅきー♪」

 

「ありがと。

 知子も自分でやってみ」

 

「わかった!(*`・ω・´)」

 

俺が離れてから知子は真剣な表情でナイフを入れ、内側の皮を剥いていく。

 

「あはは、ずるむけー♪」

 

ペリペリと剥がすのが楽しくなってきたのか、知子は皮を剥がすだけで楽しそうにしていた。

 

「遊ぶんじゃないぞ?」

 

「うん♪」

 

知子の様子を見守りつつ、俺は人参のヘタを切りピーラーで皮を剥く。

 

「つぎはどーすればーいのー?」

 

「おっ、綺麗に剥いたな。

 そしたら今度は玉ねぎを縦にして半分こに切って……こういう風にみじん切りにしてくれるか?」

   

「わかった!

 やったことあるから出来る!」

 

途中から口で説明するよりも見せた方が早いと思った俺はみじん切りのやり方を見せるも、知っているらしい知子は玉ねぎを同じように切り始めた。

本当に分かってることもあってか、今度は極端に早く進んでいた。

 

「ふえぇぇぇ…。

 玉ねぎさんきるとないちゃうよぉ…(´;ω;`)」 

 

「我慢せい。

 目がしみるのは玉ねぎを切った時に汁が飛んでて目に入ってるからだよ」

 

「ふぐぅ…(泣)

 玉ねぎさん、かなしんでるかと思ってたぁ…」

 

『志半ばに死んだ人間みたいな言い方すんなよ…』

 

なんて突っ込みたかったが、まだ小学生の知子には早いと思った俺はぐっと飲み込んだ。    

その間に俺はカレー用の人参を切る。

  

「知子もにんじんさんきるー!」

 

「んー……人参は固いから知子にはまだ無理かな」

 

「むぅー…」

 

不満そうに唸る知子の玉ねぎは既に細やかに切り刻まれていた。

 

「知子、ほかにおてつだいできることある?」

 

「んー…。

 じゃあ挽き肉とさっきみじん切りにした玉ねぎをボウルに入れてぐちゃぐちゃと混ぜてくれるか?

 全体的に馴染んだらキャッチボールするみたいに両手で投げ合って空気を抜くんよ」

 

「わかった!

 ペんペんってするやつだね!」

 

そう言って知子は冷蔵庫から出してきた挽き肉とみじん切りの玉ねぎをボウルに入れて混ぜる。

俺はカレー用の玉ねぎを別に切っていた。

 

「うゆっ?

 玉ねぎさん、またきるの?」

 

「これはカレー用のだよ。

 知子のはハンバーグ用に切らせたんだよ。

 今日はハンバーグカレーにすっからな」 

 

「にゃっ!?

 はんばーぐ!(( 'ω' 三 'ω' ))」 


今まで自分が何を作らされてたのか分からなかった様子の知子はハンバーグと聞いて急にハイテンションになった。

 

「ある程度こねたら……こんくらいにネタをとって形作りながらペんペんするんよ」

 

「ふぁーい!」 

 

その後、知子はハンバーグの生地作りに生命を賭けてると言わんばかりに静かになった。  

これで少し集中的に進められるな。

…ここからはいつも通りの孤軍奮闘。

残りの豚肉やじゃがいも、人参をカレー用に刻んでいく。

 

「…いい感じだな」

 

片手鍋に人参を湯がくためのお湯を沸騰させていると、生地作りを終えた知子が声をかけてきた。

  

「できたっ!」

 

「…一個多く出来ちったか。

 まぁ余ったのは知子が食べていいよ。

 …こっちはもう大丈夫だから知子はお風呂入っておいで。

 お湯出るから風呂にお湯入れながら先にシャワー浴びるといいよ」

 

「ハ━━━ヾ(。´囗`)ノ━━━イ」

 

知子を風呂に行かせ、人参を湯がいている間に他の具材を深鍋で炒め、タイミングを見計らって芯が抜けた人参も参戦させる。

それからは普通のカレー作りと同じく水を入れてアク抜きをしていく。

 

『…もう六時か…』

 

時刻は夜の六時を過ぎたところ。

璃杏と強乃から返事はなく、夏怜も部屋に篭ってから既に二時間は経っている。

勉強や遊びに頑張っている彼女らのため、俺は徹底的にカレー作りに集中した。

 

「……いけね、飯炊き忘れてた」

 

前言撤回。

急ぎ俺はアク抜きの間に米とぎに集中した。

 

『超集中、壱の技………「炊飯」ッ!』

 

二十年も前に社会現象を巻き起こした某アニメのセリフを思い出していると、少しだけ時代の風潮を感じた気がした。

 そんなくだらないことを思い出しつつアク抜きが終わった鍋に市販のカレールーを入れていく。

ちなみにうちのこだわりは、カレールーは中辛と甘口を半々に入れることにある。

そうすることで辛いのが苦手な知子でも美味しく食べられ、刺激好きな強乃も程よく満足してくれるからだ。

焦がさないようにおたまで撹拌していると、璃杏と強乃が帰ってきた。

  

「ただいまー」

 

「ただいまですわ」

 

「おかえり。

 今日はカレーだよ」

 

「だろうな」

 

「それくらい私にも分かりましてよ?」

 

「…なんで(´・ω・`)?」

 

二人は顔を見合わせて答える。

 

「だって……美味そうなカレーの匂いがしてきたからな」

「だって……美味しそうなカレーの匂いがしたからですわ」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、母さんが帰ってきた頃にカレーも出来上がった。

それからすぐに知子のこねてくれたハンバーグを焼いていく。 

 

「ちょっと強乃!

 お皿が一枚足りませんわよ!」

 

「んだようるせぇな。

 足りないなら俺に言うより璃杏が持ってこいよ」

 

「まぁ!

 それがレディに対しての発言でして!?」

 

「あーもう、二人とももう少し仲良く出来んのかよ」

 

なんつーか……ほんと璃杏と強乃って仲が良いのか悪いのか分からん…。

 

「知子もおてつだいするー!」

 

「ん?

 じゃあみんなの分のサラダをお皿に盛り付けて持って行ってくれるか?」

 

「うん!

 知子やるの!」

 

喧嘩する二人をよそに知子はテキパキと働いてくれていた。

一方、夏怜はと言うと……。

 

「…でね、仕事終わりかけだったのに急に店長から「残業頼めないか?」なんて言われてね。

 それから一時間働き詰めよ…」

 

「そう。

 大変だったのね」

 

母さんのカウンセリングをしていた。

普段はかけない黒縁丸メガネにどこから持ってきたのか白衣まで着ていた。

 

『まぁ……あえて何も突っ込まないでおこう』

 

本人たちはあれで良いみたいだし。

とは思いつつも、その雰囲気はすぐにぶち壊された。

  

「サラダもってきたのー!」

 

「あら、ありがとう知子。

 テーブルの真ん中に置いていって」

 

「ハ━━━ヾ(。´囗`)ノ━━━イ」

 

ゴトゴトとせわしなく皿を置く知子を母さんは微笑ましそうに見つめる。

 

「…今日はここまでね。

 ありがとう夏怜」

 

「別にいい。

 私が好きで付き合ってるだけだから」

 

「そんな事ないよ。

 夏怜のカウンセリングのおかげで、お母さんだいぶ気が楽になれてるんだから」

 

そう言ってくしゃくしゃと頭をなでる。

夏怜は黙っているもどこか嬉しそうだった。

その様子を見てか、強乃と璃杏はいつの間にか喧嘩をやめていた。

 

「…いつまでも喧嘩していても解決にはなりませんわね」

 

「そうだな…。

 なんか、悪かったな…」

 

「いえ、私も少々大人げない部分がありましたわ。

 私からもお詫び申し上げますわ…」

 

少しげんなりしながら二人は謝罪し合う。

こういう所がこの二人の良いとこというか、いつもの事と言うか…。

 

「二人とも。

 仲直りしたなら早くカレー持って行ってくれよ。

 もう全員分のごはん詰めたんだから」

 

「なっ…!

 それならもっと早く言ってくれよ」

 

「全くですわ。

 私たちなんかを待ってたらご飯が冷めてしまいますわ!」

 

……なんで俺が怒られてるんだろうか。

 

「ごほんっ…!

 とりあえずカレー入れるから二人で持っていけ。

 先に強乃からな」

 

「りょーかい」

 

手際よくカレールーを詰め、二人に配膳させる。

一応、知子のカレー皿にだけハンバーグを一緒にしておいた。

 

「ふおぉぉぉ!

 おいしそー!」

 

自分の前に出されたハンバーグカレーに知子はテンション爆アゲになっていた。  

これで夕食の準備は出来た。

 

「牛乳飲む奴いるかー?」


「いただきますわ」

 

「俺も飲むかな」

 

牛乳嫌いの知子と基本的に乳製品を嫌う傾向のある夏怜からは返事がなかった。

 

「知子、牛乳は?」

 

「……ひゅー、ひゅー…」


わかりやすい程に末っ子から目を背けられました。

ていうか口笛吹けてねぇぞ。

 

「知子、牛乳飲まんと立派なレディになれんぞ」

 

「うぅー…。

 知子、ぎゅーにゅーにがてなの…」

 

「それはいけませんわよ知子!」

 

状況を見かねてか、璃杏が俺に加勢(?)してきた。

 

「いいですこと?

 牛乳を飲まなければ、怪我をしやすくなったりお肌が荒れやすくなったりなど、一人前のレディから遠ざかってしまいますわ。

 純情な乙女たるもの…強く美しく、そして男なんかにすがってはいけませんのですわ!」

 

「し……ししょぉー…!」

 

本当にどっからそんな言葉を覚えてくるものなのか…。

てか純情て(笑)。

  

「諭してくれるのは助かるが、あまり面倒な刷り込みはしないでくれよ璃杏。

 せめて知子には「純情」でなく「純粋」に育ってほしいんだから」

 

「そんな……お父さまは本当に失礼極まりないですわね。

 私だって極めて純粋かつ、花も恥じらう乙女でありましてよ?」

 

「失礼・下品でけっこうだ。

 てか、令和っ子の口からそんな言葉を聞くとは思いもよらなかったぞい」


不満げに璃杏が牛乳を持って行ってから俺はもう一枚の皿にカレーを盛る。

お盆にカレーとハンバーグ、牛乳・水を乗せて海麗の部屋の前に持っていく。

 

「海麗。

 カレー置いていくからあとででも食べろよ」

 

返事を待たずして俺は置いてあった空の食器を持ってみんなの元へ戻る。

全員が食卓に着き、最後に俺が座る。

 

「…では皆さん、お手合わせ願います」

 

「父さん、それじゃ私たちと戦う意味になってる」

 

「あ、まじ?(笑)」

 

夏怜のナイスツッコミにみんながクスクスと笑う。

 

「ゲフンゲフン、気を取り直して……。

 …皆さん、今日は各自お疲れさまでした。

 これから先、色々と大変な事もたくさん出てくるでしょうが、そういった時は一人で抱え込まず、誰かに相談することを忘れないでください。

 …では、いただきます」

 

『いただきます!』

 

食事前の挨拶を交わし子供たちはカレーとハンバーグに食らいつく。

 

「んー、んめぇ!

 久しぶりのカレーってのもあるんだろうが、やっぱ父さんのカレーはうめぇな!

 おまけにハンバーグは最強コンビすぎるッ!」

 

「そうですわね。

 上品な香りとコクのある風味……薄らと漂う辛みの中に甘さがあって美味ですわ…!

 ハンバーグも油っこくなくて良きですわ」

 

「そりゃよかった。

 お代わりまだあるから、食べたかったら自分で好きな分盛りにいけよ。

 ただし、譲り合いはちゃんとしろよ」

 

食べ盛りの璃杏と強乃はみるみるうちにカレーとハンバーグを平らげていく。

強乃はともかく、璃杏もまたこんなに食欲を見せるとは思わなかったな。

 

「ハンバーグカレーおいひー♪」

 

「おっ、知子も食べたかったら遠慮せずお代わりしろよ?

 ただし知子が食べられると思う分だぞ?」 

 

「わかった!

 ……あちゅっ!」

 

「ほら……ちゃんと冷まして食べなさい。

 ご飯は逃げないからな」

 

「と言いつつ、お代わりー♪」

 

「あっ、強乃!

 レディを差し置いて先にお代わりとは不躾ですわよ!」

 

「二人とも、お代わりはいいが知子の分も残しとけよ」

 

「分かってるって!」 

 

とは言いながらも、強乃の盛っている白飯はもはや大盛りを通り越して……てんこ盛りとなっていた。

 

『ご飯、五合も炊いたんだが……間に合うかな…』

 

そんな不安を気にしていると、夏怜から声をかけられた。

 

「…父さん」

 

「ん?

 どうした夏怜?」

 

「…カレー食べてない。

 食欲ないの?」

 

「…あぁ、そんな事ないぞ!

 ちょっと璃杏と強乃の食べ盛りっぷりに気圧されてただけだよ」

 

「…そう。

 ならいい」

 

そして夏怜はパクッと一口カレーを頬張る。

ちなみに夏怜は本人の希望で肉はなるべく避けたいそうでカレーのみである。

  

「美味いか?」

 

「…美味しい」

 

「そっか。

 そりゃよかった」

 

夏怜は食事に関しても素直である故、不味いとは言わぬとも、あーした方がいい、こーした方がいいとアドバイスをしてくれる。

それがないということは、本当に美味しいと思ってくれたのだろう。

 

「夏怜も食べたかったらお代わりしろよ」

 

「いい。

 元からそんなに食べられる体質じゃない」

 

「そうだったな。

 まぁ夏怜はゆっくり食べるといいよ。

 …周りは合戦状態になってるがな」

 

「そうね」

 

夏怜は食べ方も綺麗だ。

基本的には食べるスピードこそ遅いものの、その分綺麗に食べてくれる。

茶碗の米粒だって残さず食べてくれるから、洗う身としては助かっている。

…何故か朝だけは早いが。 

 

「あっ…。

 母さんも美味いか?」

 

夏怜たちに気を取られて忘れていたが、母さんにも感想を聞かねば。

 

「うん!

 今日も少し疲れて食欲なかったけど、これなら全部食べれそう」


「そっか」

 

母さんもまた笑顔でカレーをほおばっていた。

その様子になんだか俺まで嬉しくなってしまった。

 

「知子もおかわりー!」

 

「では、私がご飯を盛ってさしあげますわ」

 

「ほんとっ!?

 じゃあ……こんくらいっ!」

 

「…よく分かりませんが、とりあえずこれくらいかしら?」

 

両手で抽象的な楕円形を作るも、それでは誰だって分かるわけないな。

 

『だけど……幸せな食卓だな…』

 

一人、心の中でそう呟く。

これは運命によるものではなく……俺の努力によって手に入れた幸せなんだと改めて自覚し、俺はカレーをたいらげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ごちそうさま!』

  

暖かな食卓に、満腹を告げる挨拶が響いた。


 













時刻は夜の二十四時。

就寝時間を過ぎた夏怜たちは部屋で眠っている。

一方で俺は母さんと二人の時間を楽しんでいた。

ちなみに現在、母さんは俺の膝で寝そべっている。

 

「今日もご苦労さま。

 チューハイかなんか飲むか?」

 

「ううん。

 このままでいいよ」

 

テレビも付いていない無音の中、母さんはずりずりと俺の膝で甘えていた。

 

「ねぇ……頭なでて…?」

 

「…しょうがないなぁ」

 

お互いもう四十代前半だというのに、ほんとバカップルだと自分でも思う。

 

「えへへー、燈のなでなですきぃー♪」

 

「ほんとお前のそういう所は変わらないな」

 

「むー。

 何よその私がいつまでも子供みたいな言い方は」

 

「あはは。

 ごめんごめん、別に悪い意味じゃないんだよ」

 

頭をなでつつもう片方の手で母さんの喉をなでる。

 

「んー……くしゅぐったっ♪」

 

母さんは猫のような猫なで声で甘えてくる。


「なぁ………「世界」」

 

「……なぁに「空」」

 

手を止めて俺は母さん………「祈世樹」の目を見つめる。

 

「俺さ………あの頃からずっと君への気持ちは変わってないよ…」

 

そんな俺の言葉に、祈世樹は昔よりも大人びた笑顔で微笑む。

 

「…私もよ。

 ……愛してる…」

 

ゆっくりと起き上がり、祈世樹は俺のほっぺにキスをする。

それに答えるように俺は彼女をソファーに押し倒した。 


「にゃっ……ここだと…誰か起きてきたらッ…///」

 

「大丈夫。

 平気だよ」

 

そして俺は彼女の口を塞ぐようにキスをした。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※この後やたらセック○した(笑)。

 

 

 

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