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拝啓、空と世界へ  作者: 鷹利


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3.ラノベと手紙ときっかけ

海条祈世樹(かいじょう きせき)

身長155センチ(俺で166だから多分そんくらい)、黒髪ショートボブに赤渕メガネという地味メガネモブキャラを絵に書いたような容姿で、普段は一人で本を読んだり委員の仕事か何かの事務作業を行ってたり。

友達は小野々儀紫くらいで、他の奴とはほとんど事務的なことや頼み事で話すぐらい。

…なんとも不思議な少女である。 

 入学式から二ヶ月が経った六月になるも、彼女との間に特に変わったことはなかった。

俺はというと、ロッカーに貯めといたラノベを巻数順に並べ置いていつでも読めるように「マイ本棚」を作るほど平和ボケしていた。

そんなある時、突然それは起きた。

 

「……およ?」

 

読んでいないシリーズの本の巻数が足りなくなっていた。

誰か勝手に借りていったのか、それともイタズラに隠したのか。

だがその疑心はすぐに晴れた。

 パクられたと思っていた本は一週間ほどで返ってきてくれた。

そしてすぐに次巻がなくなる。


『読むのはかまわんが、せめて許可ぐらい取って欲しいところだ』

 

しかも本の返却は何故か俺の下駄箱だった。

本に傷はないため嫌がらせではなさそう。


『でも借りてるやつの正体が気になるのもたしかだし…』

 

そこで俺はその正体を暴くべく、次に借りるであろうラノベに手紙を挟むことにした。

内容は……まぁ、貴方のことを知りたいので返事ください程度のこと。

きっと相手も直接声をかけるのはキツかったから、こうして無許可で借りてるに違いない。

 やがて手紙の挟まれた本がなくなった。

さて、返事はどうだろうな…。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 











しばらくしてようやく本が返ってきた。

借りられてから二週間後の放課後のこと。 

 

「………あった…」

 

本の見開きに俺が挟んだのとは全く違う手紙が入っていた。

それも……封筒付きのご丁寧なもので。

 

「………」

 

なんか、意外に緊張した。

恐る恐る封筒を開け、手紙を開封する。

 

「………おぅふ…」

 

手紙には、丸く小さな薄字で文章が綴られていた。


『間違いない………女子の字だッッ‼!』

 

下駄箱に女の子からの手紙というギャルゲ的定番シチュにテンションの上がりすぎで若干サイコパスになりつつ、周りに誰も居ないことを確認して手紙を読んだ。

 

 


 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

『拝啓 碧乃様

  

まずはこの様な不躾なお返事の仕方をお許しください。

それと、無断で本の貸し借りをさせていただいていたこともご容赦ください。

 私は小さい頃から人見知り気が強く、人と話すのが苦手でした。

 ですが、あなたがアニメ好きだと聞いて少し興味が湧きました。

 実は私もアニメが好きです。

 もし貴方がよろしければ、色々とお話ししてみたいです。

 お返事、待ってます』

 


 

 

 


 

 

 

 

 

 

  

 

「マジ…かよ……」

 

俺は少しの間その場に立ち尽くしていた。

……碧乃燈、十六年生きてきて、初めての女の子からの手紙に戸惑っています。

内容からしてクラスメイトの同じアニヲタ女子ということは分かった。 

 だが、俺は決定的な事に気が付いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ………差出人の名前書いてねぇじゃん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








 

翌日、手紙の主の正体が気になって仕方なかった俺は、ろくに睡眠も取れていない状態で学校に向かっていた。

朝飯もまともに喉を通らず、牛乳一杯を飲むのでやっとだった。

もちろん腹は減っているが、昨日の手紙の事で頭がいっぱいいっぱいになっていた。

ふらつきながら教室に入ると、先に来ていた坂口は他の男子と与太話をしていた。

 

「おっ、やっと来たか……って…どうしたんだよ?

 顔色悪いぞ?」

 

「あ……あぁ…。

 少し……寝不足でな…」

 

「マジかよ。

 …とりあえず保健室行けよ。

 先生には俺から伝えとくから」

 

「そうだな…。

 そうさせてもらうよ…」

 

たかが寝不足とはいえ、授業に支障が出ても困る(真面目に受けてるとは言っていない)。

他の男子が俺を笑う声にわずかに苛立ちつつ、俺は坂口の言う通りに保健室へと向かうことにした。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

  








心なしか歩いていたら意識がはっきりしてきた。

二階から一階に降り、保健室前に辿り着きドアをノックする。

 

『どうぞ』

 

中からよく響くハスキーボイスが在住を告げた。

 

「…失礼します」

 

保健室に入ると、養護教諭の日高美春(ひだか みはる)がいた。

 

「今日はどうしたの?」

 

「…寝不足で具合が悪いので、少しだけここで寝かせていただければと…」

 

「なるほど。

 君、名前は?」

 

「一年一組の碧乃燈です」

 

「ふむ…。

 一組の先生は芹澤先生だね。

 先生には連絡したの?」

 

「いえ。

 まだ居なかったので…」

 

「分かった。

 じゃあ芹澤先生には私から伝えておくから、貴方は奥のベッドで寝ていなさい」

 

「はい。

 ありがとうございます」

 

そういって俺はカーテンをひいてベッドに腰を降ろす。

少し硬めのベッドではあるが、横になるとだいぶ気が楽になった。

 

『知らない天井だ…』

 

どこかのアニメで聞いたようなセリフを頭の中で呟く。

ベッドに潜り込むと、うとうとと眠気がさしてきた。

…それから何分経ってからだろうか。

ドアのノック音が小さく響いてきた。

 

「どうぞ」

 

入ってきたのは俺と同じ体調が悪いやつか、ただのサボりか、はたまた坂口か…。

 

「失礼します」

 

…弱々しいながらも、繊細で綺麗な声の女子だった。

 

「あら……今日も来たの?」

 

……ん…?

 

「すみません…。

 でも教室に行く前にここに来ると、ほんの少しながら落ち着くんです」


…たぶん俺と同じく体調が悪くて来たのだろう。

睡魔に意識を乗っ取られつつ、二人の会話を俺はおぼろげに聞いていた。 

 

「まぁ私も鬼じゃないし頼まれてるから来るなとは言えないけど、あまりここに来るのが当たり前みたいにしないでよ?

 本来、ここは怪我や体調不良の子を安置させるところなんだから」

 

「はい…」

 

女子生徒は小さく返事をする。

そんなこと言われずとも分かっているとでも言わんばかりの罪悪感を煩いながら吐き出したようなものを感じた。


「ちゃんと「薬」は飲んできたの?」

 

「……はぃ…」

 

……薬?

 

「…あまり飲みたくない気持ちは分かるけど、それは貴女を安定させるために必要な薬なのよ。

 苦しいかもしれないけど、頑張って飲み続けなさい」 

  

「…分かってます。

でも、日高先生とこうして話すのも好きです。

 私、あまり他の人と話すことは苦手なので…」

 

「それは光栄だけど、貴方も一生徒なんだから、もう少し他の生徒と仲良くなれるように努力しなさい」

 

「はい…」

 

やがて二人の会話を切るように始業の鐘が鳴った。

 

「では、私はこれで…」

 

「うん。

 授業頑張りなさい」

 

「はい。

 失礼しました」

 

そしてドアが静かに戸閉られる。

その音を聞いた直後、不思議と俺自身にも安心したかのような眠気が襲う。

 

『あれ…?

 そういや…………手紙の差出人も………苦…手……とか…』

 

薄れゆく意識の中で一つの疑問にたどり着くものの、答えにたどり着く前に俺は眠りについてしまった…。


 


 

 

 

 

 

 

 

 

 








 

…あれから三時間が経ったようだった。

時計は昼の十一時を回り、気がつくと保健室には俺一人が寝ていた。

 

「…んぅ……いてて…」

 

変な寝方をしていたのか背中の内側が痛む。

それと引き換えに寝不足による頭痛は無くなっていた。

カーテンを開けても先生の姿は見当たらない。

きっと用事を済ませに出たのだろう。

俺はベッドの下に揃えていた靴を履く。

 

『日高先生いないけど……待たなくても大丈夫だよな』

  

無言で出ていくのは勝手かもしれないが、ここでいつ帰ってくるかわからぬ先生を待つのも性に合わない。

少々悪気は感じつつも保健室を出る事にした。

廊下に出ると、二限目を終えた生徒たちが騒がしく行き来していた。

俺は足早に教室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








教室へ入ると、慶太が俺の席で他の男子と雑談をしていた。

 

「おっ、帰ってきやがったな」

 

「殿方のお帰りか」 

 

「なんだよそりゃ。

 人が頭痛で病み上がりだっていうのに」

 

「悪ぃ悪ぃ。

 …で、もう平気なんだろ?」

 

「あぁ。

 だいぶ楽になったよ」

 

「どうせ夜中までエロ動画でも見て徹夜でもしてたんだろ(笑)」

 

「お前らなぁ…」

 

まぁこいつらなりに心配してくれていたんだろうな。

そう思い込みつつ、無意識に海条の方を見る。

 

「……ッ!?」

 

海条は俺に目線を向けていた。

その矢先に俺が振り向くものだから、思わず体制を立て直し表情を隠すように髪をいじっていた。


『……なんだろう。

 びっくりさせちったかな?』 

 

その直後、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「やぁ、体調はどうだ?

 寝不足で保健室で寝てたと聞いたんだが」

 

海条に目を向けていると、小野々儀紫が声をかけてきた。

 

「もう大丈夫だよ。

 寝不足による頭痛だけだったから」

 

そう言うも、小野々儀は何やら面白そうに笑っていた。 

 

「いや、私よりも慶太の方が心配していたのだぞ。

 君が保健室で寝てくると、わざわざ授業中にメールしてきたからな」

 

「…坂口……」

 

「ちょ、紫!?

 お前なぁ…‼///」

 

クスクスと笑う小野々儀に坂口は顔を真っ赤にして怒るも、女子には手を上げられない暗黙のルールからか憤慨することしか出来なかった。


『なんか……これはこれで良いものだな…』


そんな二人のやり取りに笑い合うみんなの笑顔を見てそう思う。

しかし、どこかつっかえる感覚もあった。


「………」 


たった一人、孤独に存在を曖昧にさせる少女が一人。

 

『……海条祈世樹…。

 どうして俺は君にこれ程に興味を抱いてしまうのか…』

 

考えすぎかもしれない。

でも、仲良くなりたい。

一緒に笑い合いたい。

彼女の笑顔が見てみたい。

どうにかして、彼女と仲良くなれないだろうか。

変人と言われてもいい。

俺は心の中でいつか仲良くなれるように頑張ろうと誓った。

 

 

 

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