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拝啓、空と世界へ  作者: 鷹利


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28.鋭利な盾

翌日、慶太たちに解散後の展開を聞かれたものの、さすがに幽霊事件のことは喋れなかった。

きっと慶太たちには理解し難いだろうしな。

それから放課後、俺は祈世樹と帰り道の最中に昨日の事で語り合っていた。

 

「空には言ってなかったんだけどね……実は私、昔からこういうのが少なくなくてね。

 しょっちゅうって言うほどではなかったんだけど、たまに憑かれたりしてたの」

 

「そうだったんだ…。

 でも、そういう時って一人で対処出来たの?」


「うん。

 今のところは昨日のみたいな弱いのしか来ないから、ホコリを払う感じに取り除けてたの」

 

霊はゴミか何かですか。

 

「でも、あーして至近距離まで来て急に居なくなったのは初めてのケースだったの。

 私もびっくりしちゃったよ」

 

「…心霊現象とかに関しては馴染みはないけど、ある程度の知識しかないからなぁ。

 「気」について聞いていいか?」

 

「どうぞ」

 

道中、俺たちは公園に立ち寄りブランコに座りながら話し合った。

 

「一応俺なりに調べてみたんだ。

 まぁ教えてもらった事ばかりで、そんな詳しくは見なかったけどな。

 …俺の気って、お前を守れる力になれるのかな?」

 

「出来るよ。

 ただ空のは鋭利的だから私を守れると同時に、傷付けるものにもなるの」

 

「あー…」

 

祈世樹の言い分はよく分かる。

一言で言うと「諸刃の剣」ってやつだろう。

 

「俺はどうしたらいい?

 これから先、この気を鍛えればいいのか?」

 

「んー…。

 別にそこまでしなくていいんだけど……雨の日とかは一緒にいて欲しいかな」

 

「なるほど。

 雨の日とかは霊が出やすいってことか」

 

「うん。

 鍛えると言っても、空の場合はイメトレだけでいいの。

 そうすれば力を抑えたり、強く放出することもできるからね。

 強さの加減は空の「意思の強さ」に関係するの」

 

「ほぉ…」

 

意味はわかる。

 元々俺は他人が昔から無条件で苦手だった。

じろじろと自分を見てきたりする人間とかは特に苛立って仕方なかった。

つまり、この力はマイナス的な方向の力……「拒絶の力」であると。

 

「それと…この事は、リルドさんたちにも内緒にしてね。

 出来れば二人だけの秘密にしておきたいの」

 

「分かってるよ。

 あの人たちには理解しずらいだろうしな」

 

「うん。

 それに心配もさせたくないからね。

 …二人だけの秘密だよ」


なんとも嬉しさを感じぬ約束ではあるが、こればっかりは仕方あるまい。

 

「じゃあ、もう帰るね。

 空も気をつけてね」

 

「あぁ。

 じゃあな」

 

そして祈世樹は少し離れたとこから手を振る。

どことなく心配ではあるものの、俺は黙って祈世樹の後ろ姿を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、俺は布団の中で自分の手を宙にかざしていた。

もちろん、そうしたとこで自分の気が見える訳では無い。

 

「イメージ…ねぇ…」

 

不意に俺は気をイメージしてみる。

 

『……』

 

確か、こういうのって「無」をイメージすりゃいいんだよな。

 

『……』

 

意識を手先に集中させて気を放つイメージを作る。

もちろん、俺自身は出せているかどうかも分からない。

 

『イメージでは出せてるんだがな…』

 

祈世樹の言う「電気的なイメージ」で気を高める。

 

『自分では出せてるつもりだが…どうなんだろう…』

 

試しに放出している気を抑えるイメージをやってみる。

…バチバチと栄えていた気がだんだん弱まり、やがて静かに消えていく。

 

『…これでいいのかなぁ…』

 

イメージはだいたい出来るようになった。


『……寝よ』

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 


夢を見た。

それは、はっきりと覚えのある過去の記憶。

俺が確か……小学校五年の時だろうか。

ある日、俺は母さんに連れてかれて来たことがない病院に行った。

だがその理由は分からなかった。

何故ならば、その時の俺は風邪を患ってたわけでも怪我をしてたわけでもなく、ましてや急に母さんから「病院に行こう」とだけ言われて連れていかれたからだ。

ガキの頃から抵抗心の低かった俺は何も疑うことも無く、母さんと来たことの無い病院に行った。

診察では一対一で先生にカウンセリングや何やら抽象的な絵を見せられた記憶だけ残っていた。

俺はそれにすんなりと回答していく。

 やがてカウンセリングが終わった俺と先生の元に母さんが呼び出され、先生が母さんに告げた。

 

『お母さま。

 非常に申し上げにくいのですが………この子は「障害」を患っています』

 

神妙な面持ちで静かに述べた先生の発言に、母さんは崩れるように泣き伏せた。

その意味がわからなかった俺は、ただ泣き伏せる母さんに動揺することしか出来なかった。

詳しい内容は覚えてないが、確かにそう言ったのは覚えている。

その日の帰りは空気が重く、家に帰るまで俺と母さんは会話すらしなかった。

と言うよりは、泣き伏せた理由を聞きたい部分もあったが、あの母さんが泣いた姿にむしろ俺が気を遣って聞けず終いだったと言うべきか。

それでも次の日からは、母さんは忘れたかのようにいつも通りに振る舞っていた。

ガキながら俺は母さんが何か隠してると察し、敢えて「いつも通りに」合わせた。 

離婚の件もあったが故、それ以降俺は母さんに本音を隠すようになった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

翌日。

 

「おはよう」


「うぃっす」

 

いつも通り登校すると、慶太の他に珍しく祈世樹の姿が見えた。

 

「おはよ燈くん」

 

「およっ…おは。

 今日は委員の仕事無いのか?」

 

「うん。

 今日は朝からみんなと一緒だよ」

 

「そっか」

 

そして荷物を降ろすと慶太が絡んできた。

 

「おい燈。

 俺さ……とうとう出せるようになったかもなんだよ…」

 

「唐突に何をだよ」

 

「ふふん、聞いて驚くな…。

 なんと……俺も「気」をコントロール出来るようになったんだよ!」


「……は?」

 

それは理解不能とは違った意味で出てしまった。

 

「……どういうことだよ…」

 

恐る恐る慶太に理由を聞く。

 

「くっくっく…。

 …見よ、この「スプーン」をッ!!!」

 

「…………えっ?(´・ω`・ )」

 

慶太が自信満々に取り出したのは……何の変哲もない、ただのスプーンだった。

 

「見てろぉ…。

 こうやって根元に気を送り続けるとだなぁ………あれ?

 スプーンが……曲がらないッ…!?」

 

「…はぁ…」

 

身構えてた自分がものすごく恥ずかしくなってきた。

 

「お前……何年前に流行ったことを今更…」

 

「なぁんだよ。

 別に何年前の流行りだろうが、俺にとってはマイブームなんだよ!

 ……昨日は曲げられたんだけどなぁ…」

 

「それ……温度で軸が変形するとかじゃないのか?」

 

「え…?

 …そう言えば昨日、風呂上がりに近所のおじさんから貰った「マジックキット」ってのに入ってたから試しにやったんだっけ。

 風呂の中で寝そうになってたしな(笑)」

 

「それなら辻褄が合う。

 今は寝起きに近い状態だから体温も低いわけだし。

 どう頑張ったって無理だよ」

 

「…お前すげーな。

 なんでそんなこと分かるんだ?」

 

「まぁ、こういうのはイメージ一つだからな。

 その昔、ユリ・ゲラーが始めたスプーン曲げは本物とは言われてたものの、俺はそういうのは身をもって体感出来るものじゃないと信用ならんしな。

 てか、説明書ぐらい見ろよ」

 

「んー…そういうとこ手厳しいなぁ。

 お前UFOとか宇宙人も信じないタイプだろ」

 

「いや、そういうのは信じるよ。

 実際会ったことはないけど、あーゆーのは未来人の可能性もあるしな」

 

「なんだよそれ。

 さっきは自分で体感出来るものじゃないと信用出来ないとか言ったくせに」

 

「世の中には「臨機応変」って言葉が存在するんだよ」

 

「なぁぁぁんだよそれーーー!!!!」

 

まぁ個人的には慶太がマジで気に関係してなかったことが唯一助かったと思う。

こいつが関わるとろくな事がない。

  

「…何の話をしてるの?」

 

背後から祈世樹がのしかかってきた。

カーディガン越しに色々と柔らかいものが当たって……個人的にはウレシス(照)。

 

「あぁ。

 慶太がスプーン曲げを信じてるみたいでさ。

 その事で語り合ってたんだよ」

 

「あー…スプーン曲げかぁ…」

 

「海条はどうよ。

 ユリ・ゲラーの超能力を信じるか?」

 

「んー、そう言うのは信じるか信じないだけだとはいえ…なんとも言えないや 」

 

「えぇ~。

 なんだよそのどっち付かずみたいな言い方ー。

 卑怯だぞー!」


「だが、それもまた祈世樹らしい答えではないか」 

 

慶太が駄々をこねていると、タイミングよく紫が入ってきた。

 

「おはよ紫ちゃん。

 朝練もう終わったの? 」

 

「あぁ。

 ところで…何の話をしていたんだ?」

 

「お前もかよッ!

 てかっ、話聞いてたんじゃねぇのかよ!」

 

慶太のナイスツッコミに教室内が沸く。

 

『こういうとこは得意分野だよな…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、祈世樹に誘われ放送委員の手伝いをしていた。

仕事内容は、明日の全校集会で読み上げる書類の仕分け作業だ。

 

「……」 

「……」

 

ホッチキスや紙の擦れる音しか響かぬ放送室。

そこに居たのは俺と祈世樹……ではなく…。

 

「……空」

 

「…なんだ?」

 

…烈火だった。

 

「貴方に話しておきたいことがある」

 

「おぅ」

 

淡々と書類を仕分けながら、烈火は俺をじっと見つめていた。

 

「…今日の祈世樹の下着の色……知りたい?」

 

「…ッ!?

 なん…だと…ッ!!!」

 

張りつめた空気が放送室内を満たす。

一瞬でも動けば、壊れてしまうんじゃないかと思うほどの……。

 

「……なわけあるかッ!」

 

『パコンッ』と小気味良い音をたてて俺は烈火の頭を足元にあったスリッパで叩く。

 

「…痛い」

 

「お前がアホな事を言うからだ。

 …でっ、本当は何なんだ?」


叩かれた箇所を痛くなさそうにさすりながら烈火は続けた。


「…気になってるものかと思ったんだけど……的外れだったわね。

 ……貴方の気のことよ」

 

「…俺の?」

 

スっと俺の頬に烈火は手をかざす。

それは触れるか触れないかの距離で。

 

「…あれからイメトレでもしたのかしら。

 以前、海辺で感じ取った時よりも強く感じる。

 普通にしててもピリピリ感じるもの」 


「そんなにか?

 確かにちょっとイメトレはしたけど…。

 てか、烈火にも「気」が分かるのか」

 

「私の場合は感覚程度でしかない。

 祈世樹の肉体が感じ取った情報を私は体感しているだけ。

 痛みとかは分からない」 


「ほぉ〜ん…」 

  

言ってる間にも烈火は手を近付けたり離したりしていた。 

 

「あまりやり過ぎない方がいいのかな?」

 

「いえ。

 ただ力の使い方には気をつけて。

 得てして、強すぎる力は守るべきものでさえ傷つけてしまうのだから」

 

「…分かってるよ」

 

昨日、祈世樹にも似たようなことを言われたような返事を同じように返すと、烈火は書類に視線を戻した。

 

「…戻らないのか?」

 

「…?」

 

「あぁいやぁ…。

 いつもなら、用が済めばとっとと戻るもんだったかと…」

 

「あら、私が出てれば不満かしら?」

 

「んにゃっ、そんなことはないぜ?

 ただ、珍しいなって…」

 

「……そうね。

 いつもならばそうするのかもね。

 けど、たまには貴方とこうして話すのも一興かと思ったのよ」

 

俺は酒の肴か何かですか。

 

「シンクロ率は大丈夫なのかよ」

 

「それは大丈夫。

 過度な運動や大きな精神の変化さえなければ、シンクロ率の上昇率はそこまで高くならない。

 その気になれば、半日入れ替わることも可能」

 

「マジかよ!

 …でも……」

 

「なるべく変わらないのが一番。

 私たちは、本来「存在してはいけない存在」だから」

 

相も変わらず、冷たい眼差しと声は透き通るように俺の身体を突き抜ける。

 

「ぷっ…」

 

「…何が可笑しいの?」

 

どこか不満げに烈火は聞いてくる。

だから俺は答えてやった。

 

「…存在しちゃ良くないわけが無い。

 むしろ、お前たちがいてくれたから祈世樹は自我を保てたんだ。

 …でなきゃ今頃……」

 

「……」

 

烈火は何も答えなかった。

そもそも、こいつらを作り出させたのは俺が原因だっつうのに…。

 

「…空」

 

「…なんだ?」

 

「……もう、終わったわよ」

 

「……えッ!?」

 

気が付くと、烈火は既に書類を仕分け終えていた。

 

「…空って、一度に二つのことを出来ないの…?」

 

「うッ…うるせぇ!///」

 

烈火監督の監視の元、急ピッチで終わらせました。

 


 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

「手伝ってくれてありがとう」

 

「いいよ別に。

 俺だって暇だったし。

 …お前とこうして話すのも悪くないしな。

 けっこう楽しかったよ」

 

「そう」

 

学校を出て帰路を歩いていた矢先、いきなり烈火が立ち止まった。

 

「…どうした?」

 

静かに目を閉じてうつむく烈火に、俺はまた幽霊関連かと思い気をイメージした。

 

「……ようやくお目覚めのようね」

 

「…へ?」

 

予想外のセリフに思わず俺は声が裏返ってしまった。

 

「「彼」が起きたみたい」

 

「彼?

 ……もしかして…」

 

「「奥宮忍(おくみや しのぶ)」。

 必要が無い時は眠ってるんだけど、たまたま目が覚めたみたい。

 まだ話してなかったわよね?」

 

「…あぁ。

 どれ、代われるなら話してみようか」

 

「…分かった」

 

烈火が目を閉じたのを見計らい、俺は彼女の身体を支える。

ガクッと倒れ、俺はゆっくり腰を降ろさせる。

すると大きく欠伸をしながら「彼」は目覚めた。

 

「ふあぁぁあぁ…。

 ……おぅ、お前が空か」

 

「…お、おぅ。

 察しの通り、俺が空だ」

 

これまた烈火とは違う、野太い低さの声が響いた。

 

「俺の名は奥宮忍……って、もう聞いてるか」

 

「あぁ。

 …お前は祈世樹の「男としての性格」なんだよな?」

 

「まぁそうだな。

 俺は基本的に祈世樹一人じゃ出来ないような力作業とかの時に変わってやってるんだよ」

 

「なるほど。

 やっぱ放送委員の仕事とな大変そうだもんな…」

 

「そうだな。

 …なぁ聞いてくれよぉ!

 あの折田って先公さぁ、祈世樹を一応女としては見てるみたいだけど、時々男じゃねぇと持てなさそうな荷物とか普通に持たせるんだぜ?

 あの野郎、俺がいるからまだしも、祈世樹を便利屋か何かと勘違いしてんじゃねーかと思うんだよ」

 

「はぁ…」

 

奥宮忍という人……人格は、熱が入るとおしゃべりになるみたいです。

 

「…そういや、前に折田先生が祈世樹の髪を触ってたの見たけど……その後何も無かったか?」

 

「ん?

 ……あぁ、そんなのもあったな。

 …まぁ心配すんな。

 あー見えてあの先公、祈世樹には甘ちゃんでよ。

 あの後、放送室で仕事終わってからは飴くれたりして申し訳なさそうに「ただのスキンシップだから、あまり気にしないでね」ってチキってたよ。

 まぁもし手ぇ出してこようとしたら、すぐに俺があいつをボコボコにしてやるから任しとけ!」

 

そう言って忍は袖まくりをして力こぶを見せつけてくる……ようにポーズをとる。

 

「…そう言ってくれると助かるよ。

 折田先生って、女癖悪いとか噂が多かったから実際どうなのかなって…」

 

そう言うと忍は俺の肩に手を乗せてきた。

 

「…空。

 お前のそういう心配性なとこ嫌いじゃない。

 けど…祈世樹のやつもそこまでやわな奴じゃない。

 気持ちは分かるが、何もそこまで心配しなくていいぜ。

 なんたって「俺たち」がいるんだからな」

 

「忍…」

 

ニシシとはにかむその笑顔は不思議と安心感を感じさせてくれた。

 

「…分かった。

 忍を信じるよ」

 

「あぁ。

 約束だ」

 

そしてお互いに拳をぶつけ合う。

 

「…やべッ!

 リルドに買い物頼まれてたんだ!

 …すまん、先帰るわ!

 じゃあまた明日な!」

 

「…お、おぅ。

 気をつけてな!」

 

祈世樹らしくなく両腕を大振りしながら忍は走り去っていく。

 

「…たまには一人でゲーセン行こうかな」

 

真っ直ぐ家に帰ろうかと思ったが、俺は格ゲーをやりにゲーセンに向かう事にした。

 

『…今度、忍と格ゲー勝負してみようかな…』

 

 

 

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