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拝啓、空と世界へ  作者: 鷹利


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12/35

11.修学旅行初日〜

十月十四日、午前八時手前。

待ちに待った修学旅行の日が来ますた。

 

「おはよ坂口。

 自主見学のルート大丈夫なのか?」


「ウィッス。

 もちろん抜かりはないよ」

 

着替えなのか遊び道具なのか、坂口のキャリーバックはパンパンに膨れていた。

ちなみに俺が自主見学のルートを知らないのは、坂口が「俺に任せておけ」の一言で全く構想に携われなかったからである。 

 

「そいや碧乃はいくら持ってきたんだ?」

 

「俺?

 …まぁ五万ぐらいよ」


「マジかよ!?

 それで一週間やりくりできるのかよ」

 

「まぁそんな金使うつもりないし、必要最低限の雑費と食費とお土産代を考えれば間に合うかと」

 

と言いつつ、実はセカンドバッグの底面にプラス五万隠してるけどね。 

 

「まぁ必要経費なら足りなくなった場合貸してやってもいいけどな。

 その為にも多めに持ってきたわけだし」

 

「それはどうも。

 …そういう坂口はいくら持ってきたんだ?」

 

「ふふん。

 俺はもしもの事を考えて、ざっと十五万持ってきたぜ」

 

ビシッとガッツポーズをするも、あまりの多額に少し気圧されてしまった。

 

「そんな使うことあるか?

 落としたらやべぇやん」

 

「まぁ念のためよ。

 自主見は俺が幹事をするし」

 

『…不安だなぁ……』

 

そうこう話していると、登校時間ギリギリに紫と海条が入ってきた。

 

「はぁッ…はぁッ…。

 …なんとか……間に合ったな……」

 

「…ごめんね紫ちゃん……。

 私がちゃんとしっかりしてれば…」

 

何やらしょげているようだが、何があったんだろうか…?

 

「ウィッス紫。

 何かあったのか?」

 

「あぁ慶太…。

 実は、祈世樹が財布を忘れてな……途中から家まで戻ってそこからとんぼ返りに全力疾走だ……。

 ほ…本当に疲れた…」

 

「ごめんね紫ちゃん……けほっ、けほっ…」

 

「かまわんさ…。

 とりあえず間に合ってよかった」

 

「うー…」

 

それでも納得の出来ない海条の頭を紫がなでると、海条は困りながらもどこか気持ち良さそうな表情になっていた。


『………』

 

「……羨ましいのか?」

 

「……はいッ!?」

 

気がつくと、俺はなでられて癒されてる海条をぼーっと眺めていた所を坂口に見られてしまった。

 

「そんなにしたいなら、やらせてもらえばいいじゃん」

 

「なッ……ばッ…!///

 いくら仲良くなったとはいえ、さすがに女子に触るのはどうかと…」

 

「そうか?

 …紫、お前最近たるんでないか?

 ちょっとわき腹の肉が……グビラッッ‼‼」

 

俺がしゃべってる間に坂口が紫の脇腹に触っていたらしく、キレイな直線を描くように紫のミドルキックが坂口の無防備な腹にダイレクトアタックを決めていた。

キックを食らった坂口は数メーター飛ばされ、激痛に悶えていた。

 

「…なぁ燈。

 いくら友達や幼なじみでも女の子のデリケートな部分を触るのは失礼だよなぁ……???」

 

「…はっ、はいッ!‼

 それは無論です‼

 デリカシーのない坂口は凸られて当然かとッッ!!‼」

 

ニコニコと笑顔ながらも、紫の周りに黒いオーラが見えた気がした。

 

「さ……坂口君………泡吹いちゃってるけど大丈夫かな…?」 

 

「問題ない。

 一時間しても起きなかったら、私がザオ○クで蘇らせるからな」

 

「…ざお……(′・ω・`)?」 


「…紫って、何気にアニメとかゲームネタに精通してるよな。

 個人的にはツッコミやすくて助かるけど」 

 

「こう見えてレトロゲームが好きでな。

 ファミ〇ンとかたま〇っちとかもたまにやるぞ」 


「…紫って生まれる数年前の人の生まれ変わりなんじゃねぇかってたまに思うんよね。

 つか、未だ生存してる〇まごっ〇ってレアじゃね?」 

  

「……碧乃君。

 ざおなんとかって何なの…?」

 

海条が質問してくるのと同じタイミングで校内放送が流れてきた。 

 

『二年生は全員、荷物を持って体育館に集合してください。

 点呼をとって準備ができ次第、修学旅行に出発します』

 

「…ようやくだな」

 

「それじゃ、行きますか」 

 

「…ねぇ、ざおなんとかってなんなの…?」

  

未だ疑問の晴れぬ祈世樹と、泡吹き蟹状態から抜けておらぬ坂口を背に、俺と紫はこれから始まる修学旅行に胸を踊らせながら教室を出た。 

 

「むぅ~……。

 二人ともいじわるしないでよぉ…」 


 

 

 

 

 

 

 

 

  

『えー…ですから、あなた方ももう高校二年生という身分を忘れず、清く正しく規律のある行動を持って……』

 

「おい。

 かれこれ三十分は経つぞ…」

 

「だな…。

 ケツが痛くなってきた……」

 

準備ができ次第出発しますと言っていたはずなのに、何故か俺たちは校長の長話に付き合わされていた。

先生たちは俺たちと違ってずっと立ち続けている為、小話こそしないものの、どこか飽き始めているようにも見える。

 ちなみに坂口はものの五分で復活した。

…隣の坂口はケダ物か。 

 

『えー、それでは私の方からは以上とさせていただきます。

 皆さん、落ち着きのある行動を持って学生生活、最後の修学旅行を楽しんできてください』

 

校長が一礼し、全員の緊張感が緩む。

時間が押していたのか、進行役の先生がそそくさと壇上に上がった。

 

『それでは皆さん、校長先生の言葉を忘れず、事故や怪我のないように修学旅行に行きましょう。

 それでは一組からバスに移動してください』


「ようやくか……」

 

「長かったぜ…」

 

ぞろぞろとクラス毎に移動を始め、待っていたと言わんばかりにバスに向かう生徒たちは早足で歩いていく。

やがて隣のクラスも移動を始めた。

 

「ようやっと行けますな」

 

「だな。

 待ちくたびれたぜ」

 

そうして俺たちもまたバスへと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員席に着いたな。

 席順は決まってないが、酔いやすい奴は窓側優先で座らせろよ」

 

次々とバス席が埋まっていく中、俺たちも真ん中寄りの席に二人で座った。

 

「ベストポジションゲットだぜ」

 

「だな。

 遠すぎず近すぎずだしな」

 

坂口が窓側、俺が通路側に座ると、後から来た紫たちも隣側に来た。 

 

「二人ともいい場所をとったな。

 ならば私たちも邪魔するとしよう」

 

「おっ、紫たちも隣か。

 いい具合に話も出来そうだな」

 

「……よろしくね…」

 

「海条も一緒なら良かった。

 みんなで楽しもうな」

 

「……はい!」

 

優しげな笑顔で応える海条に少しときめくも、その気持ちを抑えて俺は平常心を保つ。

 

「これから空港に向かう。

 まだトイレに行ってないやつは今のうちだぞ。

 空港着いたらすぐに飛行機に乗るからな」

  

忠告を促すも誰も降りないことを確認し、やがてバスにエンジンがかかる。

やがてゆっくりとバスは動き出し、駐車場の出入口で校長と数人の先生たちが見送ってくれた。

少しだけわくわくしつつ、俺たちは空港へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『間もなく、那覇空港への出航便が出ます。

 ご予約済のお客様はは……』

 

「ほら、そろそろ飛行機が出るから全員忘れ物をせず急いで搭乗ゲートに向かえ」

 

二組担任の大賀先生が誘導し、次々とクラス毎にゲートに乗り込んでいく。

 

「三組も続け。

 もたもたしてると乗り遅れるぞ」

 

押し寄せる波のように次々とクラス毎に生徒たちが搭乗ゲートに向かう。

 

「祈世樹、はぐれないように私の手を離すなよ」

 

「う、うん…。

 頑張る…!」

 

俺と坂口の目の先で海条を紫がリードするも、俺は少しだけ人波に乗りつつ二人の様子を見守っていた。

 

「碧乃ッ!」

 

「…どうした?」

 

突然、俺を呼んだ坂口は予想外の一言を放った。 

 

「はぐれないように手繋ぐか?

 …あだだだだッ!」

 

返事の代わりに坂口の手首を捻り……もとい、注意喚起をしてやりました。

 

「いてて……。

 …何だよ人が気を遣ってやったっていうのに…」

 

「お前はホモか。

 てかそんなドン臭くないんだから、お前に心配される必要はねぇわ」

 

「そーでしたか。

 こりゃ失敬」

 

「…ったく……」

 

やれやれと思っていると、目の先で小さく悲鳴が聞こえた。

 

「大丈夫か祈世樹!

 怪我はないかッ!?」

 

「だっ、大丈夫だよ…いたた…」

 

どうやら人並みに足をとられつまづいた海条が脚を痛めたらしい。

 

「立てるか?

 私の肩に掴まれ」

 

「うん…。

 大丈夫……ッ…」

 

「困ったな…。

 先生は近くにいないし…」

 

ゲートの通路内で二人を尻目に他の生徒たちはそそくさと避けて乗り込んでいく。

その光景を見て俺は自然と足が動いた。


「悪ぃ坂口。

 俺の分の席取っておいて」

 

「おいッ、碧乃!?」  

 

坂口にセカンドバッグを預け、人混みを避けながら二人の元にたどり着く。 

 

「紫、海条を頼む。

 俺は海条の荷物を持っていくから」

 

「燈!?

 ……すまん、恩に着る。

 …祈世樹、歩けるか?」

 

「碧乃君ッ!?

 …うん、ごめんね二人とも……」

 

「いいよ。

 それよりもさっさと移動しよう。

 ここに居続けてると迷惑になる………ぬぉっ、重ッ!?」

 

海条の荷物を持つと、驚くほど重かった。

 

『よくこんな重い荷物を背負ってたものだ。

 男の俺でもきついぐらいなのに…』

 

でも海条の為と思うと自然と力が湧いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっこいしょっと…。

 これで荷物はおっけーだな」

 

「あぁ、助かったよ燈。

 うちの祈世樹が世話をかけた」

 

海条はあなたの所有物ですか。

 

「あ…あの………ありがと…。

 重かったでしょ…?」


「あ……いや、そんな事ねぇよ!

 …じゃっ、じゃあ俺は席に戻るかんな。

 紫、あとは頼んだぞ」

 

「うむ、任せておけ」

 

ビシッとガッツポーズを決めつけ、ようやく落ち着いたのを確認してから俺は坂口の居場所を探しに戻った。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねぇ、紫ちゃん」

 

「ん…?

 まだ脚が痛むか?」

 

恥ずかしがりながら祈世樹が何かを言いたげしていた。

 

「……碧乃君のこと……名前で呼んでるんだね…」 

 

「……あっ、あぁ!

 私の方から「紫と呼んでくれ」と言ったら「じゃあ俺も燈でいいよ」って言ってくれてな。

 …それがどうかしたか?」

 

「……あっ、ううん!

 何でも…ないの……」

 

「……?」

 

何か言いたげにするも、祈世樹はそのまま黙り込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おっ、来た来た。

 碧乃、こっちだ」

 

「おいよ」

 

ようやく坂口を見つけて隣に座る。

 

「ふーっ。

 疲れた…」

 

「お疲れさん。

 海条のやつ、大丈夫だったのか?」

 

「あぁ。

 軽く足首を捻ったみたい。

 向こうに着くまでにいくらかでも治ってればいいんだけど…」

 

「そっか。

 ……なんか、ようやくって感じだな」

 

「あぁ。

 ようやく沖縄に行けるんだな…」


「あー……。

 そっちではないんだがな…」

 

「……?」

 

なんかはぐらかされてるような気もするが、やがて飛行機が動き出すと、そんな気持ちはすぐに払拭された。

やがて離陸してまもなく、高度が安定してきた頃に眠気が襲ってきた。

  

「……少し寝る。

 着いたら教えてちょ」

 

「了解。

 起こす時は、落書きと電気ショック目覚ましならどっちがいい?」

 

「3、2、1…」

 

「へ…?

 ……イデデデッッ!!!!

 まっ、まじすんません…!

 イタズラは絶対しませ…アダダダッ!!!!」

 

「…はぁ」

 

そして俺はゆっくりとまぶたを閉じる。

相当、気を張っていたのか、目を閉じるとすぐ眠気が襲ってきた。

俺は成すがままに睡魔に意識を任せ、深い眠りへとついた。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから何時間が経過したのだろう。

目を覚ますと、さっきまで賑やかだった客室内は静まっており、隣に居る坂口も既に寝ていた。

 

『あと何時間だろう。

 寝直したいとこだけど、とりあえず起きてるか…』

 

暇を持て余した俺は備え付けのヘッドホンでラジオを聞くことにした。

 

『で、あるからにして私の妻は……』

 

ラジオでは落語が流れており、不覚にも暇を極めていた俺には丁度いい暇つぶしとなった。

そんな矢先、客室内にアナウンスが流れた。

 

『皆様、間もなく当機は那覇空港に着陸します。

 お手数ですが、お隣、お近くでご就寝なさっている方がいらしましたら、どうぞそっと起こしてさしあげてください。

 本日は当機をご利用いただき、誠にありがとうございます』

 

落語を聞き始めてから数分して俺は坂口を起こすこととなった。

 

「…起きろ。

 もう空港に着くぞ」

 

「んーー…。

 ラーメン…チャーシューマシマシヤサイ少なめで……」

 

『どんな美味しそうな夢見てるんだよッ!?』

 

心の中でそうツッコみつつ坂口の体を揺さぶる。

 

「坂口、起きろ。

 お母さんが来てるぞ」

 

「んー………ッ!!?

 だッ、まッ………え?」

 

何故か「お母さん」というキーワードに過剰に反応し坂口は目を覚ますも、目の前の現状を把握すると超絶不愉快そうに顔をしかめていた。

 

 

 


 

 

 

 

 

  

 

 

「お前……もうちょい普通に起こせなかったのかよ…」

 

「悪かったってば。

 そう引きずるなよ」

 

あれから坂口は眠たげながらも機嫌を損ねていた。

 

『何かお母さんとの確執でもあったのだろうか…』 

 

空港に降りて全クラスの整列を待機していると、後から紫たちも合流した。 

 

「二人とも、空の旅はどうだった?」

 

「…俺はともかく、坂口がな…」

 

不機嫌そうな表情の坂口に紫と海条は不思議に思いつつも俺は話を続けた。

 

「二人はどうだった?」

 

「あぁ。

 始めのうち祈世樹が少し酔ったりもしたが、すぐ落ち着いてくれたからなんとか大丈夫だったよ」

 

「ふえぇ…。

 ごめんね紫ちゃん…」

 

「気にするな」と言いつつ紫は海条の頭をなでる。

その光景に微笑んでいると、機嫌を治した坂口が割り入ってきた。

 

「とーりーあーえーずーだ。

 全員何事もなく来れた訳だから、気を取り直していくぞ」

 

「おっ、ようやく戻ってきたな

 さっきは悪かったな」

 

「もういいよ。

 気にしてね」

 

軽く坂口は俺に肩パンをかます。

そのやり取りに紫と海条が笑う。

それから間もなくして、ある程度の人数が集まってから芹澤先生が声を張り上げる。


「三組、全員降りたら整列しろ。

 点呼を取り次第、二組のあとに続くぞ」 


無論、その後は言うまでもなく全員バスに乗り継ぎ宿泊先となるホテルへ向かった。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青森とは打って変わって暑い日差しが燦々と照らす中、俺たちはホテルに着き、各自それぞれに前もって決められていた部屋に荷物を置いてエントランスで点呼をとっていた。

 

「梅田先生。

 三組全員、点呼確認しました」

 

「うむ。

 えー……とりあえず全員の点呼は取れました。

 これより自主見学に向かってもらいたいと思います。

 まだ着いたばかりで気が緩んでるかも知れませんが、校長先生の言葉にもあったように、節度のある気持ちを持って自主見学を行ってください。

 では、一組から順に自主見学へと向かってください。

 集合時刻は予定通り、四時間後の五時までにここに戻ってきてください。

 なるべく遠くへは行かぬように。

 では、それまで解散!」

 

ぞろぞろと一組から順に班に分かれて生徒たちが出ていく様子を俺たちは今か今かと眺めていた。


「俺たちも順番が回ってきたらとっとと行こーぜ。

 見たいとこはたくさんあるけど、一応控えめかつ迅速に回りたいからさ 」 

 

「そうだな。

 下手にじっくり見て回って時間を食うのもあれだしな。

 …そういやルートは決まってるんだよな?」

 

「おうよ。

 ちゃんと見てまわる順番も決めてきたぜ」

 

「それに関しては私も検閲したから問題ない」

 

「おっ、紫も見てくれたのか」

 

「あぁ。

 このバカだけじゃ不安しかないからな」

 

「ちょ…!

 不安しかねぇって言い方は余計だろ!

 なぁ碧乃…」

 

「そうだな。

 紫も見てくれたなら安心だな」

 

「えぇッ!?

 お前までもかよ…!」

 

わかりやすく坂口は肩を落とす。

 

「………」

 

「…海条」

 

「…ふぇッ!?

 は、はい…!」

 

慣れない環境に緊張していたのか、海条は落ち着きなく辺りをキョロキョロ見渡していた。

 

「俺たちがいるから大丈夫だよ。

 今日はみんなで楽しもうな」

 

「…ッ………はいッ!」

 

そして笑顔で海条は返事をする。

その様子を紫は微笑ましく見つめていた。

 

「それじゃあ行くか」

 

「おうよ」

 

「うむ」

 

「はい!」

 

…なんか俺が仕切ってるみたいな雰囲気になりつつも、みんなは素直に応えてくれた。

少し気恥ずかしいながらも、三組の先頭を俺が歩み出す形で自主見学が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、最初はどこに行くんだ?」

 

「ふふん。

 やっぱ沖縄と言えば、人気の高い名所の一つ「首里城」でしょ!」

 

「おぉ、坂口にしては意外なチョイス。

 てっきり沖縄に来てまでゲーセンを探すかと…」

 

「バーカ。

 お前じゃないんだからそんな無粋なことしないわ。

 つか、紫たちもいるんだから尚更だわ」

 

居なきゃ行ってたのかよ。

 

「まぁ首里城はホテルから最も近くて人も多いだろうから、早めに見ておくのも良いかと思ってな。

 言われずとも最初から見に行くつもりだったし」

 

「なるほど。

 紫にも見てもらっておいて正解だったな」

 

「おい、俺だって最初に首里城が良いんじゃないかって言ったんだからな」

 

「ヘーソウナンダー。

 …海条も首里城でいいな?

 ……海条?」

 

「……ふぇ?

 …うっ、うん!

 私も首里城でいいよ!」

 

「……?」

 

何やら言いたげな感じではあったが、本人はよろしいそうなので敢えてスルーした。

 

「えーっと、首里城へはここから電車で十五分か…」

 

「おぅ。

 那覇駅から電車に乗って向かうぞ」

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そいや俺、電車に乗るの初めてだな…」

 

「マジか!?

 切符はそこの機械からお金を入れて、行き先のボタンを押せば切符が出てくるから…」

 

「おい。

 途中から気付いたが、お前「はじめての〇つかい」に出てきそうな駅員になってるぞ。

 なんか腹立つ」

 

悔しいがマジで俺は電車に乗ったことがない。

これもまた学ぶべき常識か…。

 

「祈世樹。

 お金を入れたらここを押して切符を買うんだぞ」

 

「う…うん。

 ……にゃっ!

 切符が出た!」

 

「それをこの先にある改札口に入れて通過するんだよ。

 乗っても無くさないようにな」

 

「うん。

 分かった」

 

まるで小学生に物事を教えるお母さんのような紫の姿に思わず「○じめてのおつ○い」を見てる気分になってしまった。


『いかんいかん、はよ俺も切符を買わねば…』


急ぎ目的地の切符を買っていると、坂口が駅員に時間のことを聞いていた。  

  

「電車は何時出発だって?」

 

「今から十分後だって。

 まぁゆっくり行っても平気だな」

 

「そうか。

 念の為トイレとかは早めに済ませておくべし。

 …二人とも、トイレとか大丈夫?」

 

「私は問題ないぞ」

 

「わ、私も…!」

 

「そんじゃ、このまま電車に乗るか」

 

そして俺たちはホームへと向かい、予定時刻通りの電車で何事もなく首里城へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぉ〜。

 これがテレビでよく見る首里城か…」

 

「まさに絶景だな。

 私も一度、この目で見てみたいとは思っていたが、これ程までに大きいとは……」

 

「すげぇな…。

 見れてよかったな海条」

 

「うん…!

 すごく素敵…」

 

石畳の門の先からそびえ立つ生の首里城は、テレビで見るものよりもずっと威厳があった。 

 

「そうだ、全員で写真撮ろうぜ。

 …あ、すいませーん!

 写真撮ってもらっていいですかー?」

 

俺たちの意見も聞かず、坂口は持ち前のフレンドリーな性格で同じく観光に来ていた男性に写真撮影を頼んだ。

 

「はい、いきますよー。

 …はい、チーズ」

 

それぞれが思い思いにポーズをとり、返されたデジカメには綺麗に全員が映っていた。

 

「おぉ、なかなかいいじゃん!

 …すいません、ありがとうございました!」

 

坂口がそう言うと、撮影をしてくれた男性は軽く会釈し去っていった。

 

「こりゃ良いものが撮れたな。

 …帰ったら写真現像してみんなにもやるよ」

 

「おぉ、それはありがたいな。

 楽しみにしてるぞ」

 

「あ…えっと……ありがとう…」

 

「お前にしては随分気が利いたことを思いついたな。

 ちょっと見直したよ」

 

「おいこら。

 どこの何様がどんな目線で言っとるんじゃボケ」

 

「にゃはは、すまんすまん」 

  

「全く。

 …さて、この調子で予定地も全部見回るぞ!」

 

「私はともかく、祈世樹もいるんだから無理のないプランでな」

 

「私は平気だよ紫ちゃん。

 そこまで心配しなくても平気だよぉ」

 

「むっ…。

 しかし……」

 

「…まぁ海条がそう言うなら大丈夫だろ。

 あとはあんまし長距離移動とか電車移動もないんだろ?」

 

「おんよ。

 ほとんど近場を見て歩く予定だし、乗ってもバスか電車一本ぐらいだしな」 

 

「むぅ…。

 ならばいいが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も俺たちは色々と見回って自主見学を楽しんだ。

どんなとこに行ってきたか語り尽くしたいとこだが、正直それではキリがないので雑把に省略させてもらう。

 首里城のあとは「おきなわワールド」という沖縄の自然を体験出来るテーマパーク、ガンガラーの谷と呼ばれる鍾乳洞、それから国際通りを見てまわり、たくさんお土産を買ったりしていた。

 

「いやぁー、けっこう見てまわったな…」

 

「なかなか坂口にしては見どころが良いどこばっかりだった」

 

「だろ?

 …おっ、そこのシーサー饅頭とか美味そうだな」

 

ちなみに現在、何軒目かのお土産屋に四人で立ち寄っている。

 

「そいや、お前あまり買ってないな。

 気に入ったものないのか?」

 

俺もお土産は見ているも、あまり手にしていないことに気づいた坂口が疑問を投げかけてきた。

 

「ん?

 …こういうのってつい慎重になるんよね。

 見た目は美味しそうだけど、実際食ってみたら大したことなかったとか、量の割に値段が高いとか…」

 

「お前………主婦になれそうだな…」

 

まぁ自分には甘いんですけどね。

 

「祈世樹、これなんてどうだ?

 このシーサーのキーホルダー可愛いぞ?」

 

「あ…。

 可愛いけど、まだ家の皆へのお土産買ってないから…」

 

『…海条も慎重派なんだろうな。

 見てる感じ、海条もあんまり自分のお土産買ってないみたいだし』


そう思ってる矢先、お土産屋の隣にこじんまりと綺麗な石やブレスレットなどのアクセサリーが売られている出店があった。

綺麗な石や宝石には目がない俺は自然と足を運んでいた。

 

「……すっげー綺麗…」

 

珊瑚を使った首飾りや、大きめの何カラットか分からないルビーの指輪などの値段を見ると、十万だの十八万だの学生には到底ハードルの高すぎる値段ばかりだった。

 

『これは撤退かな……ん?』

 

よく見ると、もう少しリーズナブルな価格のネックレスやブレスレットなども売っていた。

その中にふと気になるブレスレットが目に入った。

 

「……兄ちゃん、そのタイガーアイ気に入ってくれたかい?」

 

店の奥から中年男性が声をかけてきた。

ここの主人なのだろうが、さほど客が来てる訳では無いのだろう。 

 

「あ…は、はい!

 すごく粒の模様も綺麗で素敵だなぁと……」

 

だが値段は四千円と若干自分への土産には高すぎる気もする。

 

「買ってくれるなら、ちょっとだけまけとくよ」

 

「えっ、いいんですか!?」

 

店のおっちゃんは優しい笑顔で値札を取った。

 

「そんなに褒めてもらったんだから、それくらいの事はしないと。

 今日はまだ一つも売れてないし……君ら修学旅行生だろ?

 ちょっとぐらいならオマケするよ」

 

そこまで言われれば、こっちも買わないわけにはいかない。

 

「……じゃ、じゃあお言葉に甘えて…。

 …あとこのアメジストのブレスレットも買っていきます」

 

「あいよ、毎度あり。

 ありがとうね 」

 

「いえ。

 こちらこそ、良いものを買わせていただき満足です」

 

そう言うと店番のおっちゃんはブレスレットをゆっくり丁寧に包装してくれた。

 

「兄ちゃんたちはどこの修学旅行生?」

 

「青森からです。

 高校二年なので、今年が最後です」

 

「そうか。

 なら帰るまで修学旅行を楽しみなさいな。

 怪我もなく無事に帰れるようにね」

 

「はい。

 有難うございます」

 

そしておっちゃんは代金と引き換えにタイガーアイとアメジストのブレスレットが入った紙袋を渡してくれた。

 

「はい、まいどあり」

 

「有難うございます。

 大事に使わせてもらいます」

 

そう言っておっちゃんに別れを告げ、俺は坂口たちのいるお土産屋に戻った。

戻る際に振り返ると、おっちゃんは嬉しそうに手を振ってくれていた。

 

『なんか、いい買い物した気分…』

 

少しだけ心が暖まったとこで坂口たちを探すと、既に三人は買い物を済ませていたようだった。

 

「碧乃、お前どこいってたんだよ。

 はぐれたかと思って電話しようと思ってたんだぞ」

 

「悪ぃ。

 隣のお土産屋に気が向いてね…。

 二つほど買ってきたんよ」

 

「ほぉー。

 何買ってきたの?」

 

「タイガーアイとアメジストのブレスレット。

 優しいおっちゃんだったから、少しまけてくれたよ」

 

「なんだよー。

 そこはモ〇ハンやってる身の上、マカ〇イトとかドラ〇ナイト買ってこいよ」

 

「マ〇ライトはまだしもド〇グナイトはあるかどうかわからんぞ!?

 てか、あったとして買わねーよ!?」

 

そんな茶番をしていると、現時刻に気づいた紫が割り入ってきた。

 

「二人とも。

 そろそろ戻らないと集合時刻に間に合わんぞ」

 

「おっ、もうそんな時間か。

 なら戻るか」

 

「だな。

 …海条もあとは寄りたいとこ無いよな?」

 

「うん。

 私はもういいよ」

 

「んじゃ戻るか」

  

そして俺たちは宿泊先のホテルへと帰るため、途中バスに乗ってホテルへと向かった。

 

 

 

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