Pr.偽書ノ記憶
海はどこまでも広く、果てしなく蒼い。
私はそんな海を眺めるのが好きだった。
…でも、何故だろう。
どうしてこんなに胸が苦しいのだろう。
今、私は海の中に沈んでるから?
…違う。
沈んでいるのは私ではなく…私の精神。
現実的なものとは違うが故に、一切の息苦しさや感覚などない。
…ならば、なぜ私は泣いているの?
不安などないはずなのに、この胸の奥からこみ上げる感情は何?
いつからかゆっくりと沈んでいく最中に、私の涙が目先の光芒に向かって上がっていく。
その涙を見た瞬間、私の中で何かが目を覚ましたかのようにうなり声をあげた。
…嫌だ。
消えたくない。
帰りたい。
私の居るべき場所へ…。
そう思えど、私の意思とは裏腹に身体は全く言うことを聞こうとしない。
そして視界に映る光はだんだん薄く小さくなっていく。
…嫌だ。
誰か、助けて…。
仄暗い水底が私を包み込もうとする。
私には抵抗する力などなく、ただ沈んでいくだけ。
お願い……誰か……。
無情にも、伸ばす手は目の先の光がだんだんと遠ざかっていることを知らせ、もはや視界さえぼやけて……。
薄れゆく意識の中で、たった一言が自身の胸を深くえぐった。
『…消えたく……ないッ…………』




