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Urdan Hell  作者: D-1103
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プロローグ

我が国、日本では、かつて人間と獣人が共存していました。


明治時代中期以降、一定数の人々は「人間の方が獣人よりも地位的に優れている」と考え、政党を結成してその考えを広める活動を行いました。


そして、当時、人間と獣人の間には、あらかじめ一定の区別があったことも影響して、

多くの人々は、獣人を人間の発展の妨げになる存在と認識するようになりました。


政府は、こうした動きを受け、獣人から参政権や教育を受ける権利、働く権利など人権をはく奪しました。


その後、雌や子どもを含む獣人は、離島に作られた隔離施設に集められました。


隔離施設では、年齢や種族の検査でその後の処置が決められ、ほとんどは銃によって処刑されました。最終的には全員の駆除が完了しました。


このような手続きの結果、社会から獣人の存在はなくなりました。


現在、社会から獣人は消え、わたしたち人間が安心して生活できる世の中になりました。

この出来事が終わった日は、国民記念日のひとつ「統一記念日」としてされています。


――【削除済】出版「中学 歴史① 令和【削除済】年版」 【削除済】ページ【削除済】行目より引用


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―――


「よっこいしょっと」

「それで…最後かな…」

「だと思う。にしても今回仕事マジで重かったなー」


桃色の髪から長く柔らかな耳を揺らめかせながら、少女は額に浮いた汗を手の甲で拭った。

その動作に反応し、即座に菫色の髪をした少女が一枚のハンカチを差し出す。


紫の髪を持つその少女もまた、頭部からは堂々たる巻き角が伸び、さらにその中心には小さく下がる耳を備えていた。


桃髪の少女が短く「ありがと」と呟いてそれを受け取り、もう一人の少女は頬を朱に染める。

二人の間に形容し難い温もりを帯びた空気がじわりと滲み出す。


「今日もお二人は仲が良いですね」

「仕事中にイチャイチャしないでよ…」


どこか介入しづらい気配を帯び始めた二人のもとへ、さらに新たな二人が声を掛ける。

小柄な方は、小動物を思わせる丸い小さな耳を小刻みに揺らしながら、口元に手を添えてにっこり微笑んでいる。

対して、二人の様子に呆れを隠さぬ溜息を洩らすもう一人の少女は、長く流れる灰色の髪から鋭く伸びる大きな尖耳を覗かせていた。


「え、えへへ、やっぱそう見えちゃう感じぃ?」

「そ、そんな…お似合いだなんて…そんな…」

「言ってない!!」


再び周囲の空気に甘やかな情念を撒き散らす二人へと、耳の大きな少女が鋭い怒号を放つ。

しかしその声音には、どこか聞き慣れたものとして受け流しているかのような響きがあった。


「見ていてとても微笑ましいと思います」

「お前眼科行けよ」

「でも、そろそろ帰る時間ですよ。ほら、お迎えも来ましたし」


そう言い、小柄な少女はちらりと背後を振り返った。

すると、その視線の先には、小走りでこちらへ駆けてくる二人の少年の姿があった。


「全部終わったか? お疲れ」

「おうともよ。お前らも乙」

「今終わったの? 遅いね」


鱗の光を帯びた長い尾を振りながら駆け寄る黒髪の少年の後ろには、

辛辣な言葉を吐く金髪の少年が続き、彼も引きずってしまいそうなほど長い尾羽が強く目を引いた。


「そっちは? なんか見つかった?」

「あー…それなんだが…」

「ミリも見つかんなかった。多分持ち逃げでもしたんでしょ」

「ま、仕事の報酬が最低限入るんだしマイナスじゃねぇだろ」


少年が頬を掻きつつ明るさを装う姿を横目に、桃髪の少女は顔を上げた。

それに呼応するように、残る五人もまた出口へと向き直った。


「さっさと帰るよ。遅くなったら依頼主(マスター)に怒られるから」


全員が頷き、先ほどまでの空気とは対照的に、軽やかな足取りで少女の背を追った。


――しかしその光景のすべてが狂気に映るほどに、彼らの背後へと広がる人間の死骸は、あまりにも膨大で、凄惨を極めていた。

こんにちは。1103って言います。

なんかプロローグは暗いですが本編は全然そんなことないんで安心してください。


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