第７話 欲しいものは手に入れるのが、おれのやりかたさ
「おりゃああああっ！ これでも喰らえぇ！！」
ボオオオオオッ！
剛はモンスターから借りパクした炎を吐く能力で、目の前の巨大なモンスターに攻撃を仕掛けた。
しかし……！
「グガアアアアアッ！！」
モンスターが唸り声を上げると、炎がかきけされてしまった。
「なんだ、どうなってんだ！」
「恐らく、魔力で絶対防御障壁を身体全体に展開しているんだ！」
「コマざえもん、どうすればいいのさ！ 倒す手はないの？」
「スカ夫くん、無くはないけど……。攻撃してくる時に一瞬解除するはずなんだ」
「アギャアアアアッ！！」
モンスターの頭の１つがエネルギー弾を放ってきた。
このモンスターはヤマタノオロチのような複数の首と頭を持っており、代わる代わる防御を解除して攻撃してくるのだ。
「うわああーーっ！！」
「ひええ〜！ お助け〜！！」
「ちょっとくず太さん、どこに入ってるのよ！ くず太さんのえっち！！」
くず太はパニックのあまり、くろみちゃんのスカートの中に顔を入れて逃げ込もうとしているのだ。
「だってだって、怖いよ〜！」
「もう、いい加減にして！ スカ夫さんもいつまでカメラで撮ってるのよ！」
「い、いや、つい」
「「「「アンギャアアアアーーッ！！」」」」
続けざまにモンスターから攻撃が降り注いでくる！
「仕方がない！ ぼくが防ぐよ！」
コマざえもんが両手をかざすと防御魔法が展開して攻撃を防いだ。
つまり、これまで外の魔力通信網に繋いでいた魔力を流せなくなるのだ。
「ちょっと！ そんなことしたら配信が外につながらないじゃないか！」
「そんなことを言ってる場合かスカ夫くん！ 死にたいのかい！？」
「そんな〜。あ、せめて後で配信できるように録画しておかないと」
「この野郎〜！ お前だけ障壁とかずるいぞ！ その皮をはいでオレがかぶってやらあ！」
「ジャイアント！ 防御障壁は皮じゃないよー！」
「うおおおおおおっっ！！」
「ブギアアアアアッ！！」
「欲しいものは手に入れるのが、おれのやりかたさー！ ふんぬーーーーっ！！」
「ギャアアアアアーーーッ！」
バリーン！ と何かが砕けるような音がすると、バリバリバリッ！ とまさに皮が剥がれるようにして衝撃がモンスターの身体からめくれ上がっていく！
「アンギャアアアーッ！！」
「うわーっ！ ジャイアントー！」
ドガアッ！ とモンスターの太い前足の攻撃で剛が踏み潰されたかと思ったが。
「へっへっへ。効かねーなぁ、この皮かぶってるとなー！」
剥がした障壁をかぶったジャイアントは無傷だった。
しかし剥がす時にモンスターの本当の皮もかなり付着しているのに、剛は気持ち悪くないのだろうか。
「今だ、グダグダにしてやるぞ！ 首を寄こせ！」
「ギイイヤアアアアアアアーーーーーッ！！！」
ズーン！ ズーン！ と怪力能力で拳を打ち込み続ける剛。
そしてモンスターが倒れかかったところで、これも借りパクした鋭い爪の能力でスパッ！ と次々に首を落としていく。
そして最後には胴体と足だけが残った身体が、ズシーンと地面に横たわった。
「た、倒しちゃった……ジャイアントが１人で！」
「つ、剛さん……凄いわ」
「素晴らしいよジャイアント！ コマざえもん、早く通信再開してよ！ ディレイ配信で一刻も早くファンに見せないと！」
「ギャーッハッハッハッ！ 見たか！ オレサマの最強ぶりを！ ダンジョン制覇記念に、特別に１曲歌ってやる！」
「そ、それはやめてー！！」
「ボエエエェェェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜！！」
「ぎゃあああっ！ ダンジョンで声が反響して何倍もきついよー！！」
こうしてジャイアントパーティのダンジョン配信は成功に終わった……はずだった。
◇
あれから数日後、コマざえもんの部屋。
「あれ？ どうしたんだいスカ夫くん。今にも死にそうなくらい顔が真っ青だよ」
「そ、それが……マネジメント会社が倒産寸前なんだ」
「なんでさ、この前の配信でたらふく儲けたんじゃなかったの？」
「それなんだけど……あの配信がコンプライアンス違反に問われて莫大な罰金を取られたんだ」
「どういうこと？」
「最後のモンスターとの戦いの時に、くず太がトチ狂って、くろみちゃんのスカートの中に潜り込んだって言うことがあっただろ？ あれ、パンツがチラッと映ってたらしくて……」
「それは……残念だったね」
「やあ、スカ夫じゃないか。もう会社の仕事終わったの？」
「くず太……お前のせいだ、ぶっ殺す！！」
「ど、どうしたのさ、ジャイアントみたいなこと言って！ お助け〜！」
「やれやれ。そういえばくず太くんが毒液を浴びても無事だった理由が解明できてないんだよな」
