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第3話 冒険者ギルド

「おーっ、スゲェ〜! これが異世界の街並みか!」


「でもボクが家族旅行で行ったヨーロッパの都市で、中世から残ってる街並みに似てるけどね」


「でもステキ。一度でいいからこんな街に住んでみたいわ」


「僕、もう疲れたよ〜。どこかで休もうよ〜」


「くず太くんだっけ? さっき歩き始めたばかりなのに、キミはちょっと虚弱すぎる。身体を鍛えたほうがいいよ」


「ええ〜、そんなの嫌だ。コマざえもん、何か魔法で便利な道具とか出してよ〜!」


「ぼくは今、魔力を収納魔法に全振りしているんだ。だけど収納ポシェットをキミたちが壊したから、中に入ってる魔導具を取り出せないんだよ」


「いつ直るのさ?」


「キミたちを案内するついでに修理に出しに行くところさ。こういうのは専門の魔導具師でないと直せないんだよ」


「おいっ、くず太! コマざえもんに迷惑かけてないでサッサと歩け! それともコイツを喰らいてえか!」


「うわーっ、お助けー!」


「くず太を動かすにはジャイアントの大声が一番だね」


「もう、くず太さんをイジメないでって言ってるでしょ!」


「いや、今のはイジメじゃないと思う……それはともかく、目的地に着いたよ」


 つよしたちは街の中心部にある頑丈で大人数が収容できそうな建物の前に来ている。


 ここはこの異世界の国で大きな冒険者ギルドの1つだ。


「ここに連れてきたってことはっ! オレたちを冒険者として登録してくれるってことだな!」


「いや、さっき言った魔導具師がこのギルドの所属なんで来ただけだよ。まあ、ぼくも一応魔法使いとして登録してるけど」


「じゃあコマちゃんも冒険に行ったの?」


「いや、ぼくは将来、魔法研究者になりたいんだ。だからギルドでは冒険者じゃなくて彼らのバックアップメンバーを主にやってるのさ」


「なんだよそれ」


「一番多いのは負傷して帰ってきた冒険者たちの治療かな。最近は攻撃力重視が行き過ぎて、回復術師や付与術師といった後方支援を蔑ろにするパーティが増えてしまってね」


「あれ、収納魔法に全振りしたんじゃ」


「少しくらい回復魔法を使える余力はあるよ。それより中に入ろう」


 扉を開けると、広いエントランスホールの奥で受付嬢が座っているのが見える。


 左側には椅子とテーブルが多数設置されている広間があり、冒険者たちが休憩したり軽い食事をとっている。


「あらコマざえもん、久しぶりじゃない」


「久しぶりだねハンナ。実は収納ポシェットが壊れちゃって」


「あらあら、これは酷いわね〜。修理代、結構かかると思うけど?」


「仕方がないよ、直さないと使えないし」


「ところでその子たちは? まさか隠し子?」


「無茶苦茶言うな! 彼らは、その、知り合いから預かった子供たちなんだ」


「へえ。ボクたち、冒険者登録してみる?」


「おう! もちろんだとも!」


「いや、そんなことしなくていいよハンナ」


「まあまあ。今は暇だからやるだけよ、職場体験みたいなもので本気じゃないから」


「それならいいけど」


「おっしゃあ! 登録したら早速魔物退治だぜ!」


「えー、そんなのやめようよ」


「なんだとくず太! その後ろ向きの根性を叩き直すためにも、引きずってでも連れて行ってやる!」


「そんな〜!」


「じゃあ順番に魔力の判定装置に手をかざして?」


 ボカーンッ!


「ど、どういうこと? 判定装置が壊れるなんて!」


「何事だいったい!?」


「そ、それが、この大きな坊やが装置に手をかざした途端に」


「……こうなるパターンはふたつ。単に装置自体が壊れた場合か、魔力SSS級以上、つまり測定不能な場合のどちらかだけだ」


「きゃああああああーーーーーーっ!!」

「うわああああああ、逃げろーーー!!」


「今度はなんだ、外が騒がしいぞ!」


「ドラゴンが! ドラゴンの襲撃です!」


「な、なんだと!」


 突然の襲撃に慌てふためき逃げ惑う市民たち。


 ギルドに居合わせた冒険者たちが出撃して応戦しているが、さすがにドラゴンが相手で苦戦している。


「フハハハハハッ! 人間ドモヨ、調子ニノッテ我ヲ討伐シヨウナドトッ! ココラデ身ノ程ヲ思イ知ラセテヤル!」 


「お、お前が人間の街を荒らしまくるからじゃないか!」


「我ハドラゴン族、コノ世界ノ頂点ニ立ツ種族ノ一員! 我ガ何ヲシヨウト勝手ダッ!」


「お前がドラゴンか! このオレ、武田剛が退治してやるぜ!」


「おい小僧、下がってろ! ガキの遊びじゃねえんだ!」


「ナメルナ小僧! オ前ナド我ガ咆哮デ、粉々ニシテクレル!! ブオオオオオオオーーーーッ!!」


「なんだ、お前も歌いてえのか? それならオレの美声で勝負してやらあ! ボエェェェェ〜〜〜〜〜〜〜!!」


「ナ、ナンダト!? 我ノ咆哮ガ弾キ飛バサレテ……ウウッッーー!? ナンダコノ不快ナ音ノ塊ハ! 脳ガ、搖サブラレル!!」


「ボエェェェェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」


「……イヤ、最初ハ鼓膜ト脳ガ破壊サレルカト思ッタガ……何故カ、コノ振リ切レタ音程ノ外レカタガ、クセニナル〜!」


「本当だ、おれたちまでなんだか癒される気分だ」


「最初にガツンとくるのが堪んねえんだよなー」


「アアアア、コノママデハ、イカサレル! 天ニモ登ル気持チダァーーーーッ!!」


 ドラゴンは、恍惚の表情を見せながら、文字通り昇天し、消え去った。


 どうやらこの異世界の魔物と住人は、快楽を感じる音声の範囲が現代世界とはかなり異なるらしい。


「すげえぞ小僧! 本当にドラゴンを退治しちまった!」


「あの魔力SSS級判定は間違いじゃなかったんだなー!」


 こうして、くず太の願いは叶わず、剛たちは冒険者として活動することになったのだ。

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