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第13話 オレのリサイタルを聞けぇ〜!!

「ファンのみんな、聞いてくれ。オレは明日、故郷に帰らなければならない。だからこれがラストリサイタルだ!!」


「いやー! いかないでつよしくーん!」

「これからおれたちはアンタの歌声なしで、どうやって生きていけばいいんだーっ!!」


「すまねえみんな……だから今日は一生分歌い尽くすぜ! オレのリサイタルを、聞けぇぇぇーーーー!!」


「うおおおおおおおおおおおーーーーーーーっ!!」


 遂に明日、元の世界に戻ることになった剛たち。


 最後のリサイタルは明け方近くまで熱狂的なファンたちに囲まれて狂乱の内に幕を閉じた。



 いよいよ決行当日の夕方。

 コマざえもんの部屋にみんな集まって、その瞬間を今か今かと待っている。


「それじゃあみんな、用意はいいかい?」


「僕はいつでも大丈夫だよ」


「ボクも。マネジメント会社は清算して従業員の人たちに残りの給料と退職金を渡してきた」


「わたしも、きのうコンサートでファンのみんなにお別れを言っておいたわ」


「さあ行こうぜ! 向こうでもオレのリサイタルを待っているヤツらがいるんだ!」


「いや、誰もいないと思うけど」


「あぁ〜!? くず太、お前は一度タップリとわからせてやらねえといけねーみたいだなあー!!」


「ひええ〜、お助けー!」


「もう、2人とも! 遊んでないでさっさと行くよ!」


「……向こうに着いたら覚えてろよ、くず太!」


「いや、真面目な話僕の記憶力じゃ忘れてると思う」


「お兄ちゃん、ちゃんと皆さんを送り届けてあげてね!」


「わかってるよコマりん。だからここで収納ポシェットを見ててくれよ」


「ところで今さらなんだけど。その収納ポシェットにボクらはどうやって入るのさ?」


「こういう時に使える『べんりな魔導具』があるよ。『どんな狭い入口でも入れる漏斗』!」


「ろうとだって!? ボクらは液体じゃないぞ!」


「まあまあ。これをポシェットに差し込んで……ここに片足を乗せるだけで、魔力で身体がスルッと通り抜けるんだ」


「凄いけど、空き巣とか悪用されるんじゃないの?」


「だからこの魔導具は全国魔導具協会の許可をもらってロックを外さないと使えない仕組みなんだ。それで準備に3日必要だったのさ」


「まあ何でもいいから早速入ろうぜ!」


「ジャイアント、そんないきなり大丈夫……みたいだね、ホントにスルッと行っちゃった」


「次はボクだ!」


「わたしも続くわ!」


「な、なんか怖いな……うわああああっ!」


「最後にぼくが入って完了だ! あとを頼んだぞコマりん!」


「わかってるから。行ってらっしゃい、お兄ちゃん!」



「あれ? コマざえもんも僕らの世界に来るのかい?」


「違うよ。キミたちが無事に帰ったのを見届けるためさ。あと、もし失敗した場合はキミたちを連れて戻らないといけないから」


「失敗とか縁起の悪いこと言わないでよ! それじゃ、頼むよジャイアント」


「おう! オレの異空間リサイタルを聞けぇ〜!! ボエェェェェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」


「うわああああああああっ! だいぶ慣れたハズなのに、こんな近くで聞くとキツいよ!」


「スカ夫くん、くろみちゃん。これ、ナイショだよ」


「音を遮断する耳栓! 人間用に調整できたんだね」


「それでもやっぱり聞こえるわ」


「まあ無いよりマシだと思ってくれ。ぼくらが気絶しちゃうとマズいことになるからさ」


「ボエェェェェェェェェェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」


「ぐえええええええええっ! い、いっそのこと気絶できたらいいのに! 中途半端に気持ち悪くて吐きそう!」


「マズいな……くず太くんは変に耐性がついてしまって、魔力の分解がなかなか進まないようだ」


「まさか……失敗しちゃうのか?」


「それも覚悟しておいて」


「そ、そんなー! ジャイアント! もっとボクらをシビレさせてよー!!」


「うらあああ! 期待に応えて本気の本気でいくぜー!! ウラウラウラウラウラウラウラウラウラ!! ボエェボエボエボエェェェェェェェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」


「ぎえええええええええええええええええっっっっ!!!」


「うわあああああああああああああ!!」

「きゃあああああああああああああ!!」

「ぐへえええええええええええええ!!」


 くず太たちは、薄れゆく意識の中で、視線の先に光が広がっていくのを感じていた……。



「くず太さん! しっかりして!」


「うーん。むにゃむにゃ……へへっ、くろみちゃんの大きな胸の膨らみマジサイコー」


「いやあー! くず太さんのえっち!!」


 バシィッ!!


「ぶへえっ! いきなり平手打ちなんて酷いよ!」


「だってくず太さんが悪いんでしょ!」


「何やってんのさ2人とも。そんなことより、ぼくらは成功したんだよ!」


「やっと、やっと帰って来れたよ、ママー!」


「おっ。これ最新のVRゲーム機じゃないか! くず太のくせに生意気だぞっ、オレに貸せ!」


「そ、そんな! 去年と今年のお年玉を貯めてようやく手に入れたのに! って、ここは僕の部屋じゃないか!」


「ぼくらは空間の裂け目に吸い込まれて、気がついたらここにいたんだ。たぶんキミの意識の中にある場所に繋がったんだろうね」


「そうだったのか。遂に帰り着いたんだ……!」


「でもコマちゃんまで一緒に来ちゃって。向こうに帰れないんじゃないの?」


「それなら大丈夫。こんなこともあろうかとスペアのポシェットを持ってきてるんだ。向こうにいるコマりんともこれを通じて連絡が取れるから問題ないよ」


「さすがコマちゃん! じゃあ、もう帰ってしまうの?」


「いや、せっかくだからしばらくこっちの世界を見て回ろうかなって。それじゃあくず太くん、その間はキミの家でお世話になるよ」


「えー、うちはペット禁止なんだけどなー」


「失敬な! 僕は犬じゃないぞっ!」



「待て〜、くず太ぁ! 今日こそはギッタギタのメッタメタにしてやる〜〜!!」


「ジャイアント、くず太はあっちに逃げたよ!」


「スカ夫のやつ、余計なことを〜!」


「剛さんたち! またくず太さんをいじめてるのね!」


「みんな〜! 大変、大変なんだ!!」


「どうしたのさコマざえもん、血相かえて」


「向こうの世界で、暴動が起きたんだ! 剛くんとくろみちゃんの歌を聞かせろって群衆が騒ぎを起こしてる!」


「それは本当に大変じゃないか!」


「だから一緒に来てくれるかい、剛くん!」


「……わかった。オレの歌を聞きたいやつがいるなら、いつでもどこでも行ってやる。くず太とスカ夫も一緒に来て手伝え!」


「ええー、そんな〜」


「わたしも行くわ」


「それなら僕も行くよ」



「剛〜! おれたちはおまえの帰りをずっと待ってたんだぞ〜!」


「待たせてすまねえな。それじゃあ早速……オレのリサイタルを聞けぇ〜!!」

ここまで読んでくださった読者の皆様、ありがとうございました。

本作ですがネタが尽きたのでこれで完結とさせていただきます。

でもまたネタを思いついたらしれっと再開するかもしれません。

その際は気軽に読んでいただければ嬉しいです。

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