序章:黒き竜と蒼き戦乙女②
「ぁ……! がぁ……!!?」
ファフニールが胸を押さえ、絶え絶えの息を荒く吐き出した。
「ファフニール!?」
リコリスが悲痛な声を上げると、彼は冷や汗を拭いながら強がるように笑う。
「し、心配すんな……ちと出力を上げすぎて久しぶりに……堪えただけだ……」
「本当に大丈夫なんですか……?」
「アァ、問題ねぇ―――?!!」
白髪の青年の髪が黒く染まり、彼の操る黒い焔が宿主を食い漁るように溢れ出る。
「リ、リコ―――ッ!! コイツはやべぇ、離れろッッ―――!!」
ファフニールは辛うじて残る意識でリコリスを突き飛ばし、自身を侵食する世界の背負う負の感情に抗う。
「―――ぐぁああああああ!!!?」
「―――ファフニール!?」
リコリスは愛する男が目の前で灼けていく様を為す術なくただ見つめた。
世界を救った英雄の末路、黒い業火に焼かれていくファフニールの姿はあまりにも惨たらしく、リコリスは目を逸らしたくなるような人の焼ける匂いで嗚咽する。
「そ、そんな……こんなの、あまりにも……」
彼女の美しい赤の瞳から涙が溢れると、ファフニールは叫んだ。
「―――泣くんじゃねぇよ!!」
「―――っ!?」
彼の振り絞るような叫びに戦乙女は俯いた顔を上げた。
「お前の使命は世界の救済なんだろ? まだ終わっちゃねぇーゾ?
こんなとこで立ち止まるんじゃねぇ!!
俺が壊れちまう前に―――、アンタが俺を斬るんだッッ―――!!」
「出来ません!! そんなこと!!」
「アイリスのヤツも言ってだろ?
最後の英雄はまだいる、ロイ・オックスフォードはお前を待っている!!
ソイツが―――、最後の救済だ―――!!
ソイツと一緒に世界を作れ、リコ……それが俺の……俺達の生きた意味ってヤツになるんだよォ……!!」
ファフニールの灼ける体が次第に異形へと変わっていく。
黒き龍のようなソレは世界の終焉を否応なくリコリスに突きつける。
「―――やれ、リコぉぉおおお!!」
「……う、うぅううぁああ!!!!」
リコリスが黒の神剣を振り上げ慟哭しファフニールが黒い焔に完全に飲まれた時―――、世界は金色の光彩に包まれた。
(最後の楔は打たれました―――。
姉さん、アナタに父の祝福があらんことを―――)
切り裂いた首元からファフニールの黒血が溢れる。吹き飛んだ龍の首から噴き出した血潮は晴れた空に舞い、希望の乙女リコリスに降り注いだ。
「うっ、うぅ……うああああああ!!!!!」
リコリスの右手から力無く零れたレーヴァテインは無機質で甲高い音を立て地面を転げる。
首を喪った龍は間もなく形を失い、空へと解けていく。白い光の粒は青空の彼方に融けていき、世界の一部へと還っていった。
遺された黒の指輪が金色の光彩と共に弾けて消えると、英雄ファフニールの存在を確かたらしめるものは人々の語り継ぐ英雄譚だけとなった。
英雄を葬った裏切りの大罪人、戦乙女リコリスという竜の魔女の名を残し―――世界は400年という歴史を編んだ。
ハジメマシテ な コンニチハ。
高原 律月です。
竜の魔女、序章が完成しました!
次回から本編が始まります!!
これのプロットはだいぶ前から考えていて、本編途中のどこかで挿入しようと思っていたのですが本編途中で入れると長くなりそうなのでサラッと序章にさせてもらいました。
本当はもちょい色々なギミックも考えていたんですが、あえてこの形に落ち着かせました。
本編をすでに公開されているところ(123話)まで読んだ方は、アレ?ってなるところあるかもしれませんし、これから読まれる方も読んでる途中でなんか変だな?って思うところがあるかもしれませんが、ワザとです(笑)
ー作者の気持ちー
この物語は、“キャラの気持ちを考える”ことで、
何度でも意味が変わるように設計されています。
Web連載という形式だからこそ、
過去のルートが分岐し、後から追加された要素が
「最初からそこにあった」かのように作用します。
ですので、この作品には“決まった読み方”がありません。
同じ話を読んでも、読む人によって、読むタイミングによって、
**“無限に枝分かれしていく物語”**として存在しています。
……それこそが、私が目指した“新しい文学の形”です。物語は登場人物達にとっては人生であり、物語やキャラは時に誰かが生きる道しるべにもなり、笑いも苦悩も涙もあってこそ「人生」だと考えています。
「こう読むべきだ」とか、「これはこういう話だ」とか、
そんなふうに物語を固定する気は一切ありません。
格式張るつもりもありませんし、エンタメに振って“盛り上げるために削る”ようなことも、ストーリーを“伝えやすくするために単純化”することも、しません。
なぜなら――
それは“物語=人生を捨てること”だから。
物語は読者に委ねられるべきものです。
書き手は読む人の中に想いを遺すものであり、想いとは人それぞれの言葉の中にあるものです。
ですから決まった形がある訳ではないのです。
だから私は、書き手として語る資格を持ち続ける限り、
この物語を“壊さずに生かす”方法だけを選びます。
私はただ、世界を見つめて、言葉にしているだけです。
そして、語ることをやめない限り、
この物語もまた、語られ続けるでしょう。
時に複雑なこともあり、笑いもあり、涙があり、感情があり、迷って立ち止まって考えることが人生だと思っています。
進むことが人生であり、ひとりひとりの物語という想いを作品に込めさせてもらっています。
本編1話(#1.神殺しの英雄と黒き竜)から主人公ロイ君の一人称視点で分かりにくい部分が多々あると思いますが仕様になるので少し読み進めてもらえると幸いです。
読み方のコツとしては、ロイ君と同じ目線になって読むことだと思います。
それでは、【道端で小石を拾ったら竜の魔女と恋に落ちました〜成り行きで英雄認定されたので気ままに世界を救います〜】をお楽しみください!
それでは、また次回〜 ノシ




