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#110.英雄の資質

 翌朝、軍議を終えたラマンユは部下達の待つ兵舎へと足を運んだ。小隊長達を集め、兵舎の一室で机を囲むと隊長達の中でも若い男がラマンユに訊ねる。


「中隊長! フロイス公国との開戦、本当なんですか?」

「ああ……」


 ラマンユが小隊各長の顔を見ると何人かが強ばった顔をしている。


「不満か……?」


 続く言葉は誰の口からも出ない。

 彼は息を吐きながら言った。


「フロイス公国とは長い付き合いだ。お前達の中には身内が向こうの国にいる者もいるだろう……それは我が軍の同胞の中に多くいることだろう……」


 隊長達は彼の言葉に神妙な顔で頷く。


「だが、戦争とはそういうものだ。国とはそういうものだ。

 西と東の兵士達に家族が居ないとでも思っていたのか?

 僕達はどっち転んだってもう共犯者なんだ……そうだとしても、この国に残る家族を守るか捨てるか、それを選ぶのはお前達の自由だ」

「……和平の道はないのですか?」

「陛下の申し出を突っぱねたのは公国側だ。向こうだって同じことを言ってるさ……」


 固唾を呑むようにして部下達の顔に緊張が走る。


「僕達はこの国を守る為の盾だ、その先は考えるな……呑まれるぞ……」

「―――はいッ!!」

「編成確認をした後、出兵までに練度を上げるぞ。各隊、覚悟をしておけ……僕達は国境の西側からフロイス公国に入ることになっているからな……」

「―――なっ!?」


 騒めく一同を御するようラマンユが低い声で呟いた。


「フロイス公国西方警備隊……通称"シュバルツ・フェードラッヘ"……『公国の二本刀』を抑えるのが僕達ラマンユ隊の任務だ……」

「それでは死ねと命令されているようなものではありませんか!!」

「僕達は山岳地帯を迂回して西側から国境入りするか、山岳地帯を越えるかしかない。

 本隊がブリックス山脈を越えるまで粘れば、フェードラッヘの首を落とせるぞ?」

「挟撃をしかけると?」

「ああ、そうだ……」


 部下の一人が椅子にもたれかかり、天井を仰ぎ見る。


「ずい分と簡単に仰いますな……西の諸国がフロイス公国を切り取れなかったのは彼奴等がいるからですぞ……」

「ああ、分かってる」

「公国の"黒妖のベルノート"と"白銀のヘンドリクセン"、彼奴等は化け物です……」

「有名だな、だからなんだ?」


 いかにも叩き上げといった風体の隊長が激しく机を叩き、声を荒らげる。


「―――部下達に死ねと仰るのか!!!!」


 静まり返る部屋の中で荒い息遣いが響く。

 隊長達がラマンユを恐る恐ると見やる。


「―――僕達は何だ?」

「帝国軍第三師団です」


「―――将軍は誰だ?」

「ファリド将軍です!」


「―――俺は誰だ?」

「帝国軍第三師団第五中隊長ラマンユ・ハキラフ殿です」


「そうだ、お前達を死なせるものか。

 ―――俺は栄光ある第三師団の第五中隊長ラマンユ・ハキラフだッ!!

 黙ってついてこい、俺がお前達を祖国の英雄にしてやる……」


 静かに、それでいて圧のあるラマンユの言葉に反論の声は消える。

およそ、齢二十そこそこの青年が纏うとは思えない覇気をその場にいた者はみな感じ取った。



 ―――時代が変わる。



 その時、世界は英雄の産声を確かに聴いた。



ハジメマシテ な コンニチハ。

高原律月です!


竜の魔女110話が完成しました!

この辺でラマンユ編は完結してるはずだったんですが、思ったより長引いてしまっていますね(笑)


もはや、別作の主人公くらいの話数と文量を取ってるラマンユ君ですがラスボスです笑

(とはいえ、読みやすいように文字数を抑えて話数を増やしているので文量的には今までの4 話分くらいなんですが笑笑)


ここからのプロットを考えると、まだまだ続きます……ごめんなさい……(;'ω'∩)


こーなるから今まで原罪とかって掘り下げストーリーほぼ皆無だったんですけどね、とうとうやっちまったって感じです(笑)


それでは、また次回〜 ノシ

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