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#107.ひなげしとザクロ

「……うう、寒い」


 真っ暗な草原で小さな茂みの中にうずくまる少女は寒さを凌ぐよう、キュッと体を丸める。


「こんなに寒いなんて……」


 震える体から白い吐息を漏らして体をさすり、ぼんやりと空に浮く真白な月を見た。


「二人の言うことを聞いておけばよかったな」


 すっかり春の陽気が暖かさを感じさせてくれる時期で、アイシャはラマンユ達の毛布は用意しておけという忠告を蔑ろにした自分を責める。


「室内と外だとこんなにも違うなんて……」


 元より野宿するつもりはなく、本来なら足早に歩けば一日で辿り着ける距離というのもあり油断していた。

 それでも、アイシャの足は重く、事ここに至って野宿をすることになってしまった。


 村に戻っても私の居場所はあるのか―――。


 そんな気持ちが彼女の歩く足を止めさせていた。


(村に戻ることは本当に正解なのかな?)


 家に着いても両親に拒絶されたら?

 また人買いに売られたら?


 アイシャは考えないように強く目を瞑り、顔を埋める。

 ほどなくして意識は微睡むとアイシャは眠りに落ちた。

 そして、彼女の期待を裏切るように朝は来る。

 すっかり明るくなった辺りを見回して、ため息を落としながら少女は歩き出した。


 ―――いっそ、凍え死ねたのなら。


 そう思っても、生きて歩く足の先は熱い。

 人の往来で禿げた草野道を少女はただ歩いた。


「おはよ、ラマンユ」

「……やっと起きたか」


 マリアムが眠たそうな目を瞬かせながら朝食を摂っているとラマンユが話しかけた。


「仕事が入った、いけるか?」

「うん、問題ないよ」


 途端、マリアムの目つきが鋭利になる。


「どんなお仕事?」

「いつも通り人身売買をしてるバカ共の掃除だ……」

「前回みたいに商品が居るとちょっとめんどくさいねぇ〜」

「……そうだな」


 二人は黒い服装に着替えて、部屋を出る。


「最近さ」

「……なんだ?」


 マリアムが賑やかな街の中で周りには聞こえないように声を潜めてラマンユに話しかける。


「お仕事の頻度が多くない?」

「……この1ヶ月で4件目だな」

「前は1年でも数回くらいのペースだったじゃない?」

「それだけ摘発が多いんだろう……上も調査に力を入れてるのかもしれないな……」

「このペースで踏み込んでいたら見られるリスクも高くなりそうなんだけど?」

「……俺は使い捨ての駒だ、昨日も言ったが嫌なら降りろ。

 お前のことは上には報告してない、今なら引き返せる……」

「キミが足抜けしたらねぇ〜」


 マリアムは顔を隠すように布を巻きつけると手を振りながら薄暗い路地の中に消えていく。


「……バカが」


 残された少年は少し間を置いて足早に歩き始める。前回と同じ様に賑わう大通りを掻き分けて目的の場所まで辿り着き、ドアを蹴破った。


 ―――ダアァァン!!


「―――ヒィッ!?」

「……動くな」


 白昼堂々の凶行、鮮やかすぎる手口に大通りを歩く人達は気が付くことさえない。

 今日もまた、少年と少女は心を擦り減らす。



 ―――鉛色の空はそんな彼らの心に蓋をした。



ハジメマシテ な コンニチハ!

高原律月です。


竜の魔女、107話になります!


今回はかなり文字数が少ないですね笑(1200文字なので4ページ分くらいです)

正直、どれくらいの分量がいいのか不明ですが今回は普通に短いと思います(笑)


ラマンユ達はおよそ18歳くらい、アイシャちゃんは14歳くらいのイメージで執筆してます。


それでは、また次回〜 ノシ

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